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薄幸の少女と森の賢者達
10-2:待ちぼうけ
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長い長い、依頼者の話が終わるのを、護衛の男達は師の家の外の草地で腰を下ろし、待ち続ける。
この場に来た初めは頭上にあった陽も、だんだんと下がって光も弱くなり始めている。
暗くなれば森の中は危険さを増し、戻る時間もなくなりそうなのに、それを考えられずしつこく話を続ける依頼者に、護衛達全員がうんざりした様子を見せていた。
「……お茶のお代わりは必要ですか」
「…いらん」
「無用だ」
「引っ込め、亜人」
盆に乗せた木製の容器を運んでくるフードの少女の問いに、隊長格の男がぶっきらぼうに答え、その他の者達も厳しい目を返す。
少女は小さく嘆息すると、さっさと背を向けて家の裏へと引っ込んでいく。
その背中を見やり、護衛達は胡乱気な表情を浮かべた。
「…小間使いの割には、態度のでかい餓鬼だな」
「あれが噂の賢者の弟子か? 亜人を抱えるなんて……何考えてやがるんだ、あの野郎は」
「おい、聞こえるぞ」
護衛の一人が、受け取った容器の中身を覗き込んで顔をしかめる。
色こそ、さほど変わったところのない緑色の液体、おそらくは茶の一種であろう飲み物だ。しかし、亜人が淹れて持ってきたという印象の為か、汚らしいものを与えられたような、そんな顔を全員が見せている。
中には、受け取ったはいいが飲む気になれず、その場に捨てる者さえいた。
「毒じゃねぇだろうな…あんまり撒き散らすなよ」
「亜人と言えど、そこまで馬鹿じゃないだろう。ここで俺達を殺したところで、何の益もない……あるならむしろ、彼の方の目の前にいるあの男だろうな」
そう言って、隊長格の男が師の家に目を向ける。汚れた窓を覗いたところで、中の様子を伺うことはできそうになく、何よりそうした時点で師に悪印象を与えかねない。
蔭り始めた空を見上げた仲間の一人が、苛々した様子で舌打ちをこぼした。
「くそっ…いつまでかかってんだよ。あいつ、あんな糞みたいな奴だけど、一応帝国の貴族だろ? 命令すりゃあ、あの賢者だってすぐに連れ出せるんじゃねぇのか? どのくらい偉いのか知らねぇけどよ」
「さぁな……余程頑固なのか、それともあの男が気に入らないのか。いずれにせよ、今我々にできるのは待つことだけだ」
話し声一つ聞こえてこない、物音一つ聞こえてこないのをいいことに、一時任務から解放された護衛達は好き勝手に話し始める。
不満げに頬杖をついていた一人が、不意に疑わしげな表情になり、師の家に視線を向けた。
「…何でもいいけどよぉ、さっさと面倒事は終わらせてほしいもんだよ」
心底面倒くさそうに呟く彼に、仲間達は全員呆れた様子でため息をつくも、気持ちは同じなのか目を逸らし、肩を竦めるのだった。
この場に来た初めは頭上にあった陽も、だんだんと下がって光も弱くなり始めている。
暗くなれば森の中は危険さを増し、戻る時間もなくなりそうなのに、それを考えられずしつこく話を続ける依頼者に、護衛達全員がうんざりした様子を見せていた。
「……お茶のお代わりは必要ですか」
「…いらん」
「無用だ」
「引っ込め、亜人」
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少女は小さく嘆息すると、さっさと背を向けて家の裏へと引っ込んでいく。
その背中を見やり、護衛達は胡乱気な表情を浮かべた。
「…小間使いの割には、態度のでかい餓鬼だな」
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「おい、聞こえるぞ」
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中には、受け取ったはいいが飲む気になれず、その場に捨てる者さえいた。
「毒じゃねぇだろうな…あんまり撒き散らすなよ」
「亜人と言えど、そこまで馬鹿じゃないだろう。ここで俺達を殺したところで、何の益もない……あるならむしろ、彼の方の目の前にいるあの男だろうな」
そう言って、隊長格の男が師の家に目を向ける。汚れた窓を覗いたところで、中の様子を伺うことはできそうになく、何よりそうした時点で師に悪印象を与えかねない。
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不満げに頬杖をついていた一人が、不意に疑わしげな表情になり、師の家に視線を向けた。
「…何でもいいけどよぉ、さっさと面倒事は終わらせてほしいもんだよ」
心底面倒くさそうに呟く彼に、仲間達は全員呆れた様子でため息をつくも、気持ちは同じなのか目を逸らし、肩を竦めるのだった。
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