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薄幸の少女と森の賢者達
10-1:招致交渉
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「いやぁ……大変でしたよ、ここまで来るのは。このような野蛮……いえ、危険な場所にお住みになっているとは、流石は賢者様ですな。我々にはとても真似できそうもありませんよ」
最近片づけられた本の山の間、用意された椅子に腰を下ろした小柄で太った男が、丸い顔を気持ちの悪い笑顔で歪めて饒舌に語る。
机を挟み、向かいの椅子に腰かけた師は、そんな彼に無言で仮面の奥の赤い目を向ける。とはいえ、彼の姿をしっかりと見ているかどうかは全く分からなかったが。
「しかしやはり、こうも厄介な道となると色々不便なこともございましょう? 以前にも使いの者が申したとは思いますが、我が国に着てその叡智を披露していただくのはいかがでしょう。陛下も貴殿がお越し下さる日を心待ちにしておりますぞ」
「…………」
「お、お越しいただけたならば、貴殿には相応しき地位も相応しき権力も…お望みのものは何でもご用意できます……今日こそはいいお返事を戴ければと思いますが」
下卑た笑みを隠す気など一切ないまま、黙り込んだままの師を誘う男。
それに一言も返さず、ただじっと椅子に腰かけ続ける師に、次第に男のこめかみに脂汗が噴き出し始める。ぴくぴくと笑みが崩れかけるが、どうにかそれを保ち、再び師を賛辞する言葉を吐き出した。
「き、貴殿の叡智は、世界中の誰もが欲する素晴らしきものです! 貴殿さえ頷いてくだされば、数えきれない数の人々がその恩恵にあやかれ、幸福な生活を手にすることができます! あるいは無情に虐げられる者達が、貴殿の手によって救われるのです! それこそ、貴殿の望む事ではないでしょうか……?」
引き攣った顔で、苛立ちを目に露わにしながら、男は椅子から腰を上げて、師を持ち上げる言葉を考えつく限り口にしていく。
しかし、師がそれらに声を返す事は、ただの一度もなかった。
無言で椅子の上で佇み、仮面に開いた穴の奥の目を向け続けるだけであった。
最近片づけられた本の山の間、用意された椅子に腰を下ろした小柄で太った男が、丸い顔を気持ちの悪い笑顔で歪めて饒舌に語る。
机を挟み、向かいの椅子に腰かけた師は、そんな彼に無言で仮面の奥の赤い目を向ける。とはいえ、彼の姿をしっかりと見ているかどうかは全く分からなかったが。
「しかしやはり、こうも厄介な道となると色々不便なこともございましょう? 以前にも使いの者が申したとは思いますが、我が国に着てその叡智を披露していただくのはいかがでしょう。陛下も貴殿がお越し下さる日を心待ちにしておりますぞ」
「…………」
「お、お越しいただけたならば、貴殿には相応しき地位も相応しき権力も…お望みのものは何でもご用意できます……今日こそはいいお返事を戴ければと思いますが」
下卑た笑みを隠す気など一切ないまま、黙り込んだままの師を誘う男。
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「き、貴殿の叡智は、世界中の誰もが欲する素晴らしきものです! 貴殿さえ頷いてくだされば、数えきれない数の人々がその恩恵にあやかれ、幸福な生活を手にすることができます! あるいは無情に虐げられる者達が、貴殿の手によって救われるのです! それこそ、貴殿の望む事ではないでしょうか……?」
引き攣った顔で、苛立ちを目に露わにしながら、男は椅子から腰を上げて、師を持ち上げる言葉を考えつく限り口にしていく。
しかし、師がそれらに声を返す事は、ただの一度もなかった。
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