水と言霊と

みぃうめ

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第333話    竹の可能性②

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 ハンスに案内され竹の集めてある場所へ。

 そこであっくんは竹を吟味し、目星をつけると風魔法で細かく割くようにしていく。
 その正確さ。
 全部同じ幅に見える。

「紫愛様、川端様は何をなさろうとしているのですか?」
「竹で籠を編もうと思ってるの。その材料作りだよ。」
「籠を?」
「うん。竹で作ると軽いんだよ!」
「私にも作れますか?」
「うーん、ハンスって以外と不器用でしょ?」
「初めて言われました。」
「そうなの!?」

 私はあの形が違いすぎるオニギリを見ちゃってるからなぁ。

「慣れたら作れるようになると思うよ。で、あっくんみたいに魔法で竹を同じ幅で切れれば工具がなくても簡単に材料が揃えられる。材料さえ揃えておければ手が空いたお母様方に編んでもらったりできるんじゃないかって話してたの。騎士の人達の魔法の練習にもなるかなと思うんだけど、魔力消費がどれくらいなのか私とあっくんでは全くわからないでしょ?戦うのに支障が出るのは駄目だし、風の因子の団員がどれくらいいるかもわからないしで、ハンスに相談してみようと思ってたの。」
「それは良いですね!あの程度の作業ならば魔力の消費は少ないでしょうし、竹で可能ならば木を使わずに済みます。」
「じゃあ試しに籠を作ってみてからだね!」
「はい。」

 やってみないと上手くいくかはわからないもんね!

「しーちゃん、これくらいあれば籠は作れるよ。あとさ、ラックも作ってみようかと思うんだけど、そのためには油抜きしないといけないんだ。」
「油抜き?」
「竹の表面って油の膜があるんだよ。油抜きしないまま使うと中がうまく乾燥しきらなくてカビたり、最悪は腐る。そんな危ないラックに物は置けないでしょ?」

 初めて聞く言葉だ。

「どうすれば油抜きできるの?」
「それは簡単。火で炙って、浮いてきた油を拭き取るだけ。色むらができやすいし、あんまり炙りすぎても焦げちゃうから適度にやらないといけないんだ。」
「ここでやる?」
「いや、安定した火があった方がやり易い。それに火さえあれば魔法が使えない人でもできるよ。」
「ハンス、お母様方が調理に使ってる火、少し借りられないかな?」
「可能です。私共の方でやっておきましょうか?」
「頼むにしても程度がわからないだろ?見本で1本あった方が良いはずだ。」
「何本ご用意しましょう?」
「そうだな……これと同じ太さの竹を20本欲しい。」
「畏まりました。」
「じゃあ行こう!」


 子供達の元へ逆戻りし、お母様方に断りを入れ火を借りる。
 その間にニルスが男性陣を呼び集め、あっくんの油抜きの様子を外スラムの男性陣が食い入るように見つめている。

 まずは一節分炙り終え、いらなくなった布で竹を拭き

「こんな風に竹のテカリが消えたら成功。この作業を油抜きと言う。焦がさないように注意してほしい。悪いが俺にはあまり時間が残されていないから、今日中にあと19本油抜きをしてほしい。終わったら日陰の風通しの良い場所に置いておいてくれ。」
「兄ちゃん!これは何に使うんだ?」
「棚を作ろうと思う。こうして油抜きすることで腐るのを防げ、耐久力も上がるんだ。」
「へー!そりゃ知らんかった!」
「あと19本だな?」
「なるべく同じ太さの竹で頼むよ。」
「任せとけっ!」

 あれだけ雰囲気が悪かったのにたった数時間で何もなかったかのような空気になっている。


 残りを男性陣に任せ、さっき竹を割いた場所へと戻って来た。

「籠作りは平らな所でやらないといけないからこれを持って部屋に戻ろう。」
「うん。この細いのは何に使うの?」
「これは竹ひごって言って取手の部分を縛ったりするのに使うんだ。しーちゃんにはポシェットを作ろうと思うんだけど、どうかな?」
「ポシェット!?それ肩から下げてたら余計子供に見られない!?」

 私がイメージしたのは黄色の帽子に黄色いポシェットのような斜めがけの鞄を下げた園児だ。

「可愛いと思うんだけど……じゃあウエストポーチにしようか?」
「それなら邪魔にもならなそうだし、良いかも!」
「ハンス、ベルト用に使える皮ないか?あとは針と糸。それに布と染色剤。」
「ご用意します。布と染色剤の色のご希望はございますか?」
「紫あるか?」
「いえ、ありません。」
「赤は?」
「赤はございます。」
「青はあるだろうから、青と赤両方持ってこい。布は染色してない物を。」
「畏まりました。」

 ハンスがニルスに合図を出し、それを受けたニルスが走って行く。

「布染めるの?」
「布も糸も竹もだよ。」
「竹も!?」
「うん。1時間も煮れば染まるから。」
「それも趣味のあれこれで習ったの?」
「竹籠編みは近所のばぁちゃんに教わったけど他は独学。ほら、地球には本も携帯もPCもあるからさ。」
「よく興味が出たね。」
「俺が住んでた田舎のばぁちゃん達って、買った物より手作りのが喜んでくれたんだよ。いつも野菜や煮物わけてくれるお返しがしたくてちょっと勉強したんだ。普通に力仕事も手伝ってたけど、物が残るのって良くない?こっちもお返しをあげられた!って気になれるし。」
「私はあっくんに何もあげてないよ?」
「お菓子やご飯作ってくれてるよ?それに俺がしーちゃんにあげたいんだ。驚かせたいっていう気持ちもあるから。」
「驚くような物作るの!?大きすぎて腰につけれないウエストポーチとか!?」
「それただの罰ゲームだよ!」
「あははははっ!確かに!」

 そんな話をしながら部屋へと戻ってきた。
 丁度ニルスも戻ってきたので準備してくれたあれこれを受け取る。

「ニルスはどうする?一緒にやってみるか?」
「いえ、外の護衛がいなくなってしまいますから。」
「魔力広げてるから大丈夫だ。やりたいなら材料あるからやれるぞ?」
「……では、よろしくお願いします。」

 4人で部屋に入り、あっくんから軽く説明を受け開始。

「今から教えるのは4種類。四つ目編み、六つ目編み、ござ目編み、松葉編みだ。この4種類を知ってれば色んな形が作れる。八つ目編みと網代編みも知っちゃいるが、面倒だから省略する。四つ目編みとござ目編みはとても簡単だ。基本的に編み物は同じことの繰り返しの根気がいる作業だ。まず俺が基本を作る。それをひたすら真似するだけだ。」
「「「はい!」」」


 あっくんが言う通り、編み方は単純でとても簡単だった。
 大切なのは幅の均一性らしい。
 あっくん曰く

「幅にムラがあると耐久力に差が生まれる。密度が高い隙間が狭い所は強く、密度が低い幅が広い所は弱くなる。作った当初は何もなくとも、ずっと使っていると密度が低い部分に負荷がかかるようになり、やがてそこから崩壊してしまう。籠は全体で重さを分散できるように均一性が何より重要になる。小さい物ならそこまでの重さの物を入れることはないだろうから大して気にすることはないが、大きな物を作る時には注意が必要だということだ。それを踏まえると、他の3種類に比べ六つ目編みはバランスが少々難しい。」

 私もニルスも問題なく軽々と編んでいけるが、ハンスは違った。
 六つ目編みのバランスをとるのに苦労し、六角形が歪んでいる。

「ハンス、編みながら竹の幅を調整していくんだ。」
「これは少々難易度が高いですね。」
「慣れだ。ハンスが作れなくとも普段作る人間に教えられるようになれば問題はないだろう。竹を曲げたい時は熱した細い鉄を押し当てると簡単に曲げられるが、熱しすぎると焦げて耐久力が下がる。」
「もしかして竹の曲げ方知ってる!?」
「知ってるよ。何でそん……あっ!!そういえば松葉杖で必要なんだっけ?」

 思わぬところで解決方法発見!

「ハンス!」
「はい!川端様!是非曲げ方をご教授ください!」
「簡単だ。方法はさっきの油抜きと同じで均一に回しながら曲げたい箇所の一節分を火で炙ること。違うのは炙る所に1つ穴を開けること。油抜きは短時間だから問題ないが、曲げるためには表面の皮が茶色になるくらいまで熱する必要がある。竹は熱すると割れる。穴はその防止のためだ。十分に火で炙ったら熱していない竹で熱した部分を押さえ、曲げたい角度まで曲げる。あとはそのまま冷えるのを待つだけだ。上手くいかなければ教えに行く。」
「ありがとうございます。紫愛様、明日には松葉杖の試作が出来上がりますので確認をお願いいたします。」
「わかった。」

 会話をしながらもあっくんは手際良く竹を編み、縦20cm×横30cm×高さ10cmくらいの籠を完成させた。

「小さい物ならこんなもんだな。大きさに合わせて用意する竹の長さを変えて編むだけだ。これの少し大きな物を作って被せれば蓋にもなる。注意するのは水に濡れたままにしないこと。どうだ?」
「素晴らしいです!作成が簡単で軽い。それなのに丈夫そうですね!」

 ハンスはあっくんが作った籠を色んな角度から見て満足そうにしている。

「今から調理場に行って染色作業をしたいが構わないか?」
「はい。」
「しーちゃんはどうする?」
「それ、ただ煮るだけなんだよね?折角調理場借りるならその間に何か作ろうかなぁ。」
「いいね!じゃあ行こう!」













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