水と言霊と

みぃうめ

文字の大きさ
上 下
300 / 345

第300話    魔力操作と雪

しおりを挟む



 シモーネさんとの話し合いを終え、その足で竹馬を取りに外へと出る。
 米を炊くために作った蓋はさっき部屋に持ち帰り済みだ。

「筍って手に入ったのかな?」
「もう子達の元へ届いているはずです。」
「お米も?」
「はい。」
「じゃあ行こう!」

 子供達と遊ぶぞー!!!
 意気揚々と竹馬を……竹馬を…
 あー邪魔くさい!
 小脇に抱える量じゃない!
 重くはないけどこんなに何本もの竹持ったことなんてないんだよ!
 ハンスを見ると軽々と持ち上げていた。
 作った竹馬は足場の高さを変えたものを20組作った。
 つまり、竹は40本。
 半分ずつ持っても20本だ。
 何でハンスはこんなに楽勝なの!?
 あ……私がチビだからだ。
 背が足りてない腕も短い!
 こんなところでもチビの弊害が!

「紫愛様、少し此方におわけください。」
「いい!持てるから!」
「ですが「いいの!」

 意地を張りムキになり、途中何回か抱えきれなかった竹を落としては拾いを繰り返し、その度に全ての竹を抱え直し、そんなに長い距離ではなかったのに随分時間がかかってしまった。

 これなら2往復した方が早かった!!
 間抜けな自分をアホらしく思う。

「あー!おねーちゃーーーん!」

 そんなアホな私を見つけ、走り寄って来てくれる子供達が可愛いのなんの!!

「なんで外いったんだよ!!!ころされちゃうだろ!!!まものはこわいんだぞ!!」

 走り寄って来た子供達の中にあの時目が合った子がいて、私を心配して怒ってくれた。

「心配かけてごめんね。お姉ちゃんね、みんなに言ってなかったけど、魔物と戦うために来たんだ。とっても強いんだよ?だから心配いらないよ。」

 子供達に嘘はつきたくない。
 頭を撫でながら言う。

 しかしその子は私の手を払い除け

「うそだ!!!どうやってたたかうんだよ!ぼくたちとおなじへーみんだろ!?それにまだ子じゃないか!」

 うん、子供は正直だよね。
 平民の見た目はその通りだと思うよ。
 でも、私って子供に見えてるのかぁー…
 グサッとくるなぁーハハハッ…

「お姉ちゃんね、魔法使えるんだよ!」
「だからうそだろ!!!しにたいのか!」
「ちょっとだけ使って見せようか?見たら信じてくれる?」
「紫愛様!!いけません!」
「大丈夫。子供達を傷つけるようなこと絶対しない。」

 私はその場にしゃがみ、人差し指を立て、立てた先だけに魔力を少しだけ漏れ出るようにイメージする。
 抑え込めるなら1箇所から出すことだってできるはず。
 これでできなかったら赤っ恥だなぁー。
 より具体的なイメージをするために、針で指を刺した時にプクっと膨れて出てくる血を想像する。
 うん、魔力出てる、気がする。
 魔力が少なくて感覚としては微妙だけど…
 多分できる!!

 子供達に見守られながら、その微量の魔力で3㎝くらいのまん丸の氷が作れた。
 私の人差し指の先に浮いている氷を見て歓声が上がる。

「すごいっ!!!」
「ほんとにまほーだ!」
「なんで?」
「どうやったの?」
「ぼくにもできる??」

 口々に質問が飛び交う。

「ね?本当だったでしょ?」
「なんっ!どうやったのですか!?」

 私の肩を掴み問い詰めるようにしてくるハンス。

「肩、痛いんだけど。」

 私の少しの凄みと痛みの訴えに

「申し訳ありません!!」

 肩からぱっと手を離し飛び退くハンス。

「そんな顔したら子供達が怖がるでしょ?折角遊びに来たのに!お姉ちゃんと遊ぼうねー!」
「おねーちゃん!それ、なあに?」
「え?それって何のこと?」
「いまおねーちゃんがまほーでだしたやつ。」
「あ!これ!?氷だよ。お水が冷たくなると氷になるの。初めて見る?」
「うん!」
「触ってみる?」
「いいの!?」
「ずるいぞ!」
「なんでおまえだけ!」
「わたしもさわりたい!」
「はいっ!喧嘩しない!みんなの分作るから!1人1個!それでいいでしょう?」
「「「「「「うん!」」」」」」

 氷を1人1個ずつ出し、順番に渡す。

「てがぬれるよー!」
「ぼくの小さくなっちゃった!」
「ぼくのも!」
「これなくなっちゃうの!?」
「あははっ!溶けたらお水に戻るんだよ!」
「おねーちゃん、これ、たべれるの?」
「食べたい?」
「たべたい!」
「今持ってるのは食べちゃ駄目だよ!みんな、手は綺麗なのかな?うーーん、汚いね!みんなが綺麗に手を洗ってきたら食べられる氷もう1回出してもいいんだけどなぁ~!」
「あらってくる!」
「あ!ぼくも!」
「待って!競争じゃないよ!みんなにあげるから、みんなで仲良く行ってきてね!」
「「「「「「はぁーい!」」」」」」
「綺麗にしてくるんだよー!」


 子供達が手を洗いに行った隙にハンスを叱っておこう。
ハンスを睨み付け、低い声で咎める。

「ハンス、子供達の前でどういうつもり?」
「申し訳ありません。」
「騎士は子供達の憧れでお手本でしょ?あんな乱暴な姿見せたら騎士は幻滅されるか恐怖の対象だよ!1度怖い印象がついちゃったら取り戻すのに何年かかるかわかってんの!?折角良く思ってくれてるのに騎士は何しても許されるなんて思われたらハンス1人のせいで全部台無しになるんだから気をつけてよ!」
「申し訳、ありません。」
「ハンスならわかってると思ってたけど?」
「軽率でした。」

 ハンスらしくない行動。
 でも何の非も無い子供達に怖い思いや嫌な思いをさせるのは許さない。

「今後ないようにして。もしあったら護衛外れてもらうから。」

 ハンスが息を呑む。
 だけど私は敢えて畳み掛ける。

「地球人の誰にも、2度と、近付かせない。」

 拳を握りしめているのが見える。

「……っはい!」
「子供はこの国の宝なんだよ。大切にね。」
「はい!」

 よし、このくらいでいいかな?
 ハンスの背中をバシッと1回叩き

「はい、お終い!もうすぐ子供達が戻ってくるよ!そうだ!お皿ないかな?」
「何にお使いですか?」
「さっきと同じ氷を出すとそのまま食べちゃうでしょ?あの大きさだと喉に詰まらせちゃうかもしれないから怖いんだよね。でも口には入れてみたい。でもあれ以上小さくしたら手に持ってるだけですぐに溶けちゃうから入れ物が欲しい。ハンスが戻ってくるまでは雪を見せてあげようかと思ってるよ。」
「ユキ?」
「ここ、雪って降らないんだっけ?」
「雨しか降るものはないと思っていました。」
「うん、その雨が凍ったのが雪だよ。」
「凍るのですか?何もせずに?」
「そう。子供達の人数分お皿持ってきて。」
「すぐに持って参ります!」

 ハンスと入れ違いに手を綺麗にして戻ってきた子供達はキラキラした目で今か今かと氷を待っている。

「騎士のお兄ちゃんがお皿を持ってきてくれるから、それまでお姉ちゃんが良いものみせてあげるね!」

 子供達の周りにだけ雪を降らせる。
 さっきコソッとやってみたけどできた。
 ただ、気温が高いからすぐ溶けてしまう。
 なるべく低い位置から降らせないと。

 降らせるのには成功。
 子供達は大興奮。

 ただ、針の先から漏れ出すような魔力は微量すぎて操作がとんでもなく難しい。

 あ、これ、私の訓練にもなるかも。

 雪を降らせているとハンスが雪を目にし、驚きの表情でお皿を手に近付いてくる。

「これも、紫愛様が?」
「そう、これが雪だよ。どう?綺麗でしょ?」

 余所見をしていると雪が消えてしまいそうで、すぐに子供達の方へと視線を戻す。

「神秘的ですね。」
「そうだね。」

 私に感動している余裕はないけどね!!

「はーーーい!雪は終わり!みんなこっちに来てー!」
「えー!もうおわり!?」
「もっとあそびたかった!」

 口々に文句が出る。

「あれぇ~?騎士のお兄ちゃんが戻ってくるまでって言わなかった?それに、氷食べるんじゃなかったっけ?食べないのかなぁ??」
「たべるたべる!」
「どんなだろう??」
「お皿に入れて配るからね!みんなにあげるから喧嘩しないで並んで!氷は水が固まってるだけだから、さっきの雪みたいに溶けちゃうと水に戻っちゃうからね!溶ける前に食べてね!」
「「「「「「はーい!」」」」」」

 私がお皿に出したのは1cm程度の球体の氷を1人5個。
 これなら喉に詰まらないし、1個だけじゃすぐ終わっちゃうもんね!
 お皿にどんどん出していき、配るのはハンスの仕事。
 ハンスに笑顔でお礼を言いながら受け取る子供達に頬が緩む。

 それぞれ舐めたり噛んだり、手の平に乗せて溶けていくのを不思議そうに眺めていたり、思い思いのやり方で楽しんでいる。

「もっとたべたーい!」
「ぼくも!」
「わたしも!」
「あんまり食べると身体が冷えて良くないからもうお終いだよ。でも!その代わりに新しい玩具作ってきたんだ!今度はそれで遊ぼう!難しいからね!できるかなぁ??」
「できるよ!」
「どうやってあそぶの?」
「おしえてー!」
「うん!一緒に遊ぼう!まずはお姉ちゃんが遊び方を見せるから見ていてね!」

 そうして今度は竹馬で思いっきり子供達と遊び、癒されるのを感じた。
 その後はお母様方に筍の下処理を教え、磨ぎ汁作成のために研いだお米を持ち帰った。














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...