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第201話 畑の実情
しおりを挟むみんなでシフォンケーキを食べながら優汰に質問をする。
「ねぇ優汰、畑の具合はどうなの?」
「待ってました!!!みんな全然聞いてくれないんだもん!何で!?何で気にしてくれないの??みんな上手い野菜食いたいんじゃなかったのかよ!」
優汰のあまりの勢いにドン引きだ。
「そんなに言いかったなら自分から話せば良かっただろ?」
あっくんは呆れている。
「だってみんな魔法魔法魔法!!!その話しかしてないのに言えるわけないじゃん!」
「悪かったよ!で?実際畑はどうなんだ?野菜は作れそうなのか?」
「今のままじゃ無理!ぜぇーーーったい無理!!!こっちの野菜の作り方がそもそも有り得ない!話にならない!!」
急に怒りだす優汰。
情緒不安定が過ぎる。
「どう有り得ないんだよ。」
「聞いてよ!ここの野菜、砂地で作ってんだよ!!」
「「「「は?」」」」
みんなの声が揃う。
「いやいや、そんなもん無理だろ!知識がない俺だってそんくらいわかるぞ?」
「そうよ!適当言ってんじゃないわよ!」
あっくんも麗も信じない。
「適当なわけないだろ!?見りゃわかるよ!砂地にズラッと野菜植わってんだから!」
まさかの話だった。
優汰に疑問をぶつける。
「それ一体どうやって栄養得てるの?そもそも砂だと水すら素通りじゃないの?私だって信じられないんだけど。」
「俺だって信じられなかったよ!砂だよ?栄養源も保水力もゼロじゃん!育つわけないじゃん!?そんなんできるなら何で砂漠があんのかって話だよ!だから畑担当してる奴に聞いたんだよ!そしたら何て言ったと思う!?野菜に魔力やってるんだってさ!!」
「「「「はぁ!?」」」」
再びみんなの声がピッタリ!
「じゃあ魔力のみで作ってるってこと?」
「そうだと思う。有り得なくない!?」
「待ってちょうだい!人間には魔力を流す概念がないのに、野菜には流せるの?おかしくはないかしら?それはどうやって流しているの?」
カオリンに言われて全員が矛盾に気が付いた。
「確かに……おかしい。そんなことができるなら人間にだって魔力が流せるはずだ。それとも、植物とは違い人間の構造が複雑すぎて流せないだけなのか?」
「あっくん、前に話したよね?私とあっくんは気と魔力を混ぜて流してるんじゃないかって。地球人が特別な魔力持ちなら全員が他人に魔力を流すことができてもおかしくないのに、できるのは私とあっくんだけ。私は、人間に魔力を流すことは気を理解してないと無理だと思う。」
「じゃあしーちゃんは野菜に魔力が流せるのはなんでだと思う?」
野菜には気なんて無い。
当然魔力も無い。
そもそも魔力を与えてそれを野菜が維持できるのかも不明だ。
「うーん……そういうものだと思ってるからなんじゃない?こっちの世界の人間は物理なんて知らない。なのにどうして魔法が使えるの?それは、魔法とはそういうモノだという固定概念があるから。物理の理解はしてなくても、できると思ってることが物理に反さなければ魔法として発現しちゃってる。それ、野菜にも当てはまらない?野菜はこういうモノだという固定概念。」
「じゃあ紫愛ちゃんは、私達に“流せる”という固定概念があったら他人に魔力が流せると思う?」
カオリンの疑問に、考え込む。
私はできないと思ってるけど、ただ“できないと思う”とだけ言ってもカオリンの欲しい答えとは違う。
ちゃんと説明しなければならない。
「もし、他人への魔力を流せることが普通だという固定概念があって、それでも流せないんなら物理に当てはまらないってことなんじゃない?気への理解があるからこそ流せるという証明にもなると思う。」
「なるほどね。確かにそうだわ。確認したいけれど……固定概念の判定なんて無理じゃないかしら?」
もう1つ思いついた事も口にする。
「逆にさ、野菜に魔力が全くないから流せるってことはない?抵抗が一切ないから流せる。」
「それも有り得るわね!」
「優汰はどう思う?」
「俺!?何で野菜に魔力が流せるかなんてわかるわけないじゃん!そもそもさ、何で直接魔力与えるの?そんな必要ある?育つのに魔力が必要って言うなら土に魔力混ぜたら良いじゃん!無理やり野菜に入れ込むんじゃなくて!野菜に任せるんだよ!本当に魔力が必要なら俺が作る土だけでは育たないってことでしょ?それだって確証がある話じゃない。」
野菜を魔力で育てているなんてとても信じられるような話じゃない。
地球ではどこの国でもどんな植物でも土に植えて生える物なんだから。
「俺が作った魔力無しの土と、俺が作った土に魔力混ぜ込んだ魔力有りの土とで野菜作って比較もしたい。今の砂地でなんか、絶対作れないからね!だから土壌作りから始めようと砂地の畑に土混ぜ込んでたらブチ切れられたんだよ!ここは皇帝専用の畑なのに一体なんて事してくれるんだって!!!おかげで俺は違う畑に移動させられたんだよ!」
「それ敷地内なのか!?」
「流石に遠くに行かれるのは困るからって言って皇帝の畑は外されただけ。」
「そうか……そういう大切なことはちゃんと言えよ!」
あっくんはホッとしている。
変な所に行かせられていなかったのは素直に安心した。
「ねぇ優汰。結局野菜は作れそうなの?」
「そんなのやってみないとわかんないよ。」
「そうだよねぇぇぇぇ……」
やっぱりお肉と牛乳は諦めるしかないか…
「なになに!?そんなに俺が作った野菜食べたいの!?」
優汰はとっても嬉しそうだ。
「そりゃあ勿論食べたいよ。野菜大好きだから。でも今考えてるのは野菜じゃないの。」
「紫愛ちゃんは野菜が欲しいわけではないの?」
カオリンにそう聞かれたから、この際素直な意見を聞いてみよう。
「カオリン、麗。このシフォンケーキ美味しい?」
「「美味しい!」」
「ありがとう。でもさ、何か足りないと思わない?」
「欲を言えばホイップされた生クリームが欲しいわ。でも紫愛ちゃんが作ってくれるお菓子はどれも美味しいし、大好きよ。」
「私も!」
「私もね、ホイップクリームがあれば完璧なのに!って思ったの。でも牛乳は破滅的な不味さ。ここのお肉だって、みんな我慢して食べてるでしょ?特に絢音は出された半分も食べられない。絢音だけじゃなく、地球のみんなは圧倒的にたんぱく質とカルシウムが足りてないと思うの。」
みんな渋い顔付き。
栄養バランスまで気にしてなかったんだろうなぁ…
「優汰が野菜を作れて余裕が出てきたら飼料を作ってもらって、牛の餌を変えたら牛乳やお肉美味しくなるんじゃないかと思って。変化が出るまでどれくらい時間が必要なのかは全然わからないけど……でもさ!牛乳があればご飯は劇的に変わるよ!お肉が獣臭くなくなったらタンパク源の問題は一気に解消するし、牛乳も臭くなくなったらバター作れるもん!バターって簡単に作れるんだよ!生クリームの作り方は……知らないけど、牛乳があれば試行錯誤はできるでしょ!?バターがあればコクが出るし、お菓子だってレパートリーはすっごく増える!アイスだって作れるかも!」
「紫愛!それ本当!?」
麗は目を輝かせている。
「本当だよ!お菓子ってね、大抵乳製品が必要なの。特にバターは必須!」
「やりましょう!優汰君!何が何でも作るわよ!協力は惜しまないわ!」
「私も!!!」
カオリンも麗もヤル気だ。
「そりゃー手伝ってくれるなら嬉しいよ。人手はどれだけあっても足りないから。でもさ、俺のやってることは全く理解されないみたいでさ、畑担当の奴らなんて変人を見る眼差しだよ!おまけに砂っ!!!砂は土じゃないから魔法も使えない!鍬とも呼べないような物で一生懸命土混ぜ込んでるから大変なんだよ!!」
「あんた、馬鹿なの?」
優汰に冷たい眼差しを向け麗がそう言った。
「麗酷くない!?俺超一生懸命やってんのに!」
「それ豪に頼めばいいだけじゃないの?」
「へ???」
「だって豪は全部土なんでしょ?」
「あ………………」
それを聞いて金谷さんは吹き出した。
他のみんなは全員呆れ返っている。
「金谷様!手伝ってください!お願いします!!」
「ふっ……ククッ…………いいよ……」
笑いを漏らしながら承諾する金谷さん。
「ねぇ、それなら全員で外に出てみない?1度も外に出ていないから外の空気が吸いたいわ。」
「そうだね!外の景色も見てみたいし!」
「じゃあ明日はみんなで優汰の畑を見がてら散歩でもしようか!」
「あ!待って!絢音は?外出ても平気なの!?」
「それも検証してみない?いつまでも気にして外に出られないのも困るわ。」
「……そっか。そうだよね。絢音は?お外に行くの大丈夫?」
「だいじょぶ。いつもおそといくとき、くろいめがねと、ぼうしと、ながそでと、てぶくろと、ますく、して、かささしてた。」
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「お外に出て、日焼けしたことある?」
「ある、かも?ままがあかくなるから、そのままおそとでるのはだめよっていってた。」
「赤くなるのね?赤くなって、痛くなった?」
「おぼえてない。ちいさいときなったってママがいってた。」
「お外に出ても、日焼けしないように気をつけましょうね。」
「うん。」
「じゃあ明日は練習場で訓練が終わってからみんなで外だな!」
「「「「「うん!」」」」」
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