118 / 345
第118話 勘違い
しおりを挟む「何言ってんの?何で麗が男だと思ったの?」
呆然とラルフに呟くように言ってしまう。
「まさか女子なのですか!?報告では男子だと……」
「ちょっと待て。報告って何だ?」
「こちらの部屋へ移動されてから服をお作りするためにサイズを測らせていただきましたよね?その際、上半身は薄布1枚、または裸になったと思いますが、そこでそのように報告を受けております。かねてより辻井様の性別はどちらなのか話題になっておりました。地球の皆様は見た目自体、大変幼い印象でありましたが、口にする言葉は見た目と違い成人のそれでありましたので、気分を害する恐れもあり、迂闊に性別も年齢もお伺いすることができずにいました。」
あの白い箱から出たために地球から着ていた着っぱなしだった服だけでは過ごせなくなった。あの部屋には魔法陣の効果によりお風呂にすら入らなくても綺麗なままが保たれていたけれど、それはあの箱の中だけのこと。
最初はサイズを測るのも抵抗したけど、さすがに下着はないと困るから渋々サイズを測らせた。
こういう時男は楽でいいよねぇ。
どんなドレスが良いかと聞かれ用意されそうになり、そんなもん死んでも着るかと言い放ち、今着てるようなTシャツを作れと強要した。Tシャツなら誰にだって作れる。同じ形の大きさの布を2枚縫い合わせるだけなんだから。
「ねぇ、つまり麗の胸見て男だって判断したってこと?」
「はい。胸がなかったようです。」
「こっちの人達は全員その認識なの?」
「はい。辻井様は男子だとの認識です。」
「ラルフから見て私達って何歳くらいに見えてた?」
「紫愛様と辻井様はまだ成人する前なのかと。川端様は成人されて間もない印象でした。失礼かとは思いますが、紫愛様も顔だけでは幼く見えて性別の判断がつかなかったのですが、その…体型が女子の身体つきでしたので…」
「こっちでは成人て何歳だ?」
「15です。」
「ねぇあっくん。どんなに胸が小さくても全くないってことはないと思うんだけど。」
「俺もそう思う。男と女ではそもそも骨格が違う。それにラルフが言うように成人前ならともかく、麗は20だ。さすがに有り得ないだろう。」
「では、本当に女子なのですか?」
この言い方だと、まだ疑ってるよね?
「ラルフは麗のこと女の子に見えない?」
「……はい。髪も貴族の男子よりも短いです。あのように短過ぎると平民でもなかなかおりませんので…それに着ていた服装もとても女子の物とは思えず、男子なのだとばかり…」
「それに加えて胸がないって言われりゃ男だと思っても仕方なしか。しーちゃん、却って良かったかもよ。」
「あ、そっか。異性に性的に狙われる可能性は減ったわけだもんね。」
「そーゆーこと。ラルフ、これ黙っとけよ。」
「畏まりました。あの、ですが、今度は女子に狙われるかと思うのですが…」
「え!?ショタ?」
「しーちゃん!もう!ラルフ、男と女、単純に考えてどっちのが強い?」
「それは男です。」
「そういうことだ。危険度の割合を考えればまだ女から狙われてた方がマシだ。」
「なるほど。わかりました。」
「はぁぁぁ。あ、しーちゃんはサイズ測る時下も脱げとか言われた?」
「言われてないよ?もしかしてあっくん言われたの?」
「ああ。俺みたいな体型のやつこっちにいないみたいでさ、デカいっつーとデブって意味らしくて、サイズが全くわからないからって言われたんだけど……脱がなかった。」
「うわぁーあっくんも狙われてる?」
「人の身体舐め回すように見てベタベタ触ってくるから髪の毛掴んで引きずり倒した。」
あっくんが?女性を?想像できない。
「あっくんて女性には等しく優しいのかと思ってた。」
「しーちゃん、前にも説明したけど!」
「わざとやってたんでしょ?わかってるよ。でも触られたくらいでそこまですると思わないよ?」
「じゃあしーちゃんだったらどう?得体の知れないやつにジロジロ見られた上に必要以上にベタベタ触られたらキレない?」
「キレる。」
「でしょ?ほんっとに気色悪かったんだよ。色仕掛けが俺に通用すると思われたら迷惑だ。そのメイド変えさせたから。」
その言葉に、土木の同僚の話が横切った。
「なるほど!チェンジだね!ぷっっ!あははは!なんかデリヘルみたい!」
「ちょっとしーちゃん!?なんでそんなこと知ってんの!?」
「同僚が、来た嬢が写真と違いすぎる!チェンジしまくったって言ってたから。」
「そいつ許さねぇ!!」
「あの…デリヘルとは何ですか?」
「あ、そっかラルフわかんないよね。部屋に女の子呼んでお金を払ったら性的なサービス受けることができるの。」
目をまん丸にするラルフ。
「……は?そんなものが地球には存在するのですか?」
「あのね、地球ではありとあらゆるモノが商売として成り立ってるの。それも1つの仕事なんだよ。エロなんて1番金儲け出来る手段の1つでしょ?」
「しーちゃん、それ、ラルフに言うの?」
「え?だって1人でするってことはそういう欲はあるってことじゃないの?」
「しーちゃん!!女の子なんだから!」
それは差別かい?
思わず眉根を寄せる。
「え?女だって性欲あるでしょ?男の性欲満たす為に女がいると思ってるわけ?そんなの成り立たないよ?マッキーにも言われたけどさ、その、女だからとか男だからとか私にはよくわからない。マッキーが、あんまりそういうこと言うと品が無いと思われるから、社会に出てから人から避けられちゃうから、働けなくなると困るから言っちゃ駄目って言うから言わなかっただけで、ここ社会もクソもないじゃん。」
「……じゃあしーちゃんもあるの?」
「何が?」
「……性欲。」
「は?あるわけないじゃん。」
「今言ってた事と違うよ!?」
「ある人とない人がいるでしょ?人類皆同じと思われちゃ困る。」
あっくんは暫しフリーズ。
「逆に、ないからそんなアッケラカンと話せるってこと?」
「そう。所詮他人事だからね。あ!そうだ!ラルフってさ、私の見た目が幼いから平気なの?それとも女に見えないから?」
「いえ、どちらも有り得ません。先程も言いましたが、下心がないからなのかと…紫愛様に嫌悪感自体感じたことがございません。」
「他に嫌悪感を感じない女性っている?」
「おりません。」
「そういえばさ、平民の人達ってどんななの?接触ある?」
「下の隊の者達は街の警備の仕事もありますので接触はあります。」
「そこで恋愛には発展しないの?」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる