水と言霊と

みぃうめ

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第94話    魔法④

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「待たせたな。しーちゃんと話したけどなぁ…ますます謎が深まるばっかりだった。俺達は異世界人だから特別なのかもな。」
「うん。あっくんが3つの因子持ってるのも結局謎だし。」

 あっくんと私はしらばっくれる。白々しくても話す気がないんだから仕方無し!

「2人が地球人の中でもとりわけ特別だということはわかっている。元から説明がつかぬことばかりであるからな。」

 納得したフリかもしれないけど…こういう時の特別扱いは楽でいいな。

「そういえば最初私が水の塊出した時、皇帝は何であんなに興奮してたの?」
「あれは、紫愛様がいきなり水を出したからです。」
「どういうこと?使えるか見せろって話だったよね?」
「はい。ですが、私達は目の前にあった器の中の水を動かすものだと思っていたのです。」
「なんで?」
「魔法が使えるようになるには時間がかかるからです。魔力制御にはおよそ3年。魔力操作には、早い者でも3ヶ月はかかるのです。紫愛様と川端様が魔力制御が可能なことは存じ上げておりました。しかし、魔力操作まで可能とは思っていなかったのです。もしや、という思いもありましたが、実際に目にいたしますと、やはり驚きは隠せませんでした。」
「何で水を出すと驚くことになるの?」
「魔力操作ができなくては、今ある物を動かすことはできても形として出現させるのは不可能なのです。想像はできても、それに伴う制御が行えなければ魔法としての発現には至りません。」
「つまり、想像ができて操作もできれば魔法は使えるってこと?」
「その通りでございます。」
「じゃあ風と土はどうなの?風はおこせるよね?土も動かせる。」
「操作ができなければ、風は微風のみ。土は、元々発現するモノではございませんので土の山を崩す程度となります。」
「じゃああっくんは動かしたり微風のみだったから操作ができないって判断したってこと?」
「はい。」
「あっくん、あの布、風で切ってみて。」

 それはさっき魔法で動かしてみろと言われた布。
 そう言われてみればあっくんがしたのは因子検査のようなものだった。

 私の発言に、皇帝とギュンターは「できるのかっ!?」「できるのですか!?」と口々に言っている。

「あっくん、できるよね?」

 あっくんなら、確固たるイメージさえできれば簡単なはず。私とあっくんは魔力操作に苦労したことはないんだから。

「やったことないからわからないけど、イメージして魔力流せばいいんだよね?」
「そうそう。スパッと切り落とす感じで。」
「今のしーちゃんの説明わかりやすくていいね!やってみるよ!」

 あっくんが魔力を流す。
 布はスパンっと下半分がヒラヒラと舞い落ちていった。

「やっぱりできたね!あっくんならできると思ってたよ!」
「しーちゃん、ありがとね。」
「なんと…」
「川端様も操作できたのですね!」
「川端殿!では、つぎは火を出してみてくれ!」
「火を出す?どうやって??」
「は?」
「火花もないのにどうやって火を出したらいいんだ?」
「出せないのか?」
「当たり前だろ?起点がないのに出せるわけがない。」
「………では、土は?」
「土で何したらいいんだ?」
「土を自在に動かせるか?」
「あぁ、それなら。さっきのウサギみたいな感じだろ?」
「「ウサギ?」」
「さっきあっくんが土を崩してから土を掴んだでしょ?あの土でウサギ作ってくれたの。もしかして小さくて見えてなかった?」
「徐ろに土を掴んで握り固めただけだと思っておった。」

 何よその謎行動は…

 あっくんが土に魔力を流して行く。
 地面の土が私の背丈程の大きさで丸や三角、どんどんいろんな形に変化して行く。
 最後に私の背丈の半分ほどのウサギさんが目の前の土からぴょこんと生まれた。

「大きいっ!可愛い!」

 私は手を叩き喜ぶが、皇帝達は難しい顔。

「何故そこまでできて火の発現に至らないのだ?」
「何故って…逆にどうやってあんたらは火を出してるんだ?」
「どうと言われても、火を出すイメージをして魔力を流せば火は出るであろう?」
「?????意味がわからねぇ。そこにある火は動かせても出したりはできねぇだろ?」
「すまないが、私には川端殿が言っていることが理解できない。ギュンターはどうだ?」
「はい。申し訳ありませんが、私も理解できません。」
「ねぇ、あっくん。火は大きくできる?」
「あぁ、それなら。」

 そして目の前の薪についた火を大きく燃え上がらせるあっくん。
 確かに火は大きくなったけど……

「ねぇ、それ、火魔法じゃなくて風魔法で大きくしてない?」
「「「え?」」」

 あっくんは不思議な表情。
 皇帝とギュンターは困惑している。

 でも、火を大きくするのって空気を送り込んでるってことじゃないのかな?

「しーちゃん、俺間違ってる?」

 手招きして耳打ちのジェスチャーをすると、あっくんは屈んでくれる。

「多分あっくんは無から有が生み出せないと思ってるから、動かすことはできても大きくしたり小さくしたりができないんじゃない?私も火を大きくするのって風のイメージだもん。」
「じゃあ俺、火の因子持ってるだけで投げるとかそういうのしかできないってことになるよね?それなら火炎瓶とかで充分ってことにならない?」

 私はあっくんへの耳打ちをやめ、嘆く。

「そんなこと言ったら私はどうなるの?水出せるだけなんだよ?考えられる威力あるのなんてウォーターカッターくらいだよ!あとは溺死させるためにウォーターボールくらい?」
「紫愛殿は一体何を申しておるのだ?水の発現が可能ならば、それを当てれば良いだけであろう?」
「いやいや、水の塊当ててどうするっての?相手をびしょ濡れにさせるため?あ!後で凍らせればいいってこと?」
「それが可能なのは紫愛殿だけであろう。氷を発現させたいのであれば、火魔法と水魔法を同時に発現させなければ氷の発現は成し得ない。」
「なんで???」
「火の因子を持つ者は水に直接の作用はさせられない。その逆も然り。火の魔力と水の魔力がぶつかり、作用しあい、氷の発現に至るのだ。」

 あ、そっかそうだったよ。
 火の因子持ちが水操れるわけなかった。

「じゃあ氷ができれば火魔法も強くなるんだよね?」
「その通りだ。」
「じゃあさっきの水を当てれば良いってのは?」
「言葉の通りだ。相手に当たれば、貫通はしなくとも擦り傷では済まないのだから当てれば良かろう?」
「はああああぁぁぁぁ?擦り傷ではすまないって?相手濡れるだけでしょ!?」
「実際にやってみたことはあるのか?」
「ない!ないけどわかるよそんなの!」
「では実際見てみれば信ずるか?ギュンター。」
「はい。水の因子持ちはここへ!他の者は的を用意せよ!」

 第一騎士団の水の因子持ち達が集まる…けど…

 今まで周りにいた騎士の中に水因子持ってる人がいなかったから気がついてなかったけど…
 見た目が怖すぎる!!!
 見た目で差別するべきじゃないのはわかってる!
 だけども!
 肌が水色で瞳も水色ってのは不気味だ。
 皇帝くらい肌の色が青かったらまだコントラストがあるからマシだったんだろうけど、そこはやっぱり魔力量の違い。どうにもならない。
 なるべく顔に出さないようにしたけど、身体には力が入ってしまった。
 あっくんがそれを見逃すはずがない。

「しーちゃん、俺がいるから大丈夫だよ。」

 と、小声で囁いてくる。

「皆、そこから3歩下がり並び待機せよ。」

 皇帝にもバレてた。

 集まった騎士にも絶対バレてるよね…
 このままはさすがに駄目だ。
 私達のために集まってくれているのに、見た目だけで差別など許されない。


 その場から一歩踏み出し

「みんな、ごめんなさい。地球にない色見だったから驚いてしまいました。」

 頭を下げ謝罪する。

「紫愛様、どうかお顔を上げてください。ここにいる者に紫愛様に敵意を向けたりする者はおりません。」

 ギュンターの言葉に続き、水の因子持ちの騎士達は忠誠のポーズをとる。

「でも、嫌な気持ちにさせちゃったことには変わりないです。」
「そういう紫愛様だからこそ、です。対等に扱ってくださることに感謝申し上げたいほどなのですから。」
「しーちゃん、頭下げたんだし、感謝したいって言われてるんだから気にすることないよ。」
「…うん。」
「紫愛殿、案ずるな。驚かせないように顔を隠していたくらいなのだからな。想定内だ。今から水魔法を見せるが、良いか?」
「うん。お願いします。」













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