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第86話 護衛騎士①
しおりを挟むジジィのウキウキを尻目に異世界人達が迎えに来た。
「お部屋の準備が整いました。ご案内いたしますのでついて来てください。」
迎えに来たのはギュンターだったが、後ろに8人の騎士を従えている。
「ギュンター、その前に確認したいことがある。」
「はい、紫愛様。なんなりと仰ってください。」
「騎士達の誓いはどうなってるの?そっちで細かい説明は済んでるの?」
「勿論でございます。皆、第一騎士団の実力者ばかりで、先程詳しい詳細は陛下から直接行われました。勿論その際、陛下に誓われております。」
団長の様に他の騎士達にまでナメられるわけにはいかない。他の地球人達のためにも威圧しながら護衛に付く騎士達に言う。
「じゃあ今から私達の目の前でもう1度誓って。私達に危害を加えないこと。干渉しないこと。必要以上に接触してこないこと。もし破られるようなことがあれば即座に排除、制裁を加える。例え私達に殺されても文句は言わせない。以上を、己の命と家名に誓ってもらう。誓えない者は直ちにここを去れ。」
全員黙って1歩下がり、右足を跪かせ右手は拳で左胸に。
皇帝が現れた時もやってたから敬う意味があるんだろうけど、折角だから確認しておこう。
「ギュンター、これどういう意味?」
「忠誠を誓います。という意味でございます。」
「じゃあよろしく。って言いたいんだけどさ…正直、日本でも外人さんと交流なかったから、団長以外見分け付かないんだけど…みんなはどう?」
「俺も団長以外よくわからない。服装も一緒だし。瞳の色と体格でしか判別つかないとか、キツくねぇか?」
「え?あっくんは海外行ってたんじゃないの?それでも見分けつかないの?」
「顔の作りが似過ぎててなぁ、見慣れてくればわかると思うけど今の段階じゃ瞳の色と体格くらいか?髪型は変えられるからなぁ。」
「私はわかるわよ?」
「えっ!?カオリン凄い!」
「私は世界中を飛び回っていたから、あらゆる人種と交流があったせいね。」
麗、優汰、金谷さんもわからないと口にした。
「ギュンターどうしようか?見分けつかないんだけど。」
「これは…想定外でございました。どこから見てもわかるようにしませんと意味がありませんよね?」
「そうだね。守ってくれる人の判別くらいはしたい。それが最低限の礼儀でしょ?」
「………有り難いお言葉でございます。では、今つけているマントを外し、代わりにそれぞれ違う色のサッシュをつけるのは如何でしょうか?」
「??サッシュって何?」
「紫愛ちゃん、サッシュは所謂タスキみたいな物よ。」
物知りカオリンが助け舟を出してくれる。
「タスキ?それ剣の邪魔にならない?」
「ほら、今団長がつけているじゃない?あれがサッシュよ。」
「え?なんかつけて……あ、あぁそれのこと?邪魔にならないならそれで。」
よく見たら赤いサッシュつけてたわ。
「ねぇ、紫愛ちゃんさぁ、それつけてるから団長だって判別してたんじゃないの?」
優汰が呆れた声を出すけど…
「え?違うよ。私に敵意向けてるからわかっただけ。皇帝に私達の暗殺でも頼まれたの?ならその敵意隠しなよ。バレバレ。」
みんな体格も顔も本当に似ている。そりゃ顔が良い者同士で結婚していけば似るのは当たり前だ。要するにバランスが良い顔ってことだから。
部屋の中がシーンと静まり返る。
え?なんでみんな黙っちゃうの?
そう思っていたら低く身体に響く声が聞こえて来た。
「ギュンター、やっぱりコイツ外せ。ごちゃごちゃ言うんなら皇帝に意見しに行く。」
団長は動かない。
「おいテメェ、随分いい性格してんな?これだけ言われてもまだ敵意隠しもしねぇのか?皇帝に誓ってきたんじゃねぇのか?そりゃ嘘か?それともお前の代わりにギュンターを殺せばいいのか?」
団長の敵意が殺気に変わる。
「ヴェルナー、お前は団長はおろか騎士さえ失格だ。もう騎士を辞めろ。」
「何故ですか父上!コイツらは皇帝陛下に無礼を働き私のことも侮辱しました!」
「お前は心底愚かなのだな…紫愛殿と川端殿の話を聞いていてそれなのか?ここにいる他の騎士達は正しく理解しているぞ。地球から連れ去られた方達なのだ。私達が誘拐したも同然。だと言うのに私達に協力してくださるのだ。もしそれがお前だったらどうなのだ?大切な友人や家族や恋人と突然引き離され、家も財産も、お前のその団長という地位も全てを奪われ、自分を拐った憎い相手に頭を下げられたからといってはいそうですかとその犯人の為に働けるのか?」
団長は歯を食いしばり俯いた。
「お前が過去、陛下に救われ恩を感じていることは知っている。尊敬していることもな。だが、この方達にそれは一切関係がない。自分が尊敬している人物だからとそれを他人に押し付けるのか?では、お前を信頼しこの任務を任せた陛下はどうなる?今のお前の行動は陛下の信頼を裏切る事に他ならない。」
「ねぇ、大事な話してるとこ悪いんだけどさ、団長は護衛したくないけど皇帝に言われたから渋々護衛に付くの?だから仕事なのにこんなに私情まみれなわけ?」
面倒臭い!
心底どうでもいい!
親子喧嘩なら他所でやれよ!
「貴様っ!」
「あぁぁもうさー、そういうの本当にどうでもいいんだって。やるのかやらないのか聞いてんの。私は最初に聞いたよね?危害を加えたら殺されても文句言うなって。で!あんたは!私達に誓いを立てた!違う!?あんたの今のその態度、他の誓いを立ててくれた騎士達にとって物凄く迷惑だと思うんだけど?あんた団長なんでしょ?やると決めたなら手本になることしないでどうするの!?あんた一体何がしたいのよ!!」
ここまで言って駄目ならコイツはもう駄目だ。
部下の命より自分の私情。
強いが故にチヤホヤされてきてプライドが山のように高い。
敵意を向けてくる1番の理由なんて雑魚扱いされた逆恨みに決まってる。
皇帝のこと尊敬してるみたいだけど、尊敬する人を隠れ蓑にして自分の恨みを正当化するなんてゴミ以下だ。
私の言葉に僅かに目を見開いた後、固く目を瞑り、もう1度忠誠を誓うポーズをとった団長。
「申し訳ございませんでした。」
「わかったならいい。」
「しーちゃん!やっぱりコイツ俺につけて!」
「あっくん、それはもう終わった話だか「お話の最中に申し訳ございませんが、私からの要望をお聞き取り願えないでしょうか?」
新たな騎士からの声掛けに、え?誰?と首を傾げる。
「申し遅れました。私はラルフ マルクグラーフ ギトーと申します。ギトー家の五男になります。」
「えーっと、ラルフさん?」
「はい。私のことはお好きにお呼びください。私は第一騎士団の副団長をしております。皇帝陛下の御説明の際、団長と並び皇帝陛下の後ろに侍っていた者でございます。」
ラルフさんは団長とは全く違い丁寧に接してくれる。そうならばそれ相応に対応するよ。
「ごめんなさい、私まだ見分けがつかなくて覚えてないです。それで、ラルフさん?何か要望?があるんですか?」
「はい。団長ではなく、私を紫愛様の護衛につけていただけませんか?」
「「「「「は?」」」」」
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