水と言霊と

みぃうめ

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第79話    状況説明④

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「キショ。」

 麗が呟いた。
 顔も歪んで嫌悪感が全面に出ている。
 他の人達も、麗ほどではないが驚いている。
 というより引いている、のかな?
 シューさんはニコニコ笑顔で、素晴らしいとかボソボソ言っているが。
 美青年は相変わらずあっくんの左腕に巻き付いて顔を伏せたまま。金谷さんは興味がなさそう。
 あっくんは少しも動じていない。
 私もだ。

 私達の様子を変わらず伺っている異世界人達。
 どうやら麗の発言は意味がわからなかったようだ。
 そりゃそうか。コイツらがここにいることを考えたら実力者。魔法が使える。つまりは貴族だ。言葉遣いも平民や私達とは違う。
 “気色悪い”=“キショ”には繋がらないだろう。
 静まり返る部屋。
 私達の出方を待ってるの?
 あー時間の無駄。


「で?皮膚と髪と瞳の色が違う以外の相違は?」

 隠したいほどの違いと言うから、目が6個あるとか鱗で覆われているとかそういったモノを想像していたんだけど。
 どう見てもツノが生えているわけでも耳の位置が違うわけでもなく、私達と色が違うだけなんだけど?

「あ、あぁ、いや、色が違うだけだ。
 …………………………………驚かないのか?」
「なに、驚いてほしかったの?うわー皮膚が青い髪が白い目が赤い。目と耳が2つずつに鼻と口が1つずつ。これでいい?」

 私の棒読みに唖然とする異世界人達。
 私は構わず続ける。

「あんた達に協力する気はない。さっさと古い文献がある場所に案内して。」

 誘拐犯はハッと我に返り

「それはできない。」

 と言う。

「さっき言ったことは嘘?やっぱりここで滅ぼす!」
「待ってくれ!先程も言ったが、こちらにはかなりの犠牲が出ている。その犠牲になった者の大半は貴族の者達なのだ。このままでは貴族の家族達が黙っていない。無駄死にだったのかと。我々で君達を守ろうにも貴族のほとんどを敵に回しては守りきれないのだ。」
「全員始末すればいいだけ。」
「一緒に来た者達を守りながら戦い、勝算があると?」
「このクソヤローがっ!!!」

 ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!
 コイツは私以外の地球人達を人質にとりやがった!
 許さない!!!!!
 目から血が出るほど睨みつける。

「しーちゃん、落ち着いて。」
「できるわけないっ!コイツは私以外の人を人質にした!!!人質とって利用しようとしてる!!!絶対許さない!」
「しーちゃん!!!」

 再度呼ばれて、あっくんを見る。

「しーちゃんは地球に帰るのを諦めたの?」
「なんでっ!なんでそんなこと言うの!?」
「何をしても帰りたかったんじゃないの?」
「帰りたいに決まってる!!」
「じゃあ少し落ち着いて。深呼吸して。冷静に考えよう。コイツらを殺せば全面戦争だ。地球に帰る方法どころじゃなくなる。永久に地球に帰れない。」
「じゃあ使い潰されろってこと!?」
「そうじゃない。お互い利用し合えばいいだけだ。俺としーちゃんは戦える、魔法も使える。俺としーちゃんは戦って、香織さん達には地球に帰る方法を探してもらえばいい。俺達が戦えば、他の人達の安全は確保できる。シューさん以外は地球に帰りたいんだ。絶対探してくれるよ。俺としーちゃんが探しても大した役には立たない。適材適所、でしょ?」
「でも、他の人達がどうしたいかわからないよ。」

 チラリとカオリン達を見る。

「私はそれで構わないわ。元々帰る方法は探す予定だったんだし、私には戦う力は無いから狙われながら研究をするのは無理だわ。でも、紫愛ちゃんはそれでいいの?紫愛ちゃんと川端君だけが危険な場所へ飛び込むことになるのよ?」
「そうよ!確かに私にも戦う力は無いけど!2人だけが危ない目に合うなんて…そんなの…」
「俺はそれでいい。地球に帰る方法探す。」
「俺は…どうしたらいいかわからない。」

 みんな自分の意見を言ってくれた。

「私はあっくんの案で良いと思ってる。みんなに戦わせたくない。怖い思いも痛い思いもさせたくない。」

 あっくんは顔を晒した皇帝に言葉を投げる。

「おい。まさかここにいる全員を戦地に放り込むつもりはないだろう?俺としーちゃん2人が戦いに赴く。他の人達は地球に帰る方法を探す。これが俺達の最大の譲歩だ。これ以上は有り得ない。」
「それは君達2人以外が魔法を使えるようになっても、か?」
「当たり前だ。これ以上の譲歩は無い。」
「わかった。それで頼む。」
「一応言っておくが、帰る方法を探すことを邪魔立てしたりするなよ。帰る方法が手に入れば俺達は即座に帰還する。阻止しようとすれば俺達とお前達で戦争だ。」
「心得た。」

 あっくんは自分の話を終え、次はカオリンの番だと話し掛ける。

「香織さんはコイツらに何か要望などありますか?」
「そうねぇ、私が欲しいと言った資料はすぐに用意してもらいたいわ。麗ちゃん、私のお手伝いしてくれない?一緒に探しましょうよ。」
「いいの?私…何もできないよ……」
「あら、そんなことないわ。資料をまとめたり分析をしたり、1人ではとても手が足りないの。」
「…私で、良ければ。」
「じゃあお願いね。麗ちゃんはこの人達に何か要望はあるかしら?」
「今のところは思いつかな……あ!お菓子が欲しいかも。」
「まぁ、それは良い案ね!頭を使うと糖分が足りなくなるもの。」

 ギュンターは言われたことをメモしている。

「優汰と金谷さんは何かあるか?」
「俺は植物に関する知識しかない。暫くここで過ごすならこのまま不味い野菜を食べるのは我慢できない。それ関係で何かあったら俺はそっちに行ってみんなに美味しい物作りたい。」
「本当ですか!?それはこちらこそお願いしたいです。食糧事情も植物の育成状況が思わしくなく、不作が続いているのです!」

 ギュンターは興奮しながら会話に割り込んできた。

「川端さん、紫愛ちゃん、俺そっち方面に行ってもいい?」
「優汰がそれで良いなら。私もここの野菜の不味さにはウンザリしてたの。美味しい野菜楽しみに待ってるね。」
「うん!俺頑張るよ!」
「金谷さんは?」
「俺は機械の方に行きたいけど、ここに機械なんてあるの?」
「その“キカイ”と言う物はどんな物なのでしょうか?」
「道具を便利に使う物。」
「それは…もしかして魔法具では?」
「それが何かわからない。1度見てみたい。」
「勿論でございます。」
「シューさんは?」
「僕は聞きたいことがあります。貴方方のその肌色はこちらの世界では普通なのですか?」

 シューさんなかなか突っ込んで聞くね。
 異世界人なんだから私達と違う所があっても全く不思議じゃない、むしろ違う環境に住んでいて全く同じ方がおかしいんじゃないの?
 だからこそ目が6個あるとか鱗が生えてるとか想像したんだし。

「この肌色は貴族だけに現れる。稀に平民からも現れることはあるが、ここまで青くはない。平民は君達のような肌の色だ。肌が青い程魔力が強いのだ。そして髪色は発現する魔法の威力による。白いほど強い魔法が使える。白い方が魔力の通りが良いとされている。そして、瞳は属性の色だ。私は赤なので火だ。平民達は髪も瞳もほぼ茶色。魔力量が多くなくとも属性は人それぞれある。平民は魔力量が少ないからな、火属性ならば瞳は赤茶色。肌の青と比例して属性の色がより混じらないまま出てくる。そして、貴族にも平民達にも君達のような黒い髪に瞳は存在しない。」

 は?存在しない?
 姿形は一緒なのに?

「じゃあ、私達が平民寄りの見た目だから平民みたいだと蔑んでいたってこと?」
「それはあり得ない。」
「魔力至上主義なら貴族至上主義ってことだ。平民みたいな見た目の私達を忌諱するのは当然。あんた達が私達を怖がらせないようにって思って顔隠してたんなら逆だって言えるよね?あんた達側からすれば平民に近くても私達のこの色合いで魔力量が多いことは有り得ない。私達を化け物みたいに思ってんじゃないの?」














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