水と言霊と

みぃうめ

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第74話    最後の1人 ???

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「あっくん!!!繭!繭見て!!点滅してる!」

 その1言でスッと離してくれたあっくん。
 最初からスッと離せよっ!

「カオリーーーン!繭見て!!!」

 私のその1言で全員が最後の繭に近付く。

「点滅し出して30分くらいって言ったっけ?」
「そうね。大体そのくらいだわ。」
「繭破らなくて良かったぁ。中の人生きてたってことだよね?」

 麗は顔色が悪くなっている。

「麗、大丈夫。破らなかったんだから。」

 麗は言葉なく黙って頷く。気にしたら駄目だよ。

 全員で見守る中、点滅が終わった。

 息を飲む。

 やがて繭が霧散する。とてつもなく長い時間に感じた。



 中にいた人は、薄いミルクティー色の髪、瞳がグレーの青年だった。
 ここに居る地球人が全員ほぼ日本人かそれに近い人間、見た目も日本人ばかりだった為、予想外の人物の登場に全員が騒ついた。
 私も、出てくる人はてっきり日本人だと思い込んでいたのでビックリした!男4人、女3人の現在、バランス的にも女の人が出てくるのでは?と密かに予想していたので余計に衝撃が大きかった。

 その人は大きく目を見開きながら周りを見渡した後、そのまま布団に潜り込み出てこなかった。
 話しかける暇もないほどのスピード。
 みんなで顔を見合わせ、どうしようかと話し合おうとしたところで、シューさんがフライング気味に話しかける。

「初めまして。私は鈴木修と申します。私達はどうやらここに連れ去られ、そのままここで寝かされていたようです。ここに来る前のことを何か覚えていますか?」

 ...............................

「もし、聞こえていますか?」

 ...............................

「もしもーし。」

 ...............................

 よく見れば被っている布団が震えている。
 シューさんがそれに気がつかず、被っている布団に手を伸ばす。

「駄目!」

 伸ばされた手を思わず掴む。

「怯えてるみたいだから、触らない方がいいと思う。こんなに大勢で囲まれたのが怖かったのかも。私も最初は少し怖かったし。」
「そうねぇ。こんなに沢山の目があったら怖いわよね。もしかして、日本語がわからないのかもしれないわ。私が試してみてもいいかしら?」
「カオリンお願い。みんなは少し離れていよう。」

 カオリン以外は少し下がり、様々な言葉で話しかけていくが、どれも反応はしない。

「どれも反応しないわね。もしかして声が聞こえていないとか?」

 これは困った。
 反応が無ければ何もしようがない。

「カオリンどうしよう。」
「そうねぇ、落ち着くまで少し待ってみるしかないかもしれないわね。」

 布団の塊を見やる。
 ん??

「カオリン、あれ、目だけ出てない?」
「どれどれ?」

 カオリンが声を発した瞬間、確かに覗いていたはずの瞳が布団によってまた隠れる。

「確かにこっち見てたの。覗いてた。」

 するとまたグレーの瞳が覗く。

「あら、ほんとだわ。」
 サッ
「え?何で?」
 チラッ
「何で隠れるのよ!」
 サッ
「麗、大声出しちゃ駄目だよ。驚かせちゃうでしょう?」
 チラッ
「もしかして…」
 サッ

 なんとも気不味い微妙な空気感に包まれる。

「やっぱり。紫愛ちゃんの声に反応していない?」
「え?私の声?」
 チラッ………
「ほんとだ…何で?」
「しーちゃん大丈夫?」
 ジィーーー
「え?もしかしてあっくんの声にも反応してる?」
 ジィーーー
「俺も?」
 ジィーーー
「ほんとだ…」
 ジィーーー
「ねぇ!俺は俺!!」
 サッ
「優汰は駄目だね。」
 チラッ
「何でだよ!!」
 サッ
「金谷さんはどう?何か話してみて。」
 チラッ
「金谷です。」
 サッ

「あっくんと私だけみたいだね。」
 ジィーーー
「初めまして。わたしは紫愛って言います。」
「初めまして。おれは亜門って言います。」
 ジィーーー

 あっくんと私は顔を見合わせる。
 反応はしてくれてるけど、これどーすりゃいいのよ!

「カオリン、他の言語の可能性ある?」
「ないとは言いきれないけれど、よっぽどのマイナーでなければ何かしら聞いたことがあると思うのよ。チラッと見ただけだけれど、この人の見た目だけで言えばフィンランドかスウェーデンっぽいと感じたんだけれど、フィンランド語もスウェーデン語もロシア語も反応はなかったわ。もしかして声ではなく声質に反応しているのかも。」
「声質?」
「言語はわからなくても、紫愛ちゃんと川端君の声質が聞き取りやすいから反応しているとか、音階に反応しているとか…色々考えられるわね。」
「あっくん、どうすれば良いと思う?」

 丸投げしているのは自覚しているけれど、私ではどうすればいいか見当もつかない。ここは人生経験豊富な人に聞くのが1番だ。

「そうだね、俺としーちゃんの声にしか反応しないなら、2人で様子を見つつ話しかけ続けるしかないかも。」
「そっかぁ、じゃあ2人で暫く頑張ってみる?」
「そうだね、怯えてるみたいだし、感触が良さそうな俺ら2人で様子見しかないよね。」
「それなら私達は近くに居ない方が良さそうだし、2人に任せても良いかしら?」
「うん!任せて。」



 任せてと言ったはいいけれど、どう任されたんだ?
 反応するっていってもジッと見つめられるだけ。それはもう反応とは言わなくない?
 せめて頷いたりしてくれたら…

 あっ!!!!!!!!
 私、感情が色で見えたんだった!
 魔力制御できるようになって見えなくなったから忘れてたよ!
 この人の色が見えればどんな気持ちなのかある程度わかるかも…ていうか、色が見えれば言葉通じてるかもわかるんじゃない??
 しまったーー!さっきカオリンが話しかけてるの見てれば良かった!

 あれ?待って、色、どうやって見るの?
 よく考えたら魔力制御できるようになったら見えなくなっただけで、魔力制御ができてから色を見たことがない!
 あれって魔法なんじゃないの?
 魔力制御できるようになったら見えなくなったんだから魔法だよね?

 何の魔法?
 どうやって使うの?

 とりあえず見えるイメージ?

 見えろー見えろー見えろー!


 ……うん、見えないわ。

 何でよ!!!!
 見えてたよね!?
 魔法に大切なのはイメージと魔力操作だよね?

 おかしい…

 もしかして魔法じゃなかったの??
 魔力制御ができたタイミングで力がなくなっただけ?
 あんな短期間だけの意味不明な色が見えるだけの能力って何よ!
 よし、諦めよう。
 使い方もわからん不思議パワーに頼ってる場合じゃない!


 言葉は通じてるかわからないけど、とりあえず話しかけ続けるしかないよね?
 放置されるよりはマシじゃない?
 簡単な言葉の方がわかるかな?
 音階に反応してるならなるべく優しい雰囲気で不安を感じないように…

「身体は大丈夫?どこか痛かったりしない?」
 ジィーーー
「お腹は空いてる?」
 ジィーーー
「私とあっくんは味方だからね。」
 ジィーーー

 あああああぁぁぁぁ!
 もどかしい!せめて名前がわかれば呼びかけにも何か反応があるかもしれないのに!

「私は紫愛だよ。名前はなぁに?」
 ジィーーー

 ……ん?あれ?
 色、紫が見える…何で?さっきまで見えなかったのに?

「しーちゃん?」
「あっくん、何も反応してくれないよぉ。」
「俺も話しかけてみるね。君、言葉は聞こえてる?」

 おっ!赤色になった!意味はわからないけど、感情は動いてるってことだよね?

「あっくん、聞こえ…」

 ん?黒?待って、何に反応したの?

「あっくん?」

 変わらない。

「聞こえてる?」

 あれ?コバルトブルーになった。
 もしかして…

「あっくん。」

 黒に戻った。

「あっくんて呼ばれてた?」

 オレンジになった。
 いやオレンジって何よ!

「“あ”がつく名前かな?」

 オレンジが濃くなった。
 オレンジって否定的な色には感じないよね。
 じゃあ合ってる、の、かな?

「しーちゃん?」
「あっくん!多分この人名前に“あ”がつくよ!」
「えっ!?何でわかるの?」
「そんな感じがした!あっくんの名前に反応してる感じが!」
「???俺には何も変わってるように見えないんだけど?しーちゃんには感じたの?」
「うん。」
「………ちょっと待って、この人のことあっくんて呼ぶつもり?」
「うん!」
「駄目だよ。それに2人とも同じ呼び方だとどっちがどっちかわからなくなるよね?」
「じゃあこれからあっくんのことは亜門て呼ぶね。」
「嫌だよそんなの!俺がしーちゃんに呼ばれてたのに!名前は大切でしょ!しーちゃんにあっくんて呼ばれるのは俺にはとっては特別なの!それにそんなにコロコロ呼び方変えるもんじゃないでしょ!」

 うーわーあっくんコバルトブルー。
 そりゃいきなり新しく来た人に名前とられるのは悲しいよね。
 うん、今のは私が悪かった。

「あっくんごめんね。私が考え無しだった。」
「その人のことあっくんて呼ばない?俺だけにしてくれる?」
「うん。」
「良かったぁぁ。」

 うん、ピンク。もうめっちゃピンク。
 あっくんの色はコバルトブルーの悲しみしかわからん。


 そんな時、異世界人達が部屋にやってきた。













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