60 / 345
第60話 魔力⑥
しおりを挟む「2人でシーケンやる前に、ここに異世界人を入れないようにする為の協力者が必要だよね。誰にどこまで話そうか。」
「ここにいる人達ってみんな魔力あり?」
「うん。ただ、みんな同じくらいに見える。あっくんみたいに異常なほどの魔力は感じない。あっくんの魔力量にビビって異世界人が言いなりになってたんなら、他の誰も異世界人を止められない。」
「くそっ!どーすりゃいいんだよ!」
あっくんはかなり苛立っている。
「落ち着いて。まず、ここの人達が私達の話を信じてくれるかどうか…みんなもちろん魔力なんて見えてないし、私達と違って気がどんなモノかも知らないと思うの。その状態で、私達の話が信じられると思う?」
すると即座に強い口調で
「シュー、優汰は絶対駄目だ。可能性は無い。」
2人の却下を告げられた。
「じゃあ残りの人はどう?」
「金谷は、何を考えてるか全くわからない。喋ってるのを見る限りではヤツは利己的だ。面白がって協力する気になるかもしれないが、不安材料が多過ぎるな。麗は…俺はやめた方がいいと思う。考え方が固い。人を思いやる気持ちもあるみたいだが、柔軟性がないと受け入れられる話じゃないだろう。それに若いから臨機応変に対応できるとも思えない。」
今度の2人は何故駄目なのか、その理由まで細かく説明され、残るは1人。
「じゃあカオリン、だけ?」
「消去法でいくとそうなるかな。香織さんは俺たちのこと好意的に見てくれてる。しーちゃんに対しては特に。それに、あの人はかなり頭が回る。話した感じも柔軟で、それでいて芯がある。俺達の話を信じてくれるのであれば、協力してくれるはずだ。」
「あっくんて人間分析力が半端じゃないね。」
「戦場は心理戦も大切だったからね。」
「じゃあカオリンに話してみようか。」
「カオリン、ちょっと話があるんだけどいい?」
「どうしたの?何か話す気になったの?」
「えっ!?なんで!!??」
「だって、ずぅーーーっと2人でコソコソしてるんだもの。私じゃなくても気になるわよ。」
「ごめんね。仲間外れとかじゃなかったんだけど、確信が持てなかったし、信じてもらえるかわからなくて…」
「いいのよ。それで、話してくれるの?」
流石カオリン。明白な秘密に余裕の表情を浮かべている。
「うん。私達の話を聞いて納得できたらカオリンに協力してほしいことがあるの。」
「いいわよ、私にできることならね。」
「ありがとう。あのね…私達、魔力があるの。」
「えっ?」
予想外の話だったようでキョトンとした様子。
「しーちゃん、これから俺にしーちゃんの魔力を流して制御に繋げるんだよね?魔力を動かしてる時って仮の制御状態になる。それってさ、しーちゃんの魔力が俺に流れてる時は制御できてることになるんじゃないの?それだけなら苦もなくできるんじゃない?できるんならさ、香織さんにも魔力流して見たり感じたりしてもらえばいいんじゃないの?魔力。」
「そうだ!それだ!見てもらったら実感できるよね!」
そして、カオリンに今の状況、これから起こるかもしれない不安材料、それらからの脱却をしたいことを話す。
「なんだかワクワクするわ!私不思議なことや未知なることって大好きなのよ!」
少女のように目をキラキラさせてはしゃぐカオリン。
「カオリン、その顔無闇に男に見せたら駄目!みんなカオリンに惚れちゃうんだから!男はみんな狼。危険。」
「まぁ!まぁまぁ!そんなことはないわよ!ねぇ、川端君?」
なんかカオリンニヤニヤしてるけど、これは駄目だ。
「これだから自覚のない美人は困る!もっと危機意識を持って!変な奴が近づいてきたら足先を踵で思いっきり踏んづけて金蹴りして逃げるんだよ!」
カオリンとあっくんは目を丸くしたあと
「ふふふっあははっ!とても参考になるわ。」
と笑い、あっくんはなぜか遠い目をしていた。やられたことでも思い出してるのか?女の私にはわからんが男には悶絶らしいから。
「もう!笑い事じゃないんだから!」
「そ、それよりさ、とりあえず香織さんに見せてあげてくれない?」
「わかった。あ!じゃあ3人でやってみる?3人で手を繋いでさ。」
「「できるの?」」
「わかんないけど、多分?」
「ふふっじゃあやってみてくれる?」
「うん。ただ、集中だけはしてね。」
3人で手を繋いで輪になり、私が魔力を流す。最初は魔力に集中してもらうために目を瞑ってもらっている。
うん、ちゃんと流れてる。
「2人とも目を開けて周りを見てみて。」
2人とも無言だ。成功したと思ったけど、まさか失敗した?
「2人とも、何も見えない?」
「「見える」」
「良かった、成功だね。」
「これは、凄いの1言ね。」
「俺もこんなふうに見えるとは思ってなかった。」
「カオリン、これで魔力がどんなモノかわかった?」
「ええ、わかったわ。私の魔力はどんな感じなのかしら?」
「他の人と大差はないよ。あっくんだけ凄いから参考にしないで。」
「あら?でも今は川端君と一緒に制御を受けているからわからないわ。」
「あ、そっか。見てみたい?」
「そうね、そんなに凄いって言うなら見てみたいわ。」
「あっくん、手離してね。」
「わかった。」
そう言ってあっくんは輪の中から1人抜けた。
そしてカオリンはあっくんを見つめる。
「川端君は凄いことになってるわね。」
「俺そんなに酷いですか?」
「うーん、その体躯だから川端君なんだとシルエットでわかるだけで、顔はほとんど見えないと言っていいわ。見えないと言うより、歪んでる。のが正しいかしら?」
「なんですかそれ。俺バケモノみたいに見えてるってことですか?」
「まぁ、ハッキリ言えばそうね。折角イイ男なのに台無しって感じね。」
「そうなの、折角イイ顔してるのに台無しだよね。これで緑の服着てたら……超人ハ○ク。あはははははははは!」
「ちょっとしーちゃん!?酷くない?」
「あははははははは!無理!あはは!」
「しーちゃんてアニメ好きだよね…」
ため息をつくハル○。
駄目だ!腹が捩れる!
お腹を抱えて蹲る私を放って、ハ○クがカオリンに話しかける。
「とりあえず、俺にビビってこっちの奴らが部屋に入って来なかっただけかどうかを確かめたいので、次に奴らが来たら香織さん1人で飯だけ置いて失せろって言ってもらえますか?もしそれで奴らが引くのが確認できたら、俺はしーちゃんに魔力制御をやってもらいます。」
「わかったわ。」
「しーちゃん?いつまでも笑ってないでご飯食べたら次のご飯まで寝るよ。」
はーいと返事をしながら自分のベッドへ行く。
※
「川端君!紫愛ちゃん川端君の顔をイイ顔だって言ってたわね。」
「っんなっっっ!はぁぁぁ。香織さん、俺そんなにわかりやすいです?」
「好きって顔に書いて歩いてるわね。」
「ハハッまぁ本人には一切伝わってないですけどね。それでいいですし。」
「紫愛ちゃんはそれについては難しいでしょうね。でも、川端君が大切に想っているのは伝わってるわよ。」
「そうですかね、そうだと良いんですけど。」
「親方みたいって言われてたじゃない?紫愛ちゃんの大切な人に例えられるんですもの、大丈夫よ。」
「聞いてたんですか?」
「ふふっ聞こえちゃっただけよ。私は川端君を応援してるわ。」
「ありがとうございます。」
「カオリーンあっくーん!ご飯食べないのー?」
「紫愛ちゃんが呼んでるわね。ご飯食べに戻りましょうか?」
「そうしますか。」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる