水と言霊と

みぃうめ

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第37話    side亜門⑤

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 訳もわからず目が覚めた先で、目が合ったのは、クリッとした目がとても可愛い女の子だった。
 だが、声を掛けようとした瞬間、顔が歪んだのを見逃さなかった。嫌そうな顔をされたと思う。何せ一瞬だった。
 まさか知り合いだった?あんな可愛い子に知り合いなんていない!しかも何歳かもわからなかったぞ!

 ムクっと身体を起こす。あの子はどこにいったんだ?
 キョロキョロと視線を動かすと

 いた。

 いたが……

 なんだあれは…
 猫が毛を逆立てて威嚇してるようなそんな雰囲気。
 それにあの構えは?
 護身術でも習っていたのか?

 と、思った瞬間、その子が崩れ落ちた!

 すぐに近くの女性が近付いていく。
 その女の子はすぐに立ち上がったが顔色は悪い。近づきたいが、あの様子だと俺は怖がられているみたいだ。この見た目じゃ怖くて当然か。と、密かにショックを受けた。


 俺の横で様子を伺いながら話しかけ続けてくるオッサンもいる。

 魔法がどうとか言っているが頭がおかしいのか?
 それよりあの子だ。

 もう1度見ると、まだあの女性と喋っていた。顔色も戻ってきているし、1度話したい。

 オッサンの話も終わったみたいだし挨拶に行こう。



 いきなりこの子に話しかける勇気はない!
 とりあえずこちらの女性にしよう。

「川端亜門て言います。綺麗なお姉さんのお名前は?」

 いつもの調子で話し掛ける。
 その女性は照れる様子を見せていたが、俺には嫌悪感しか感じなかった。さっさと終わらせようと握手をしながらあの子をチラッと見ると

 わかりやすく驚いていた。

 しまった!!つい、いつもの癖で軽いノリで褒めてしまった!
 今更変えたらおかしいだろう。
 この軽さが生理的に無理な人だっている。
 あーーーーやらかした!

 覚悟を決めて話しかける!

「川端亜門です。可愛いお嬢さんのお名前は?」

 もう押し切るしかない!名前も知りたい!
 が、返ってきたのは

「大きいですねぇ。身長何cmですか?」

 だった。

 声も可愛い!!
 大きいですねだって!視線に嫌なモノも感じないし、これは褒めてくれたのかな?
 いや君こそ身長いくつよ?
 ちっさい!可愛い!
 見上げ過ぎて首痛そうだよ?


 ……あれ?この子何歳?俺39。もしかして俺ロリコンだったの?若い頃はそれなりに遊んでたけど女性を可愛いって思った事なんてなかったのはそのせい!?待てよ成人してたら合法!いや成人しててもこの体格差は犯罪?


 まずい!とりあえず会話を!

「198cmありますよ、可愛いお嬢さん。」

 とりあえずちょっと膝曲げてあげよう。首痛そうだし。握手はしてくれるかな?

 握ってくれた!手もちっっっさい!!

 あ!名前!

「お名前は?」

 名前知りたい!
 教えてくれるまで握っていようかな?嫌がられちゃうかな?

 そしたらこの子、あのオッサンをシューさんて呼んだ!羨ましい!と思っていたら爆弾を落とされた。

「川端さんに名前を尋ねられたんですけどね、名乗りたくない場合ってどうしたらいいんです?」

 しかも面と向かって。

 何で?今普通に喋ってたよね?
 名前すら名乗りたくないの?

 するとオッサンが何やらフォローを入れてくれたが、話をよく聞いていると俺だけじゃなく全員に名乗りたくないって言ってる。
 さっきの魔法がどうこうって本当のことだったのか?そういえばこの子の事に気を取られててここがどこだかの説明もあんまり覚えてない。

 あ、手離されちゃった。

 と、思ったら記憶がない?親からの虐待?名前を変えて逃げるほど?
 それをこんなにアッサリと話して!もう立ち直ったのか?一体どれほど辛い気持ちで生きてきたんだ!

 様々な感情が一気に溢れ出し、気がつくと涙が溢れていた。

 俺は味方だ!!!

 みんなが口々に地球に帰りたい帰りたくないと言っているが、地球に帰ったらこの子と接点が無くなってしまう!!

「俺はここの文化を知りたいな。ここにもタトゥーあるのかな?」

 君と仲良くなりたい!と意思表示をしたくてこの子の手を取りギュッと握る!

 しまった!困らせてしまった。それによく考えたらこんなコワモテの泣いてたオッサンに近付かれるなんて怖いだろう。

「ごめん!こんな泣き腫らしたデカいオッサンに近寄られたら怖いよね!ほんとごめん!」

 と言うと、おっさん?と呟いた後キョロキョロしている。
 俺、オッサンじゃなかったらなんなの?
 すると1人のオッサンが俺はオッサンじゃない!と叫びながらこの子と馴れ馴れしく喋り出した。しかも優汰と呼び捨てだ。

 俺の事は川端さんて苗字に敬語だぞ!
 なんて羨ましいんだ!
 嫉妬の気持ちが抑えられない。
 それに俺と話したがってるのに優汰が散々邪魔して鬱陶しい事この上ない。
 内心イライラしていると、この子に、如何にオッサンかを力説されていた。
 ざまぁみろと思いながらふと気付く。優汰と同じ歳の俺もオッサンって言われたんだよなこれ。
  
 自分で自分のことオッサンて言うのは何も思わないのに可愛い子にオッサンて言われるのはダメージがデカいな。













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