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第3話 私の人生③
しおりを挟む親方の厚意に甘え、休みの日は親方の家に行き家庭教師に勉強を教えてもらったあと
「そのまま1日勉強していけ。折角教えてもらったのに忘れたら困るだろ。」
と言われ、そのまま勉強することになった。
親方の奥さんが昼も夜もご飯を出してくれ、次のお休みからは朝からいらっしゃいと微笑みながら言ってくれる。
暖かいってこういうことを言うのか。
今までは自分と無縁だったものだ。
こんな事ってあるのか。
応援してくれる先生や親方や奥さんや仕事仲間の為に試験頑張ろう。でも、試験受けてからもここで働きたい。恩返しをしていきたいと考えるようになった。
暫くそんな生活を繰り返し、久しぶりに先生が会いに来てくれ、先生と親方と奥さんとご飯を食べている時に
「試験に受かってからもここで働きたい。」
と思い切って告げる。
「駄目だ。」
と、親方の1言。
やっぱり迷惑だったかと落ち込んでいると
「あのなぁ、千早は何のために勉強頑張ってんだ?誰かの為なのか?ちげーだろ?自分の為だろう?しかも働きながら自腹切って家庭教師まで雇って勉強してんだ。そんなやつそうそういねーよ。普通はな、衣食住整った環境で、勉強したいって子供が言うなら親が金払って勉強させてやんだよ。千早は全部自力じゃねーか。そこまでして勉強してんだ。家と学校とここだけの生活しか知らねーだろ?外の世界もっと見てこいや。すぐには見つからんだろうが、千早が“絶対これやりたい”っつーもんが見つかるはずだ。なんか焦ってんのか?千早なら試験は必ず受かる!やりたいこと見つけるために大学とか行ってもいいんじゃねぇか?世の中遊ぶ為だけに大学行ってるやつらなんかゴマンといるぜ。んでな、色んなモン見て色んな経験して、やりたい事見つからなかったら帰って来い。辛くなったら帰って来い。逃げるのだって立派な1つの道だ。千早、お前は我慢のし過ぎだ。自分を押さえつけるなよ。お前は立派だ。今でも十分過ぎるほど立派なんだよ。けどな、まだ子供なんだよ。弱くたって良い、逃げたって良いんだ。逃げる場所には俺らが待っててやるからよ。いつだって帰って来い。俺らはもう家族だ。」
親方にそう言われた。
家族とは?
血が繋がっていないのだから家族ではないだろう。
だがあまりの親方の真剣な顔に、わざわざ訂正する気にはなれなかった。
そこからは卒認試験に向け、より一層勉強に励んだ。余計なことを考える時間はもったいない。試験に受かった後に考えても遅くない。年に2回。8月と11月。どちらも上旬だから、11月の試験は誕生日前で受けられない。とすると来年の8月。あと1年はある。
親方の言うとおり大学生になるのも良い気がしてきた。
親方の家の横にあるアパートに、あの後すぐに引っ越してきた。家主は親方だった。人に貸すと税金が安くなる云々言っていた。家賃収入目的ではなく税金対策らしい。私には意味がよく分からなかった。
私が家を出たいのを知っていた親方が、空きが出たらすぐに教えるから準備して待ってろと言ってくれていたのだ。
半分くらいは親方の所で一緒に働いている同僚達が暮らしているらしい。
親方が
「本当は俺の家に住めって言いたいけどな、千早は遠慮するだろう。けど目の届かない所で暮らされると怖いからこっちに住め。なんかあったらすぐ俺んとこ来いよ。」
そう言ってくれた。
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