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第4章 夢幻との決戦

   追いつめられた夢幻仙

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 「お、お前達、い、いったい何をしたんじゃ?」

 勝ち誇ったように嘲る妲己ちゃんを前に、直くんはおっぱい娘と遊ぶことも忘れて狼狽うろたえた。妲己ちゃんを見たり、窓の外をうかがったり、はたまた、虚ろな京香の裸体に不振のまなこを走らせたりとあっちこっちへ視線を泳がせた。

 「クックックッ、なんて様だい。このエロジジイ!」

 「ま、まさか、妲己ちゃん、あ、あんたがやったとは······と、とても思えん」

 「あたいは何もしてないよ。フフフフ、今の内に娘の体をたっぷりあじわっておいたら~ もうすぐ、風の壁を蹴散らした張本人が、あんたを叩き潰しにここへ来るからさ!」

 女を快楽の慰み物ていどにしか思わない、超男尊女卑な夢幻が、自分に対して漁色でも好色でもなく、卑屈な色を瞳に宿しているのを見て、妲己ちゃんは溜飲が下がる思いだった。

 「なぜじゃ、わ、わしが、何をしたと言うんじゃ?」

 「何を言ってんだよ、この色ボケ! 自分のしていることを自覚していない暑苦しい奴って、本当に嫌だね~!」

 「わしは、何もしとらんぞ!」

 「やってんじゃないか! あんた、太上老君からもらった能力で、何をしてきたのさ!」

 「娘らと楽しく遊んでいるだけじゃ! それ以外は何もしとらんぞ!」

 「ふざけんな、ジジイ! 娘達はあんたと遊んでるんじゃなくて、あんたに遊ばれてるんだよ。どう考えたら、あんたみたいなスケベと娘が遊びたがるわけ!? あんた馬ッ鹿じゃないの!」

 現実を正しく認識していない夢幻仙に、妲己ちゃんは怒りと嫌悪に侮蔑、そして、何よりもその能天気さに腹の虫が治まらなかった。

 売り言葉に買い言葉、どこまで行っても平行線を辿りそうな噛み合わなさのお互いなのに、こともあろうか、夢幻ときたら自分を愛人にしたがり、捕獲してからは厚かましくも口説きにかかろうと企てる、その傲岸不遜ごうがんふそんな態度を見せつけられては怒り心頭、指1本触れることもできず、言葉1つもかけられないようにしてやろうと、固く固く心に誓った妲己ちゃんだった。

 「やい、夢幻! 早くこの霊縄を解きなさいよ! ったく、太上老君のクソジジイ! 何でこんなクズに仙人の霊力なんてやったのよ」

 霊縄を解こうとして、妲己ちゃんが体を身悶えさせた時、階下で大きな爆発音が鳴り響いた。爆発の衝撃で家全体が小刻みに揺れた。突然の轟音に夢幻仙も妲己ちゃんも飛び上がった。

 風の壁を打ち破られてオロオロする夢幻仙の心に、突然の予期せぬ爆発は更なる追い打ちとなった。その精神的衝撃で、直くんに憑依していた呪縛を解き放ってしまい、直くんの肉体と夢幻仙の霊気が分離した。

 精神を乗っ取られて消耗していた直くんは、解放されるや意識を失い、同じく夢幻仙に心を操られていた京香の裸体の上に、覆い被さるように倒れ込んだ。

 京香は夢幻仙にかけられた魅惑の術が、まだ解けていないらしく、虚ろな視線を宙に描きながら己の裸体に直くんを掻き抱いて、恍惚とした表情を浮かべている。

 「あっ······あ~、直くん······来て······❤️」

 夢幻仙の銀白色に輝く霊気が、月明かりに浮かび上がる室内を狂ったように飛び回る。その様は今にもここから逃げ出しそうな慌てっぷりだった。

 夢幻仙の霊力は、今やまともに機能を発揮できるほどの集束はなかった。そのせいで、折角、捕獲した極上の玩具おもちゃを縛っていた霊縄も、粉々に砕けてしまった。

 「ついに正体を現したね、クソジジイ! 逃がしはしないよ! たっぷりこれまでのお礼をしてやるんだから!」

 妲己ちゃんは縛られて乱れた漢服の合わせから瓢箪ひょうたんを取り出した。はだけぎみな襟の間から、妲己ちゃんの美乳がチラリと覗けている。

 妲己ちゃんの官能的な胸の谷間に眼をやり、続いて、そこから現れた瓢箪を見ると、夢幻仙の霊気は血の気が引いたかのように、その輝きを弱めた。

 「フフフ、あんたにもこれが何か解るみたいだねぇ~」

 妲己ちゃんは指すような瞳で、夢幻仙の霊気を睨み付けながら瓢箪の栓を外した。

 「さあ、観念しな、エロジジイ!」

 「お~い、妲己ちゃん~! 大丈夫か~!」

 階下から南斗六星の間の抜けた声が響いた······


 
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