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第2章 京香の愛犬、シロ

    情魔ふたたび現る

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 「十分でき上がってんじゃねえか、ヘッヘッヘッ。ああ、またあのスケベな体にむしゃぶり憑きたいぜ!!」

 少年の状態に変化はない。体を樹に寄りかからせて、気だるい快楽に浸っている。少女の裸が悩ましくて仕方がない、かとでも言うように両手で股間を蠢かせていた。しかし、これがあの少年かと言うほどの豹変ぶりだった。

 「ほら、クソガキ、てめえの大好きなお姉さんの濡れ場だぜ。くっくっくっ、犬使ってオナニーかよ、てめえがしっかりと犯さねえからああなるんだよ」

 少年の体から、雑木林の闇よりもまだ濃い煙が立ち昇る。それは少年とそっくりな顔をしていた。しかし、淫らで酷薄そうな目付き、野卑た口調、そして、熱い想いを嘲笑う歪んだ口元は、到底この少年には作れないものだった。

 露天風呂の中で、少女の手が股間をまさぐっている。何を妄想しているのか、切なさに焼き焦がされそうな表情をしている。爪先をピンと伸ばし、想いの丈を疼く性器にぶつけているようだった。 

 「くっくっくっ、あいつ、今頃てめえを妄想してんだぜ。ヘッヘッヘッ、疼き焦がれて悶えちまってるじゃねえかよ!」

 もう一方の手が、痛々しいほど突き立つ乳首に触れた······ 切なすぎる喘ぎが聞こえてきそうな表情になった。見ているこちらの方にまで、甘い快感が伝わってきそうだ。

 少年は、とり憑かれたように伸ばした手を動かし、焦点の定まらない目で、快感に焼かれている少女を見続けている。その背中からは、煙男が上半身だけ実体化して、少年を嘲り眺めている。

 「てめえも、しっかりとこきまくれよ。でねえと、あの姉ちゃんも報われねえぜ、ギャッ、ハッ、ハッ!!」

 「アッ······きょ······う······か」

 「何を切ねえ声あげてんだ? たくさんこいてあの顔にひっかけてやれよ。ほらほら、切ねえ姉ちゃんが腰振ってるぜ」

 ······❤️

 少年の下半身から苦悶の精液が飛び散った。
しかし、少年の手は休まらない。体を仰け反らせて、体をビクッ、ビクッと跳ねている少女に向けて、生臭い亀頭をしごき続けていた。

 「······イッたか。クソガキ、あの姉ちゃんおめえが欲しくて堪らねえって顔してるぜ。俺が、これからあの姉ちゃんを可愛がってやるからよ、てめえは、ここでずっとこいてろや、ゲッヘッヘッ❤️」

 男は、少年から抜け出ると、姿形を完全に同形化させた。そして、ビンビンにいきり立った陰茎を扱きながら、露天風呂の中で放心している京香と絡もうと、淋しい秋の夜空に浮かんでいった。

 「アッ·····❤️」

 絶頂の余韻に浸る京香へ向けて、再度、少年は射精した。多少、飛距離が落ちたとは言え、素晴らしい速さの弾道を描いた。
 
 「京······香、気を······つけ······ろ、そ······いつ······は、俺じゃ······ない」

 バタン!······

 少年の精液が着地するのと同時に、大きな物音がした。それは、少年が倒れた音だった。精根が尽き果てて、げっそりとやつれた表情をし、意識の失った体をビクビクと震わせていた。

 「あ~~ん、直君❤️」

 京香は、焦点の定まらない瞳で空を見つめながら、男の名を囁いた。視界に少しずつ靄がかかっていく。すると、その向かうから10代くらいの顔つきをした少年が、表情に笑みを浮かべながら現れた。

 「直君······どう······し······て······ここに······?❤️」

 少年の淫らな笑みが京香の瞳に映り込んでいるが、虚ろな瞳にはそれが見えていないようだった。何かに憑かれたような表情で、目がさ迷っている。

 「クックックッ、術中に落ちたな。ヘッヘッヘッ、気持ち良くしてやるぜ、可愛い娘ちゃん❤️」

 淫猥な声が、京香を支配した。少年の酷薄な笑みが近づいてくる。情魔の術に絡め捕られた京香には、それが、胸ときめく大好きな彼の、爽やかな笑顔に見えた。

 「直君······待ってた······ずっと❤️」

 京香が焦がれていた想いが、夢の中で実現しようとしていた。その現実がどうで在ろうとも······ 

 

 

 
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