少女独房

雨濡 煤傀

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After4 捜索

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「炎!炎!起きろ!」

ん........お兄ちゃん......?

一体何があったの.......?

私は眠い目を擦って起きた。

時間は5:00。

休日なんだからもうちょっと寝かせてくれてもいいじゃんか......

ガチャ。

「お兄ちゃん......何.......こんな朝早くから.......」





「花蓮が........いないんだ.......」










どこ........どこ.........

どこにいるの一体.......!

「花蓮ちゃん!花蓮ちゃん!」

私は必死に叫びながら家中を探し回った。

でもどこにもいない。

どこを探してもどこを探しても。

......そうだ、地下.......!

私は急いで地下への階段を駆け下りた。









「花蓮ちゃん!」

地下に降りた私は、大きな声で名前を呼んだ。

「んあ........?」

しかしそこにいたのは壊れた人形だけだった。

「五十嵐さん、花蓮ちゃん見てませんか!?」

「ん.........?ハハ........あいつ、いなくなったのか。ざまぁ見やがれだぜ.........」

ブスッ。

「あ..........が............」

.......焦っていた私は、容赦なくおもちゃにナイフを突き刺して壊してしまった。

本当はもっと遊んでいたかった。

でもそれどころじゃない事態が起きたから、こうせざるを得なかった。

........ごめんね。

私はおもちゃの悲痛なうめき声を耳にしながら、急いで地下を後にした。











やっぱり、外を捜索しに行かなくちゃ......!

「お兄ちゃん、私行ってくる!」

「どこへだよ!?」

「魔女容疑で捕まってたみんなの家!もしかしたらそこに行ってるかもしれないから!」

「ちょ......炎、待て!今それらしいニュースが......」

お兄ちゃんの言葉など耳に入らず、私は外に出た。









まず向かったのは、杏ちゃんの家。

ピンポーン.......

『はーい......』

「あ、風渡です!ちょっといいですか!?」

『あ、はーい。ちょっと待っててね......』

早く......

ガチャ。

「おはよう、炎ちゃん。何かあったの?」

出てきたのは、杏ちゃんのお姉さんの夢乃ゆめのさんだった。

夢乃さんはお兄ちゃんの幼なじみで、私も昔からよく夢乃さんとも遊んでもらっていた。

「あの.......実は.......」

私は事の経緯を話した。

「そう.......でも花蓮ちゃんはここに来てないわ。」

「そうですか......ありがとうございます......」

「力になれなくてごめんなさい......」

「あ......いえ、大丈夫です。」

「あ、炎!遊びに来たの?」

奥にいた杏ちゃんが反応した。

手には花瓶を持っていた。

「ちょ......杏ちゃん!よそ見してると危な.....」

「わっ!?」

ガシャァァァァァァン.......

手から花瓶がするりと落ち、大きな音を出しながら大破した。

杏ちゃんも派手にすっ転んだ。

「痛っ!?」

杏ちゃんは破片の上に手をついてしまって怪我していた。

「大丈夫!?」

「う、うん......大丈夫.......」

杏ちゃんは怪我して血が出ている右手を隠している。

「杏里、大丈夫!?ごめんなさいね炎ちゃん......急にこんなことになっちゃって.....」

「あ、いえ......大丈夫です。そろそろ別の場所に行かないと......」

「そっか。あ、颯に伝えてくれないかな。妹を助けてくれてありがとうって。」

「分かりました。」

「またね、炎。花蓮ちゃん見つかるといいね。」

「うん、またね。」

私は二人に別れを告げ、次の場所へと走った。









次に訪ねたのは、紗菜ちゃんの家。

ピンポーン.......

ガチャ。

「あ......えと.........こんにちは........」

「こんにちは!花蓮ちゃんいませんか!?」

「あ........あの........いない、よ?」

「そっか......!ありがとう!」

「あ......ちょっと待って話が.....きゃっ!?」

パリーン......!

紗菜ちゃんは滑って、棚の上のスノードームを落として割ってしまった。

「だ、大丈夫......?」

「あ.....うん、大丈夫......」

「えっと......私もう行くね!」

「あ........またね.......」

ガチャ。

心配しながらも、私は聞くことだけ聞くとさっさと次の場所へ走って行った。










「........紗菜、来客は去ったか?」

「.......はい。行きました。」

「そうか。じゃ、部屋に戻れ。」

「......はい。」










「それにしてもお前みたいな出来損ないのビビり野郎にも友達ができるとはなぁ......!」

そう言ってお父さんは私をひたすらに殴る。

「やめて........お父さん........」

「あぁ?てめぇそれ以上喋ったら本気で殺すぞ?」

包丁を手に取り、お父さんは私に言い放った。

「........すみません。」

「分かればいいんだ。」

「あ......あの......」

「あ?何だ?」

「スノー.......ドームについて.......」

「.......あれか。母さんの買ってきたやつだな。別に俺はなんとも思ってないぞ。」

「えっ.......」

「あんなゴミの置いてったモンなんてゴミ同然だ。処分しようと思ってたからちょうど良かったぜ。」

......お母さん。

私が幼い時にお父さんと離婚してどこかへ行っちゃった。

お母さんはとても優しくて、お父さんみたいにいじめてこなくて、私はすごく大好きだった。

お母さんは出ていく時、私を連れて行くと言った。

でもお父さんが私を無理矢理ここに居させた。

理由は.......

今みたいに玩具おもちゃとして弄ぶから。

誰か.......助けて.......











次に来たのは、神楽ちゃん家。

神楽ちゃん家はおっきなバーになっていて、神楽ちゃんはここでバーメイドとして働いている。

ここにいるかな........

ガチャ。

「!?」

ドアのすぐそばに神楽ちゃんがいて、すごくびっくりしていた。

かきかき.......

神楽ちゃんはこちらに『いらっしゃいませ』と書かれたボードを見せてきた。

そっか。

神楽ちゃんはあの施設で喋ることができなくされていたんだったっけ。

「神楽、一旦休憩してお客さんと話してきなさい。」

店主さんである神楽ちゃんのお父さんが声をかけた。

神楽ちゃんはこくんと頷くと、私をバーのゲームコーナーへと案内した。










『それで、何の用でここに?』

「えっとね......実は色々あって、花蓮ちゃんがいなくなっちゃったの。」

『それは大変。』

「だから、もしかしたらここに来てるんじゃないかと思って。」

『ごめんね。ここには来てないよ。』

「そっか、ありがとう。」

『うん。見つかるといいね。』

事を終え、私がその場を立ち去ろうとしていたその時。

「神楽ちゃん、避けろ!」

ヒュッ!

ゲームコーナーにいたお客さんの声がした方を見ると、斧が飛んできた。

斧を投げて壁の的に当てるゲームをしていたらしく、変な方向に飛んでいってしまったみたいだった。

しかも、その斧は神楽ちゃんに確実に当たる位置に飛んできていた。

「危ない!」

私は思わず神楽ちゃんを突き飛ばした。

「!?」

神楽ちゃんはいきなり突き飛ばされて、何が起きたかよく分からないようだった。

「神楽ちゃん!良かった......」

「神楽ちゃん、すまんかった!」

『大丈夫です。心配しないでください。』

本当に大丈夫なのかな......

......あ、こうしちゃいられない。

早く次のとこへ行かなくちゃ。

「ごめんね、もう行くね。お大事に。」

神楽ちゃんはこくこくと頷いて手を振った。

私はすぐにバーを出て、また走り出した。











「なぁ、神楽ちゃん。あの子はなぜあんなに急いでいたんだ?」

立ち上がった私に、ゲームコーナーにいたお客さんが話しかけてきた。

『いなくなった友達を探しているみたいです。』

私はボードに書いて伝えた。

「そうか......その子はどういう子なんだ?」

『茶髪のショートヘアで、左目に眼帯をしている子です。』

「おい、その子ってもしかして、こないだ処刑された魔女の妹じゃないか?」

「知ってるのか?」

「おう。花蓮ちゃんっつー名前の子で、さっきここに来た子の家で一緒に暮らしてるんだとよ。」

「ほう......その子で違いねぇか?」

『その子です!どこかで見かけましたか?』

「やっぱりか.....」

「昨日は見かけなかったな......」

『そうですか。ありがとうございます。』

「おう。」

「神楽ー!こっち手伝ってー!」

お客さんとやり取りしていた時、お母さんの呼ぶ声がした。

行かなきゃ......!

『ありがとうございました。仕事に戻りますね。』

そう書いたボードを見せ、私はぺこりと頭を下げた。

「おう!」

「仕事頑張ってな!」

お客さんの声を聞きながら、私は仕事に戻った。











「そういえば今朝、昨日の夜に刑務所を襲撃した少女が銃殺されたってニュースがあったけど、まさかな.......」

「だな。考えすぎは良くないぜ。」











ピンポーン。

次の家、桜ちゃんの家のインターホンを押す。

しかし、いくら押しても庭の犬が吠えるだけだった。

........次行こう。

私は急いで走り出した。

......ポロッ。

走り出した途端、ポケットに入ってたチョコレートが転がり出た。

いつから入ってたんだろう......

それは犬の前に落ちた。

まずい......!

犬はチョコレートを食べたらダメなんだったっけ.......

「ダメ.......!」

私は犬が気づくより早く、すぐにチョコレートを拾いあげた。

「もう行くね......」

私はポケットにチョコレートをしまうと、また急いで走り出した。











この後も公園や図書館など、色々な施設を見に行ったけど、結局花蓮ちゃんを見つけることは出来なかった。

花蓮ちゃん.......

私があんなこと言っちゃったのがいけなかったのかな.......

........帰ることにした。













「えっ..........!?何.......これ.........」

家に帰った私の目に飛び込んで来たのは、信じられない光景だった。

.......真っ赤に燃え盛る家。

火事.......!?

急いで消防署に電話しなきゃ.......!









.........ちょっと待って。

さっきから何かおかしいと感じていた。

杏ちゃん家に行ったら花瓶が落ちて割れた。

そして破片で杏ちゃんが怪我していた。

紗菜ちゃん家に行ったら手を滑らせてスノードームが割れた。

ガラスの破片が飛び散り、怪我しそうだった。

神楽ちゃん家に行ったら、斧が神楽ちゃんのいる方向に飛んできた。

咄嗟に私が神楽ちゃんを押したからいいものの、避けなかったら大惨事になっていた。

桜ちゃん家では、私が油断した時にチョコレートがポケットから落ち、それを犬が食べそうになった。

気づかなかったからいいものの、気づいて食べていたら私が犬を殺したも同然になっていた。

......そして現在。

私の家が燃えている。

.......さっきから、私が行った先々で出会った人たちが危険な目に遭っている。










........出会った人が皆、死にそうな目に。

........そっか。

全てを理解した私は、燃え盛る炎の中に飛び込んだ。
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