少女独房

雨濡 煤傀

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After3 処刑

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.......ついにこの時が来た。

私は数多くの観衆が見守る中、処刑台に立たされていた。

皆、ついに魔女が処刑されると知り、ここに来ている。

魔女騒動に怯えていた村の住民。

ただの野次馬。

それから.......

........私に脈のある人物たち。

炎ちゃん、颯さん、魔女疑惑で収容されてた子たち、



...........花蓮。

本当にごめんなさい。

今までたくさん迷惑かけてごめんなさい。

「ではこれより、死刑囚園崎花純の処刑を執り行う。死刑囚は絞首台へ。」

.......私は合図で絞首台の上に立った。

「お姉ちゃん.......」

花蓮が寂しそうな声をあげている。

ごめんね.......

これから辛い思いすると思うけど、どうか負けないで。

寂しそうな花蓮を見つめながら、私は垂れ下がったロープに首をかけた。

ガー.......

私がロープに首をかけた直後、ロープを垂らしている部位がゆっくり上がっていった。

苦しい.......

......でも、炎ちゃんたちが味わった苦しみはこれよりもっと上だったはず。

意識が薄れていく。

目の前が真っ暗になっていく。

やっとみんなに償いができる。

私が死ねば、みんな幸せになる。

私が死ねば、みんな安心して生きられる。

「あっ........がっ...........」

首を締める力に思わず声を出してしまった。

「お姉ちゃああああああああん!」

........意識が薄れていく中、最後に聞いたのは大切な妹の私を呼ぶ声だった。










......花蓮ちゃんのお姉さん、花純さんの処刑から3日後。

あの日から花蓮ちゃんは、自室に閉じこもってしまって出てこない。

私やお兄ちゃんが呼んでも出てこない。

返事すら返ってこない。

部屋の前にご飯をいつも置いておくが、食べられているのはほんのわずか。

......そろそろ心配になってきた。

「......花蓮ちゃん。」

私はドア越しに声をかけた。

「......。」

やっぱり返事はない。

「花蓮ちゃん、出てきて。そろそろ私もお兄ちゃんも心配なの。」

「......。」

「きっと花純さんも心配してるはずだよ。花蓮ちゃんがこんな状態だったら。」

「.............放っておいてよ。」

「.....え?」

「貴方にお姉ちゃんの何が分かるっていうの......?貴方は家族を失ったことがないでしょう?でも私は.......幼少期に両親を亡くして、こないだもお姉ちゃんを亡くして......うぅ.......」

「花蓮ちゃん.......その気持ちはよく分かるよ。だけど......」

「いいから放っておいて。私はここから動くつもりはないの。」

「.........わかった。」

......私は花蓮ちゃんの思うがままにさせてあげようと、放っておくことにした。









「それで.......どうだ?花蓮の状態は。」

「説得しようとしたけど.......やっぱり駄目だった。」

「そうか........困ったな.......しばらくはあの様子だろう。」

「どうする......?」

「うーん......しばらくは様子を見るしかなさそうだな.......あの様子じゃなかなか出てこない。」

「そうだね.......それしかないのかな......」







ちゃぽん。

.......一人のお風呂。

.......いや、前はずっと一人だったんだけど。

花蓮ちゃんが来てからというもの、二人でお風呂に入ることが当たり前になっていた。

.......やっぱり一人は孤独。

早く元気になって欲しい。

「.......花蓮ちゃん、おやすみ。」

お風呂から出たあと、寝る前に私はドアの前で一言呟いた。

そして一人、寝室に入っていった。









「.......。」

深夜2時。

みんなが寝静まった頃、私は数日間閉じこもっていた部屋から抜け出した。

私が真っ先に向かったのは、颯さんの部屋。

ガチャ。

「くかー......」

颯さんは爆睡していて、私がドアを開けたのにも気づいていない。

カチャ。

私は机の上に置いてあった銃を手に取った。

......ダメだよ、こんな目立つ場所に銃なんか置いちゃ。

「........ごめんなさい、颯さん。」

私は寝ている颯さんに一言かけてから部屋を出た。






次に向かったのは、炎ちゃんの部屋。

「すぅ.......すぅ......」

炎ちゃんもぐっすり眠っていた。

ベッドシーツは、びしょびしょに湿っていた。

.........たくさん泣いたんだね。

ごめんね。

.........私のせいで泣かせちゃって。

「ごめんね、炎ちゃん。」

炎ちゃんにそう言うと、私は部屋を出た。








.......深夜のリビング。

静けさに包まれている。

みんなと過ごしたリビング。

みんなとご飯を食べたリビング。

みんなといっぱい笑い合ったリビング。

.......今日でお別れ。

短い間だったけど......

お世話になりました。

「......ごめんね、みんな。」

私はそう言い残して外に出た。






























『続いてのニュースです。昨夜深夜2時頃、骸村刑務所を一人の少女が襲撃しました。少女は職員3名を射殺した後、職員のライフル銃の発砲を受けて死亡しました。』
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