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6章 宇宙を司る株式会社
6-17. いきなりの初仕事
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ホテルへの帰り道、首都高を走っている時にドロシーが窓の外を指さして言った。
「え!? あ、あなた、あれ見て!」
「え? どれどれ……。えっ!?」
俺は心臓が止まりそうになった。
なんとそこには、あの九州サイズの巨大蜘蛛の姿があったのだ。ビルの合間から見える巨体……、この方角と距離なら房総沖の太平洋辺りにいるのではないだろうか? あんなものが上陸したら日本はメチャクチャになってしまう。
急いでiPhoneで調べてみるとネットは大騒ぎになっていた。どうも、東京目指して移動しているらしく、極めてヤバい状態になっている。
ピロポロパロン! ピロポロパロン!
iPhoneがけたたましく鳴った。
画面には『ヴィーナ♡』と、出ている。
俺は急いでタップして電話に出た。
「はい! モシモシ!」
『あー、お休みのところ悪いんだけど、ちょっと鎮圧に行ってくんない?』
「えー!? そんなの無理ですよ! シアンさんかヴィーナ様お願いしますよ」
『シアンはとっくに別の星に緊急出動してったわ。私も別件あるから手が足りないのよ』
「でも、研修受けたばっかですよ俺!?」
『つべこべ言うならカードで使った金、全額返してもらうわよ!』
何という脅し。それを言われてしまうと逆らえない。
「わ、分りましたよ……」
『大丈夫、誠が『活躍が見たい』って言ってたんでしょ? あなたは必ず活躍するって決まってるから安心して』
「え!? 何ですかそれ!?」
『これがこの宇宙の法則なの。いいから行ってらっしゃい。日本でもイマジナリー使えるようにしておいたから伸び伸びとやって』
「伸び伸びと言われても……」
『死んでもまた生き返らせてあげるから気楽に行ってらっしゃい! それではグッドラック!』
「あっ! ちょっと待……」
電話は切れてしまった。
そもそも俺はレヴィアの星の管理者って話だったのではないだろうか? なぜ、日本の蜘蛛の鎮圧に駆り出されるのか? それも一人で……。きわめて納得いかない。いかないが今さら金も返せない……。
俺は覚悟を決めた。
「運転手さん!」
「はい、何でしょう?」
「ちょっと、緊急事態なんで、車飛ばします」
「え?」
困惑する運転手を尻目に俺はイマジナリーで車を捕捉すると宙に浮かせ、そのまま空へと飛ばした。
いきなり眼下に広がる大都会、東京。そして、その向こうに異様な巨体をさらす蜘蛛……。
「ええっ!? 何ですかこれ!?」
驚く運転手。
「ほら見てください、巨大蜘蛛がいますよね」
空から見ると蜘蛛の巨大さは際立って異常だった。雲を突き抜けはるか彼方宇宙まで到達する九州サイズの蜘蛛。それは現実感の湧かない、まるでSFの世界だった。
「く、蜘蛛……」
唖然とする運転手。
「危ないので、一旦富士山に避難します」
俺はイマジナリーで富士山を把握し、その五合目の駐車場に意識を集中し、車をそこまでワープさせた。
「おわぁぁ!」
いきなり転送されて焦る運転手。
「では、私はちょっとあれ倒してくるんで、少し待っててください」
「え!? あんなの倒せるんですか?」
ビビる運転手。
「だって私はブラックカード保持者ですよ」
そう言ってニヤッと笑った。
そして、ドロシーに声をかけた。
「じゃ、ちょっくら初仕事行ってくるね」
「あなた……。気を付けてね……」
すごく心配そうなドロシーに軽くキスをして車を降り、うーんと伸びをした。
さて、研修の成果は通用するだろうか?
俺はまず見晴らしのいい所にピョーンと飛んだ。
はるか東、房総半島の向こう側にうごめく九州サイズの巨大蜘蛛。その体は霞の向こうにはるか宇宙にまで達し、太さ何キロもある巨大な足が雲を突き抜け、何本も屹立して見える。このままSF小説の表紙になりそうな圧倒的迫力のビジュアルに俺はちょっとたじろぐ。なぜ、退治したはずのうちの世界の蜘蛛が日本に出現したのか、全く見当もつかない。しかし、俺が日本のみんなを、世界を護るのだ。今、護れるのは俺しかいないのだから。
俺は大きく深呼吸を繰り返し、心を落ち着ける。
そして、指で輪を作り、指の輪越しに蜘蛛を見た。この輪を臨時の情報ウィンドウとし、蜘蛛を拡大し、各種ステータスを表示させる。
「ふむふむ……。ヌチ・ギめ、巧妙な事しやがって……、相当手が込んでやがる……」
俺はつぶやきながら蜘蛛の構成データへアクセスを試みる。
バチッ!
次の瞬間脳が揺れた、攻勢防御だ。
俺は思わず尻もちをつき、大きく息をついて首を振った。危なかった、意識が飛ぶ所だった。
でも、俺はこのアクセスで蜘蛛のセキュリティの脆弱性を見つけたのだった。ゲームばかりやってコンピューターシステムの穴を探す事ばかりしてきた経験が、こんな所に生きるとは。
「では、蜘蛛退治にシュッパーツ!」
俺はそう叫ぶと蜘蛛に向けて飛び立った。激しい衝撃波を立てながら超音速で神奈川県上空を突っ切っていく。
『地球を救え』と命令されて飛び立つ俺、それは子供の頃に見たアニメ番組そのものだった。子供だましの荒唐無稽な話だと思っていたが、今まさに俺がそれをやっている。
暗い部屋でゲームばかりやって命を落とした俺。それが可愛い嫁さんをめとり、女の子を授かり、今、ゲームで磨いたスキルで巨大な敵に立ち向かっていく。
人生って面白いものだな……。
房総半島を過ぎ、いよいよ巨大な蜘蛛が目の前だ。
「防御無効!」
俺はそう叫ぶとイマジナリーを蜘蛛全体に走らせる。
激しい閃光が太平洋を覆った……。
「え!? あ、あなた、あれ見て!」
「え? どれどれ……。えっ!?」
俺は心臓が止まりそうになった。
なんとそこには、あの九州サイズの巨大蜘蛛の姿があったのだ。ビルの合間から見える巨体……、この方角と距離なら房総沖の太平洋辺りにいるのではないだろうか? あんなものが上陸したら日本はメチャクチャになってしまう。
急いでiPhoneで調べてみるとネットは大騒ぎになっていた。どうも、東京目指して移動しているらしく、極めてヤバい状態になっている。
ピロポロパロン! ピロポロパロン!
iPhoneがけたたましく鳴った。
画面には『ヴィーナ♡』と、出ている。
俺は急いでタップして電話に出た。
「はい! モシモシ!」
『あー、お休みのところ悪いんだけど、ちょっと鎮圧に行ってくんない?』
「えー!? そんなの無理ですよ! シアンさんかヴィーナ様お願いしますよ」
『シアンはとっくに別の星に緊急出動してったわ。私も別件あるから手が足りないのよ』
「でも、研修受けたばっかですよ俺!?」
『つべこべ言うならカードで使った金、全額返してもらうわよ!』
何という脅し。それを言われてしまうと逆らえない。
「わ、分りましたよ……」
『大丈夫、誠が『活躍が見たい』って言ってたんでしょ? あなたは必ず活躍するって決まってるから安心して』
「え!? 何ですかそれ!?」
『これがこの宇宙の法則なの。いいから行ってらっしゃい。日本でもイマジナリー使えるようにしておいたから伸び伸びとやって』
「伸び伸びと言われても……」
『死んでもまた生き返らせてあげるから気楽に行ってらっしゃい! それではグッドラック!』
「あっ! ちょっと待……」
電話は切れてしまった。
そもそも俺はレヴィアの星の管理者って話だったのではないだろうか? なぜ、日本の蜘蛛の鎮圧に駆り出されるのか? それも一人で……。きわめて納得いかない。いかないが今さら金も返せない……。
俺は覚悟を決めた。
「運転手さん!」
「はい、何でしょう?」
「ちょっと、緊急事態なんで、車飛ばします」
「え?」
困惑する運転手を尻目に俺はイマジナリーで車を捕捉すると宙に浮かせ、そのまま空へと飛ばした。
いきなり眼下に広がる大都会、東京。そして、その向こうに異様な巨体をさらす蜘蛛……。
「ええっ!? 何ですかこれ!?」
驚く運転手。
「ほら見てください、巨大蜘蛛がいますよね」
空から見ると蜘蛛の巨大さは際立って異常だった。雲を突き抜けはるか彼方宇宙まで到達する九州サイズの蜘蛛。それは現実感の湧かない、まるでSFの世界だった。
「く、蜘蛛……」
唖然とする運転手。
「危ないので、一旦富士山に避難します」
俺はイマジナリーで富士山を把握し、その五合目の駐車場に意識を集中し、車をそこまでワープさせた。
「おわぁぁ!」
いきなり転送されて焦る運転手。
「では、私はちょっとあれ倒してくるんで、少し待っててください」
「え!? あんなの倒せるんですか?」
ビビる運転手。
「だって私はブラックカード保持者ですよ」
そう言ってニヤッと笑った。
そして、ドロシーに声をかけた。
「じゃ、ちょっくら初仕事行ってくるね」
「あなた……。気を付けてね……」
すごく心配そうなドロシーに軽くキスをして車を降り、うーんと伸びをした。
さて、研修の成果は通用するだろうか?
俺はまず見晴らしのいい所にピョーンと飛んだ。
はるか東、房総半島の向こう側にうごめく九州サイズの巨大蜘蛛。その体は霞の向こうにはるか宇宙にまで達し、太さ何キロもある巨大な足が雲を突き抜け、何本も屹立して見える。このままSF小説の表紙になりそうな圧倒的迫力のビジュアルに俺はちょっとたじろぐ。なぜ、退治したはずのうちの世界の蜘蛛が日本に出現したのか、全く見当もつかない。しかし、俺が日本のみんなを、世界を護るのだ。今、護れるのは俺しかいないのだから。
俺は大きく深呼吸を繰り返し、心を落ち着ける。
そして、指で輪を作り、指の輪越しに蜘蛛を見た。この輪を臨時の情報ウィンドウとし、蜘蛛を拡大し、各種ステータスを表示させる。
「ふむふむ……。ヌチ・ギめ、巧妙な事しやがって……、相当手が込んでやがる……」
俺はつぶやきながら蜘蛛の構成データへアクセスを試みる。
バチッ!
次の瞬間脳が揺れた、攻勢防御だ。
俺は思わず尻もちをつき、大きく息をついて首を振った。危なかった、意識が飛ぶ所だった。
でも、俺はこのアクセスで蜘蛛のセキュリティの脆弱性を見つけたのだった。ゲームばかりやってコンピューターシステムの穴を探す事ばかりしてきた経験が、こんな所に生きるとは。
「では、蜘蛛退治にシュッパーツ!」
俺はそう叫ぶと蜘蛛に向けて飛び立った。激しい衝撃波を立てながら超音速で神奈川県上空を突っ切っていく。
『地球を救え』と命令されて飛び立つ俺、それは子供の頃に見たアニメ番組そのものだった。子供だましの荒唐無稽な話だと思っていたが、今まさに俺がそれをやっている。
暗い部屋でゲームばかりやって命を落とした俺。それが可愛い嫁さんをめとり、女の子を授かり、今、ゲームで磨いたスキルで巨大な敵に立ち向かっていく。
人生って面白いものだな……。
房総半島を過ぎ、いよいよ巨大な蜘蛛が目の前だ。
「防御無効!」
俺はそう叫ぶとイマジナリーを蜘蛛全体に走らせる。
激しい閃光が太平洋を覆った……。
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