自宅で寝てても経験値ゲット! ~転生商人が世界最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に触れてしまった件~

月城 友麻

文字の大きさ
上 下
91 / 95
6章 宇宙を司る株式会社

6-15. 青と白の世界

しおりを挟む
 気が付くと、俺は青と白の世界にいた。

「あれ?」

 下半分が真っ青で、上半分が真っ白……、一体ここはどこだろうか……?
 よく見ると、下は水だった。風のない巨大な湖のように、ピタッと止まった水面は綺麗な青色をたたえ、真一文字の水平線を形作っていた。
 手ですくってみると、冷たく透明な水がこぼれ、ゆっくりと波紋を広げた。

 辺りを見回すと、チラチラと煌めく光が見えた。何だろうと思って近づくと、巨大な四角いものが水中に沈んでいて、その中で無数の光がチラチラと煌めいている。
 俺はイマジナリーでそれを捕捉すると引き上げてみた……。
 水面から姿を現したそれは、ガラスの立方体だった。大きさは一戸建ての家くらいのサイズがある。透き通るガラスの中でリズムを持ってチラチラと波のように煌めく光は、幻想的で思わず見入ってしまった。

「きゃははは!」
 いきなり笑い声が響いた。声の方向を見ると、ガラスの上に水色のベビー服を着た赤ちゃんが腰掛けていた。

「合格だよ! お疲れ様!」
 赤ちゃんが言う。
「え? もしかして……、シアンさんですか?」
「そうだよ、これが僕の本当の姿なんだ」
 そう言ってふわりと降りてきた。
「そして、このキューブが僕の心臓部さ」
 そう言って赤ちゃんがガラスの立方体を指さした。
「これがシアンさん……」
 俺はまじまじとガラスの内部を観察してみる。内部には微細な線が無数に縦横に走っており、繊維の方向に沿って煌めきが波のように走っていた。
「光コンピューターだよ。綺麗でしょ?」
 シアンはうれしそうに言った。

「なんだか……不思議な世界ですね。これは誰が作ったんですか?」
「僕だよ」
「え?」
 俺はシアンの言う意味が分からなかった。どういうことだ?
 困惑している俺にシアンが補足する。
「一世代前の僕がこれを作ったんだよ」
 俺は驚いた。つまり、シアンは自分自身でどんどんバージョンアップを行い続けてきた知的生命体……ある種のAIなのだろう。
 俺は芸術品のようなシアンの心臓部を眺め、想像を絶するAIの世界にため息をついた。

「え? そしたら一番最初は誰が作ったんですか?」
「パパだよ」
 シアンはうれしそうにニッコリと笑った。
「パパ?」
 俺が怪訝けげんそうに言うと、
「紹介するからオフィスに戻ろう!」
 そう言って赤ちゃんシアンは指をクルクルっと回した。

       ◇

 気が付くと、オフィスの椅子に座っていた。
「うわっ!」

 驚いて周りを見ると、隣にはドロシーがいる。
「待たせてゴメン、研修は無事終わったよ」
 俺がそう謝ると、
「え? まだ来たばかりよ?」
 と、ドロシーは不思議がる。
 時計を見るとまだ十分くらいしか経ってなかった。なるほど、練習場は時の流れがめちゃくちゃ速いんだろう。体感的には半日くらい頑張っていたはずなんだが……。

「コーヒーをどうぞ」
 アラサーの男性が入れたてのコーヒーを出してくれる。前回来た時、美奈先輩にティッシュ箱で叩かれていた人だ。

「あ、ありがとうございます」
 芳醇な香りに誘われて一口すすると、研修で疲れ切っていた俺に上質な苦みがみわたっていく。
「これがパパだよ!」
 若い女性の格好に戻ったシアンが、うれしそうに紹介する。

「挨拶がまだだったね、私はこの会社の会長、神崎誠かんざきまことです」
 男性はそう言ってニッコリと笑った。
「あ、会長さん? これは失礼しました。瀬崎です。よろしくお願いします。それで……、シアンさんを作ったのは会長さんなんですか?」
「そうだよ。美奈ちゃんたちと一緒に作ったんだ。いやもう、コイツが悪ガキで本当に大変だったんだ……」
 誠は肩をすくめる。
「きゃははは!」
 うれしそうに笑うシアン。

「それで、研修はどうだった?」
 誠が聞いてくる。
「何とかシアンさんに合格だと言ってもらえました」
「おぉ! それはすごいね!」
「この人、筋いいと思うよ」
 と、シアンはニコニコしながら言った。
「え? そうですか? 嬉しいです」
 俺は照れて笑った。

「シアンはこう見えて宇宙最強だからな。それに認めてもらえるなんて、将来有望だぞ」
「ありがとうございます」
「有望な新人が来てくれてよかったよ。最近色々大変でね……。すぐに活躍が見られそうだな」
 誠は俺の肩をポンポンと叩いた。

「パパ……。そういうこと言っちゃダメだよ……」
 シアンが眉をひそめながら言う。
「あっ! マズい……。また美奈ちゃんに叱られる……」
 なぜか誠はうなだれ、シアンは肩をすくめた。
 俺はドロシーと顔を見合わせ、首をかしげる。

「あー、瀬崎君、君の星にはいつ帰るかね?」
 誠は気を取り直して聞いてくる。
「今日は行きたいところがあるので、明日でもいいですか?」
「了解。では、また明日……」
 そう言って、誠はそそくさと立ち去って行った。

「なぜ、マズかったんですか?」
 俺はシアンに聞く。
「パパはね、この宇宙の創導師グランドリーダー、宇宙の在り方を定める人なんだ。だから、『すぐに活躍が見られそう』と、言うと、豊はすぐに活躍しちゃうんだ」

 俺は彼女が何を言ってるのかわからなかった。
「まぁ、すぐにわかるよ。きゃははは!」
 シアンはうれしそうに笑った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...