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6章 宇宙を司る株式会社

6-9. 大いなる力の責務

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「さて……、諸君! とんでもない事をしてくれたな……。まず、お前だ!」
 シアンはレヴィアをにらむと、腕をカメレオンの舌のようにビューンと伸ばし、レヴィアの胸ぐらをつかんだ。
「ロリババア! お前は許さん!」
 そう言うと、レヴィアの身体を高々と持ち上げる。
「止めろ! 何するんじゃ! 放せ――――!」

 直後、レヴィアが壊れたTVの映像みたいに、四角いブロックノイズに包まれた。
「うぎゃぁぁぁ!」
 悲痛なレヴィアの声がホールに響く。
 何とかしてあげたいがどうしようもない。ただ、呆然ぼうぜんと眺めることしかできなかった。

 やがて、四角いノイズ群はどんどんと少なく小さくなっていき……、消えてしまった。

 いきなり始まった凄惨なリンチに俺たちは戦慄を覚え、固まって動けなくなる。
 静まり返ったホールの上を、巨大な木星がゆっくりと動いていく。

「次に、ヴィーナ! お前だ!」
 シアンはヴィーナをにらみつけた。
 ヴィーナは無言でジッとシアンを見ている。
「今まで散々かわいがってくれたなぁ! おい!」
 そう言ってシアンは腕を伸ばし、ヴィーナの腕をつかんだ。
 ヴィーナは顔をしかめる。
「木星ではお前は力を使えんからな。この宇宙最強の娘には誰もかなわんだろ? はっはっは!」
 やりたい放題のヌチ・ギは極めて上機嫌だ。
 ヴィーナは腕を振りほどこうとするが、シアンの力は強く、ビクともしない。
「お前の身体は一度味わってみたいと思っていたんだ。どんな声で鳴いてくれるかな? クフフフ……」

 ヴィーナでもかなわないのであれば、もはや全滅するより他ない。みんな殺されてしまう。
「あ、あなたぁ……」
 ドロシーがガタガタ震えながら俺の腕にしがみついてくる。
 俺は優しくドロシーを抱き寄せたが……、これは、もう俺がどうこうできるレベルを超えている。

 乗っ取られてしまった『宇宙最強』の娘に捕らわれた金星の女神……。
 絶望が俺を支配し、目の前が真っ暗になった。

 すると、ヴィーナは静かに口を開いた。
「お前は……、勘違いをしているよ」
「は? なんだ? 命乞いか?」
 いやらしい笑みを浮かべるシアン。

「シアンは確かに宇宙最強。誰もかなわない」
「そう、最高だ!」
「だが、With great power comes great responsibility. 『大いなる力には大きな責任が伴う』だよ。その身体を操れるのはシアンだけだ」

 ヌチ・ギは笑う。
「はっはっは! 何を言い出すかと思えば……。こうやって自在に操っているじゃないか! 苦し紛れもいい加減にしろ!」
「ふふっ、その身体にはね、全宇宙の百万個の星の管理プロセスが走っている……。シアンは常に百万個の星を管理してるんだよ」
「はぁ?」
「お前はさっきからそれを処理してないだろ。そろそろエラーがあふれ出すよ。お前に処理できるのかい?」
「え?」
 シアンの表情が硬くなる。
「ほら、来るよ……」
 ヴィーナがニヤッと笑う。
「ぐっ!」
 シアンがひざをついて苦しい表情を浮かべる。
「ぐ、ぐぉぉぉ!」
 シアンは倒れもがき苦しみ始めた。

「な、なんだ、これはぁぁぁ!」
 シアンはものすごい表情でヴィーナをにらみ、ヴィーナはドヤ顔で見下ろした。

「くっ!」
 シアンはそう言うと、ビキニアーマーの女の子に飛びかかり、押し倒した。

 何が起こったのかと思ったら、女の子が動き出し、ハァハァと荒い息で言った。
「下手うった……。百万個の星の管理なんて聞いてないぞ!」
 どうやらヌチ・ギはビキニアーマーの女の子の中に逃げ出したようだ。

 すると、シアンは立ち上がり、
「いやー、失敗しちゃった! きゃははは!」
 と、楽しそうに笑った。
「シアン、そいつとっちめて!」
 と、ヴィーナが言うと、ビキニアーマーの女の子は焦って逃げだす。

 シアンは、必死に逃げようとする女の子の目の前にワープをすると、
「どこへ行こうというのかね? きゃははは!」
 と、笑いながら女の子を捕まえ、頭から白いもやのようなものを抜き取った。

「悪い子はこちらデース」
 そう言って、うごめく綿あめのようなものを楽しそうに手のひらでこねる。
「後で悪事を洗いざらい吐かせるから保管しといて。それからレヴィアの蘇生そせいもよろしく」
「はいよ!」
 シアンはそう言って、綿あめをポケットに詰めると、指先で空間をツーっと裂いた。
 そして、空間のすき間に手を入れて女性を引っ張り出した。
「よいしょっと!」

「え? あれ? なんじゃ?」
 キョロキョロしながら出てきた女性は、なんと海王星で見た大人のレヴィアだった。

「あれ? ずいぶん育ってない?」
 ヴィーナは怪訝けげんそうな顔をして言う。
 レヴィアは、豊満な自分の胸を持ち上げて満足そうな表情を浮かべると、
「これからはこの身体で行くとするかのう。うっしっし」
 と、うれしそうに笑った。

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