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6章 宇宙を司る株式会社
6-8. 太陽系第五惑星、木星
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「キャ――――! 素敵――――!」
「うわぁ! すごぉぉい!」
女性たちから黄色い歓声が次々と上がる。
初めて見る天空の宮殿に、女性たちの目はくぎ付けだった。
「んも――――っ! しょうがないわねぇ……」
ヴィーナは歓声に気を良くして、まんざらでもない様子である。
「マゼンタ! 彼女たちをもてなしてくれるかしら?」
ヴィーナは宮殿に向かって声を上げた。
すると、宮殿の底についていた四角い建物がスーッと降りてきて、ホールの壁の上に玄関を合わせて止まった。そして、階段がスーッと伸びてくる。
大きなドアがギギギギときしみながら開くと、中から執事が出てきた。そして、
「おもてなしの用意はできております、皆さまどうぞ」
と、言ってうやうやしく女性たちに頭を下げた。
女性たちは最初困惑していたが、ヴィーナが、
「美味しい食事とお酒、それに温泉もあるわよ! 今日はゆっくり休んで!」
と、みんなに声をかけると
「キャ――――!」
「やったぁ!」
と、歓喜の声が上がる。
そして次々と階段を上っていった。
何百人もの女性のもてなしをあっという間に用意する執事、いったいどれ程の修羅場を超えてきたのだろうか? ヴィーナ様に仕えるというのはこういう事なのかと、感嘆した。
解放された女性たちを乗せ、宮殿はすうっと消えていった。
全員乗ったのかと思っていたら、隅に一人うずくまっている娘がいた。
気になって駆け寄ってみると、革のビキニアーマーを来た女の子……、俺と戦った女の子だった。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
声をかけてみても反応がない。
シアンがスーッと飛んできて不思議そうに彼女を見つめ、首をかしげる。
「うーん、意識障害が残っちゃってるのかなぁ……?」
そう言って、シアンは自分のおでこを彼女のおでこにくっつけた。
「あっ! ダメ!」
ヴィーナが叫ぶと同時に、彼女から漆黒の闇がブワッと噴き出し、シアンを包んだ。
「うわぁ!」
俺は驚いて思わず飛びのいた。
駆け寄ってきたヴィーナは、
「あぁ……」
と、言って、額に手を当てて天を仰いだ。
「あれは何ですか?」
俺が恐る恐る聞くと、
「乗っ取られちゃった……」
そう言って首を振り、大きく息を吐いた。
闇が晴れていくとシアンは辺りを見回し、
「何だこれは……。ほう……。なるほど……」
と、低い声でつぶやく。
明らかに人格が変わってしまった。嫌な予感しかしない。
シアンはドヤ顔で俺たちを見回すとニヤッといやらしい笑みを浮かべ、指先をくるくると回す。
俺たちはホールごといきなり真っ暗な所へと転送された。
「うわぁ!」「キャ――――!」
いきなりの展開に俺は何が何だか分からなくなる。
ただ、最悪な事態が進行していることは間違いなかった。
ホールはゆっくりと回転し、向こう側から何かが見えてくる。
俺はすごい嫌な予感の中、それをじっと見つめた。
だんだんと見えてきた赤茶色の巨大な球体……それは何と木星だった。そう、俺たちはホールごと木星のそばに飛ばされたのだ。
俺は唖然とした。一体これから何が起こるのか……。ブルブルッと自然に体が震える。
太陽系第五惑星、木星。それは地球の千三百倍のサイズをほこる太陽系最大の惑星だ。
目が慣れてくると上空には満天の星空の中、壮大な天の川が走るのが見えてきた。その中に浮かぶ巨大な惑星……。表面に走る巨大な縞模様、そして特徴的な真っ赤で大きな渦、それが圧倒的な迫力を持ってホールの上を覆っていった。
「はーっはっはっは! 素晴らしい! 実に素晴らしいぞ!」
シアンは叫ぶ。
この笑い方……、ヌチ・ギだ。ヌチ・ギがシアンを乗っ取ったのだ。きっとあのビキニアーマーの子の中の意識領域にヌチ・ギは自分のバックアップを残していたに違いない。そして、シアンが近づいてきたので意識を奪ったのだ。何という抜け目なさ。本当に嫌な奴だ。
俺は思わず天をあおぐ。
最悪の展開になってしまった。シアンは宇宙最強。それを乗っ取ったヌチ・ギはこの宇宙を滅ぼす事すらできてしまう。もはや止められる者などこの宇宙に誰もいない。
皆、言葉を失った。
「うわぁ! すごぉぉい!」
女性たちから黄色い歓声が次々と上がる。
初めて見る天空の宮殿に、女性たちの目はくぎ付けだった。
「んも――――っ! しょうがないわねぇ……」
ヴィーナは歓声に気を良くして、まんざらでもない様子である。
「マゼンタ! 彼女たちをもてなしてくれるかしら?」
ヴィーナは宮殿に向かって声を上げた。
すると、宮殿の底についていた四角い建物がスーッと降りてきて、ホールの壁の上に玄関を合わせて止まった。そして、階段がスーッと伸びてくる。
大きなドアがギギギギときしみながら開くと、中から執事が出てきた。そして、
「おもてなしの用意はできております、皆さまどうぞ」
と、言ってうやうやしく女性たちに頭を下げた。
女性たちは最初困惑していたが、ヴィーナが、
「美味しい食事とお酒、それに温泉もあるわよ! 今日はゆっくり休んで!」
と、みんなに声をかけると
「キャ――――!」
「やったぁ!」
と、歓喜の声が上がる。
そして次々と階段を上っていった。
何百人もの女性のもてなしをあっという間に用意する執事、いったいどれ程の修羅場を超えてきたのだろうか? ヴィーナ様に仕えるというのはこういう事なのかと、感嘆した。
解放された女性たちを乗せ、宮殿はすうっと消えていった。
全員乗ったのかと思っていたら、隅に一人うずくまっている娘がいた。
気になって駆け寄ってみると、革のビキニアーマーを来た女の子……、俺と戦った女の子だった。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
声をかけてみても反応がない。
シアンがスーッと飛んできて不思議そうに彼女を見つめ、首をかしげる。
「うーん、意識障害が残っちゃってるのかなぁ……?」
そう言って、シアンは自分のおでこを彼女のおでこにくっつけた。
「あっ! ダメ!」
ヴィーナが叫ぶと同時に、彼女から漆黒の闇がブワッと噴き出し、シアンを包んだ。
「うわぁ!」
俺は驚いて思わず飛びのいた。
駆け寄ってきたヴィーナは、
「あぁ……」
と、言って、額に手を当てて天を仰いだ。
「あれは何ですか?」
俺が恐る恐る聞くと、
「乗っ取られちゃった……」
そう言って首を振り、大きく息を吐いた。
闇が晴れていくとシアンは辺りを見回し、
「何だこれは……。ほう……。なるほど……」
と、低い声でつぶやく。
明らかに人格が変わってしまった。嫌な予感しかしない。
シアンはドヤ顔で俺たちを見回すとニヤッといやらしい笑みを浮かべ、指先をくるくると回す。
俺たちはホールごといきなり真っ暗な所へと転送された。
「うわぁ!」「キャ――――!」
いきなりの展開に俺は何が何だか分からなくなる。
ただ、最悪な事態が進行していることは間違いなかった。
ホールはゆっくりと回転し、向こう側から何かが見えてくる。
俺はすごい嫌な予感の中、それをじっと見つめた。
だんだんと見えてきた赤茶色の巨大な球体……それは何と木星だった。そう、俺たちはホールごと木星のそばに飛ばされたのだ。
俺は唖然とした。一体これから何が起こるのか……。ブルブルッと自然に体が震える。
太陽系第五惑星、木星。それは地球の千三百倍のサイズをほこる太陽系最大の惑星だ。
目が慣れてくると上空には満天の星空の中、壮大な天の川が走るのが見えてきた。その中に浮かぶ巨大な惑星……。表面に走る巨大な縞模様、そして特徴的な真っ赤で大きな渦、それが圧倒的な迫力を持ってホールの上を覆っていった。
「はーっはっはっは! 素晴らしい! 実に素晴らしいぞ!」
シアンは叫ぶ。
この笑い方……、ヌチ・ギだ。ヌチ・ギがシアンを乗っ取ったのだ。きっとあのビキニアーマーの子の中の意識領域にヌチ・ギは自分のバックアップを残していたに違いない。そして、シアンが近づいてきたので意識を奪ったのだ。何という抜け目なさ。本当に嫌な奴だ。
俺は思わず天をあおぐ。
最悪の展開になってしまった。シアンは宇宙最強。それを乗っ取ったヌチ・ギはこの宇宙を滅ぼす事すらできてしまう。もはや止められる者などこの宇宙に誰もいない。
皆、言葉を失った。
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