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5章 母なる星、海王星
5-7. 頑張らなくっちゃ!
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宮崎の火山の火口脇の洞窟で、ドロシーは一人寂しく二人の帰りを待っていた。神殿は静まり返り、繊細な彫刻が施された薄暗い壁を、画面の青い光りがほのかに照らしている。
二人はこの世界を作っているコンピューターとやらを壊しに、海王星なるところへ行くと言っていた。そこでヌチ・ギを倒すと……。でも……、身体はポッドの中にある。いったい彼らはどうやって海王星へ行って、そこで何をやっているのだろうか……。
空間を切り裂いたり不可思議な力を行使するドラゴン。そして、そのドラゴンの言う意味不明な事をよく理解しているユータ。二人ともなんだか別世界の住人の様にすら思える。
「帰ってきたら全部教えてもらうんだから……」
ドロシーはテーブルに頬杖をつき、ちょっとふくれた。
ピチョン……、ピチョン……
どこか遠くでかすかに水滴の落ちる音がする。
洞窟に作られた秘密の神殿。前に一度だけリリアン王女と一緒に連れてこられた思い出の神殿だ。こんな形で再訪するとは夢にも思わなかった。
ドロシーはテーブルに突っ伏し、今日あった事を思い出す。自分が攫われ、ユータ、アバドン、レヴィアに助けてもらうも戦乙女との戦闘となり、劣勢。ヌチ・ギは世界を火の海にすると言う……。
何だか夢の中の話のようだが、現実なのだ。今、ここがこの世界の人々の命運を決める前線基地であり、唯一対抗できる二人の身体を守りきることがカギとなっている。そしてそれを託されたのが自分……。
まさか孤児上がりの18歳の自分が、世界の命運を握るような大役を担うなんて全く想像もしていなかった。自分は食べていければいい、愛する人と一緒に暮らせればいいとしか思ってこなかった。
しかし、世界はそんな傍観者的位置を許さず、自分を最前線の大役に置いた。それはユータとの結婚を望んだ結果であり、ある程度覚悟はしていたものの……、想定をはるかに上回る重責だった。
「ふぅ……、ビックリしちゃうわよね……」
ドロシーはボソっとつぶやく。
しかし、守れと言われてもヌチ・ギらの異常な攻撃力、不思議な技は非力な自分ではどうしようもない。もちろんこの神殿にはいろんな防護機構がついているのだろうが、いつまでも耐えられるとは思えない。
レヴィアにもらったのは噴火ボタンだけ。しかし、こんなボタン本当に使えるのだろうか? 火の海になるって言っても、彼らがそれで躊躇するとも思えない。噴火を直撃させたら効きそうではあるけれども、彼らが火口に来て、かつ異変を感じても動かない、そんな都合のいい状況なんてどうやって作るのか?
ドロシーはむくりと起き上がるとパシパシと両手で頬を打った。
「私しかいないんだから頑張らなくっちゃ!」
そして腕組みをして銀髪を揺らし一生懸命考える。世界のため、そして愛するユータのため……。
その時だった、
ズン! ズガーン!
「キャ――――!」
激しく地面が揺れ、ドロシーは悲鳴を上げながら椅子から転げ落ちないように必死に踏ん張る。
「ドラゴーン! 出てこい! そこにいるのは分かってんだ!」
火口の外輪山の頂の上で誰かが叫んでいる。
画面の映像が自動的に拡大されていく……、ヌチ・ギだ。後ろには五人の戦乙女を従えている。
やはり来てしまった。
いよいよ、この世界を護れるかどうかの重大局面がやってきたのだ。
ドロシーは頭を抱え、震えた。
「どうしよう……」
しかし、自分しかいないのだ。自分がなんとかしないとならない。
「おい! 無視するなら火山ごと吹き飛ばすぞ! ロリババア!」
ヌチ・ギの無情な罵声が響き渡る。
ドロシーは大きく息をつくと覚悟を決めた。
二人はこの世界を作っているコンピューターとやらを壊しに、海王星なるところへ行くと言っていた。そこでヌチ・ギを倒すと……。でも……、身体はポッドの中にある。いったい彼らはどうやって海王星へ行って、そこで何をやっているのだろうか……。
空間を切り裂いたり不可思議な力を行使するドラゴン。そして、そのドラゴンの言う意味不明な事をよく理解しているユータ。二人ともなんだか別世界の住人の様にすら思える。
「帰ってきたら全部教えてもらうんだから……」
ドロシーはテーブルに頬杖をつき、ちょっとふくれた。
ピチョン……、ピチョン……
どこか遠くでかすかに水滴の落ちる音がする。
洞窟に作られた秘密の神殿。前に一度だけリリアン王女と一緒に連れてこられた思い出の神殿だ。こんな形で再訪するとは夢にも思わなかった。
ドロシーはテーブルに突っ伏し、今日あった事を思い出す。自分が攫われ、ユータ、アバドン、レヴィアに助けてもらうも戦乙女との戦闘となり、劣勢。ヌチ・ギは世界を火の海にすると言う……。
何だか夢の中の話のようだが、現実なのだ。今、ここがこの世界の人々の命運を決める前線基地であり、唯一対抗できる二人の身体を守りきることがカギとなっている。そしてそれを託されたのが自分……。
まさか孤児上がりの18歳の自分が、世界の命運を握るような大役を担うなんて全く想像もしていなかった。自分は食べていければいい、愛する人と一緒に暮らせればいいとしか思ってこなかった。
しかし、世界はそんな傍観者的位置を許さず、自分を最前線の大役に置いた。それはユータとの結婚を望んだ結果であり、ある程度覚悟はしていたものの……、想定をはるかに上回る重責だった。
「ふぅ……、ビックリしちゃうわよね……」
ドロシーはボソっとつぶやく。
しかし、守れと言われてもヌチ・ギらの異常な攻撃力、不思議な技は非力な自分ではどうしようもない。もちろんこの神殿にはいろんな防護機構がついているのだろうが、いつまでも耐えられるとは思えない。
レヴィアにもらったのは噴火ボタンだけ。しかし、こんなボタン本当に使えるのだろうか? 火の海になるって言っても、彼らがそれで躊躇するとも思えない。噴火を直撃させたら効きそうではあるけれども、彼らが火口に来て、かつ異変を感じても動かない、そんな都合のいい状況なんてどうやって作るのか?
ドロシーはむくりと起き上がるとパシパシと両手で頬を打った。
「私しかいないんだから頑張らなくっちゃ!」
そして腕組みをして銀髪を揺らし一生懸命考える。世界のため、そして愛するユータのため……。
その時だった、
ズン! ズガーン!
「キャ――――!」
激しく地面が揺れ、ドロシーは悲鳴を上げながら椅子から転げ落ちないように必死に踏ん張る。
「ドラゴーン! 出てこい! そこにいるのは分かってんだ!」
火口の外輪山の頂の上で誰かが叫んでいる。
画面の映像が自動的に拡大されていく……、ヌチ・ギだ。後ろには五人の戦乙女を従えている。
やはり来てしまった。
いよいよ、この世界を護れるかどうかの重大局面がやってきたのだ。
ドロシーは頭を抱え、震えた。
「どうしよう……」
しかし、自分しかいないのだ。自分がなんとかしないとならない。
「おい! 無視するなら火山ごと吹き飛ばすぞ! ロリババア!」
ヌチ・ギの無情な罵声が響き渡る。
ドロシーは大きく息をつくと覚悟を決めた。
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