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17. クレヨンの家
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「いいね、いいね! いくよっ!」
オディールはニヤッと笑うと、キラキラと黄金色に輝く光の微粒子をまといながら、ミラーナの背中に当てた手のひらから魔力を一気に注ぐ。
ミラーナは一瞬、眼がくらむほどの光を放った。その刹那、地面はまるで生き物のように円形に膨らんだと思うと、瞬く間に円筒状の岩壁が湧き出て天高くせり上がっていく。
地響きが響き渡り、土ぼこりをたてながら円筒の岩の壁は夕暮れ空めがけて伸び、やがて高さは十メートルはあろうかという壮観な構造物となった。
「やったぁ!」
期待を遙かに超えた成果にオディールは、心からの歓喜に手を振り上げ、軽やかに跳びはねる。
御影石のように白地に黒い粒を散らした高級感のある岩は、夕暮れの空を精巧に円形に切り取り、一つの立派な構造物として完全に機能していた。それどころかこれまで目にしたどんな建造物よりも、気高く美しい存在に見えたのだ。
ミラーナのこの力を使えばアパートでも橋でもスタジアムでも何でも作れてしまうのではないか? オディールは岩壁の無限の可能性に気が付き、ワクワクが止まらなくなってくる。
「ミラーナすごい! すごぉぉい!」
ミラーナの背中に抱き着くオディール。
はぁはぁと肩で息をついていたミラーナは苦笑いを浮かべると、しがみついているオディールの金髪をなでる。
「こんなので良かったかしら?」
「いやもう最高! これなら街でも作れるよ!」
「ま、街? 街よりもまず寝床が要るわよ?」
目をキラキラするオディールを見ながらミラーナは苦笑した。
「いやまぁ、そうなんだけど……。何にしてもミラーナはすごいんだ!」
オディールはギュッとミラーナを抱きしめ、柔らかく優しい匂いに包まれながらミラーナの持つ無限の可能性に思わずブルっと身震いをした。
◇
円筒だけじゃ建物にならない。二人は壁から階段のステップを土魔法で生やしながら螺旋階段のように上の方へと登っていく。
「じゃあ、この辺で二階の床を作ろう!」
オディールはミラーナに指示して床を作っていく。土魔法を駆使し、壁から梁を生やして向かい側へとつなげていくのだ。やがて、多少凸凹しているものの二階が出来上がる。
「こんなのでいいのかしら……?」
「大丈夫だって!」
不安がるミラーナに、オディールはピョンピョンと床を飛び回って見せた。
太い御影石でできた梁は人間の体重くらいではビクともしなかったのだ。オディールは改めて土魔法の有用さに感服する。
三階も作り、最後に円すい形の屋根を形作り、あっという間に家が完成してしまった。その形はまるでクレヨンだった。
土魔法で出入り口を開けて外に出ると、レヴィアが感心しながら声をかけてくる。
「いやぁ、お主ら凄いのう……」
いまだかつて土魔法で建物を建てた人なんて聞いたことが無かったのだ。それだけミラーナには才能があったし、オディールのチート魔力は異常だった。
「ふふーん、僕もミラーナも凄いんだゾ!」
オディールはミラーナの腕にしがみつくとドヤ顔を見せる。
「うんうんお主ら、息が合っていてよかったぞ。ちなみにお主らはどういう関係なんじゃ? 付き合っとるのか? ん?」
レヴィアは真紅の瞳を光らせ、嬉しそうに二人の顔を交互に見た。
「つ、つ、つ、付き合うだなんて……僕ら女同士……だよ?」
「性別なんてどうでもええじゃろ、心の問題じゃ」
「ただの友達ですよ、ねっ、オディ?」
ミラーナは屈託のない笑顔で言った。
「えっ? あ、う、うん……」
オディールはうなずきながらも、『ただの友達』という言葉に心の奥底にチクリととげが刺さったような痛みを感じ、うつむく。
自分はずっとミラーナと一緒に居たいのに、彼女にとって自分はただの友人でしかないという過酷な現実。その切ないギャップが、オディールの心に寂しさを深く刻んでいた。
群青色に染まる夕暮れ空の下、ロッソを背景に美しくそそり立つ白亜のクレヨンの家を見上げながら、オディールは口をキュッと結んだ。
◇
「あー、風呂入りたいな、露天風呂!」
オディールはもやもやを吹き飛ばしたくて、風呂を造ろうと提案する。
「ふ、風呂……?」
ミラーナはオディールが何を言い出したのか困惑していた。
「こういう絶景を見ながら入る風呂って言うのは、ほんと最高なんだよ! ね、レヴィア?」
オディールはレヴィアに振るが、レヴィアは渋い顔で返す。
「そりゃあ露天風呂は最高じゃが、そろそろ晩飯にせんか? 酒が飲みたいんじゃが……」
「今すぐちゃっちゃと作るからちょっと手伝ってよ。ディナーは終わってから!」
オディールは口をとがらせると、タッタッタと少し走り、地面にまた丸い円を描いた。
「ミラーナ、ミラーナ! もう一回岩壁お願い!」
ピョンピョン跳びながら手招きをするオディールに、ミラーナはやれやれという感じで肩をすくめた。
オディールはニヤッと笑うと、キラキラと黄金色に輝く光の微粒子をまといながら、ミラーナの背中に当てた手のひらから魔力を一気に注ぐ。
ミラーナは一瞬、眼がくらむほどの光を放った。その刹那、地面はまるで生き物のように円形に膨らんだと思うと、瞬く間に円筒状の岩壁が湧き出て天高くせり上がっていく。
地響きが響き渡り、土ぼこりをたてながら円筒の岩の壁は夕暮れ空めがけて伸び、やがて高さは十メートルはあろうかという壮観な構造物となった。
「やったぁ!」
期待を遙かに超えた成果にオディールは、心からの歓喜に手を振り上げ、軽やかに跳びはねる。
御影石のように白地に黒い粒を散らした高級感のある岩は、夕暮れの空を精巧に円形に切り取り、一つの立派な構造物として完全に機能していた。それどころかこれまで目にしたどんな建造物よりも、気高く美しい存在に見えたのだ。
ミラーナのこの力を使えばアパートでも橋でもスタジアムでも何でも作れてしまうのではないか? オディールは岩壁の無限の可能性に気が付き、ワクワクが止まらなくなってくる。
「ミラーナすごい! すごぉぉい!」
ミラーナの背中に抱き着くオディール。
はぁはぁと肩で息をついていたミラーナは苦笑いを浮かべると、しがみついているオディールの金髪をなでる。
「こんなので良かったかしら?」
「いやもう最高! これなら街でも作れるよ!」
「ま、街? 街よりもまず寝床が要るわよ?」
目をキラキラするオディールを見ながらミラーナは苦笑した。
「いやまぁ、そうなんだけど……。何にしてもミラーナはすごいんだ!」
オディールはギュッとミラーナを抱きしめ、柔らかく優しい匂いに包まれながらミラーナの持つ無限の可能性に思わずブルっと身震いをした。
◇
円筒だけじゃ建物にならない。二人は壁から階段のステップを土魔法で生やしながら螺旋階段のように上の方へと登っていく。
「じゃあ、この辺で二階の床を作ろう!」
オディールはミラーナに指示して床を作っていく。土魔法を駆使し、壁から梁を生やして向かい側へとつなげていくのだ。やがて、多少凸凹しているものの二階が出来上がる。
「こんなのでいいのかしら……?」
「大丈夫だって!」
不安がるミラーナに、オディールはピョンピョンと床を飛び回って見せた。
太い御影石でできた梁は人間の体重くらいではビクともしなかったのだ。オディールは改めて土魔法の有用さに感服する。
三階も作り、最後に円すい形の屋根を形作り、あっという間に家が完成してしまった。その形はまるでクレヨンだった。
土魔法で出入り口を開けて外に出ると、レヴィアが感心しながら声をかけてくる。
「いやぁ、お主ら凄いのう……」
いまだかつて土魔法で建物を建てた人なんて聞いたことが無かったのだ。それだけミラーナには才能があったし、オディールのチート魔力は異常だった。
「ふふーん、僕もミラーナも凄いんだゾ!」
オディールはミラーナの腕にしがみつくとドヤ顔を見せる。
「うんうんお主ら、息が合っていてよかったぞ。ちなみにお主らはどういう関係なんじゃ? 付き合っとるのか? ん?」
レヴィアは真紅の瞳を光らせ、嬉しそうに二人の顔を交互に見た。
「つ、つ、つ、付き合うだなんて……僕ら女同士……だよ?」
「性別なんてどうでもええじゃろ、心の問題じゃ」
「ただの友達ですよ、ねっ、オディ?」
ミラーナは屈託のない笑顔で言った。
「えっ? あ、う、うん……」
オディールはうなずきながらも、『ただの友達』という言葉に心の奥底にチクリととげが刺さったような痛みを感じ、うつむく。
自分はずっとミラーナと一緒に居たいのに、彼女にとって自分はただの友人でしかないという過酷な現実。その切ないギャップが、オディールの心に寂しさを深く刻んでいた。
群青色に染まる夕暮れ空の下、ロッソを背景に美しくそそり立つ白亜のクレヨンの家を見上げながら、オディールは口をキュッと結んだ。
◇
「あー、風呂入りたいな、露天風呂!」
オディールはもやもやを吹き飛ばしたくて、風呂を造ろうと提案する。
「ふ、風呂……?」
ミラーナはオディールが何を言い出したのか困惑していた。
「こういう絶景を見ながら入る風呂って言うのは、ほんと最高なんだよ! ね、レヴィア?」
オディールはレヴィアに振るが、レヴィアは渋い顔で返す。
「そりゃあ露天風呂は最高じゃが、そろそろ晩飯にせんか? 酒が飲みたいんじゃが……」
「今すぐちゃっちゃと作るからちょっと手伝ってよ。ディナーは終わってから!」
オディールは口をとがらせると、タッタッタと少し走り、地面にまた丸い円を描いた。
「ミラーナ、ミラーナ! もう一回岩壁お願い!」
ピョンピョン跳びながら手招きをするオディールに、ミラーナはやれやれという感じで肩をすくめた。
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