149 / 156
149. 悪夢の停船命令
しおりを挟む
「えーーーーっ!?」
俺はそのいきなりのぶっ飛んだ行動に言葉を失った。見学者がいきなり非常事態宣言とは一体何がやりたいのか?
ヴィーン! ヴィーン!
けたたましく鳴り響く警報。金属質な音が、シャトル内を震撼させる。
俺は思わず耳を押さえ、眼差しに悪戯っぽい光を宿らせたレヴィアを横目ににらんで口をキュッと結んだ。
直後、シャトル内のあちこちが開き、パシュっと酸素マスクが降りてきた。見回せばエアバッグのように船内のあちこちに緩衝材が展開されていく。
レヴィアは、パカッと開いた操縦席の足元のパネルに手を伸ばすと、奥にガジェットのごついケーブルを差し込んだ。直後、ブワンという幻想的な音ともに操縦席の操縦パネルが青く輝き始める。
「ウッシッシ、成功じゃ!」
レヴィアはグッとガッツポーズを見せた。操縦パネルには船内の状況や周辺のレーダー映像などが所狭しと浮かび上がる。
「えっ? もしかしてこのシャトルを乗っ取ったんですか?」
「そうじゃ、緊急モードにすれば手動起動が可能になるんじゃ。裏技じゃな。くははは」
笑いながらレヴィアは手慣れた様子でパネルをパシパシとタップしていく。
警報が止まるとハッチが閉まり、プラズマエンジンがグォンと盛大な音を立てた。船内に低周波の振動が響く――――。
「燃料ヨシ! ステータス、オールグリーン! 発進じゃ!」
昂揚感溢れる声でレヴィアは叫ぶと、ガチリと操縦桿を引き上げた。
キィィィ――――ン!
甲高い音が響き渡り、シャトルはゆるゆると動き出した。
スペースポートに多数停泊している宇宙船の群れの隙間をゆったりと抜けていく。
おぉぉぉ……。
俺は窓の外を横切っていく大小さまざまな宇宙船たちの迫力に圧倒され、キョロキョロと辺りを見回した。
「お主、シートベルトしとけよ。放り出されるぞ!」
操縦パネルをパシパシと叩きながらレヴィアが叫ぶ。
「え? シートベルトって……どこですか?」
俺がキョロキョロしていると、レヴィアは、
「しょうがない奴じゃ! ここじゃ、ここ!」
と、身を乗り出すと俺の頭の上のボタンを押した。豊満な胸が目の前で揺れて俺は思わずのけぞってしまう。
「ちょ、ちょっと……」
直後、椅子の脇からベルトが何本か出てきてシュルシュルと俺の身体に巻き付き、最後にキュッと身体を締めて固定した。一瞬で椅子と一体になったような安定感に俺は驚かされる。なるほど、これは実に便利な物だ。未来の乗り物はきっとみんなこうなっていくのだろう。
◇
シャトルは徐々に加速し、宇宙港を離れ、海王星へと降りていく。目の前には巨大な紺碧の水平線が美しく弧を描いている。
その時、スピーカーから機械音声がけたたましく響いた――――。
『S-4237F、直ちに停船しなさい。繰り返す。直ちに停船しなさい』
ヒェッ!
停船命令である。有無を言わさない厳格な声に俺の心臓はドクンと鼓動を刻み、額には悪い汗が湧いてくる。
「うるさいのう……」
レヴィアは悪びれる様子もなく、操作パネルをパシパシっと叩くとスピーカーを止めてしまった。
「こんなことして大丈夫なんですか?」
俺はキリキリと痛む胃を押さえながら聞く。不安と緊張で、内臓が捩れてしまっていた。
「全部ヌチ・ギのせいじゃからな。ヌチ・ギに操られたことにして逃げ切るしかない。カハハハ」
レヴィアは開ききってしまった真紅の瞳で豪快に笑う。
俺は無理筋のプランに頭がクラクラした。そんな言い訳通るはずがない。俺も共犯確定だ――――。
しかし、ヌチ・ギの暴挙を止めるのがこの手しかない以上、やらねばならない。もはや覚悟を決めるより他なかった。
俺はそのいきなりのぶっ飛んだ行動に言葉を失った。見学者がいきなり非常事態宣言とは一体何がやりたいのか?
ヴィーン! ヴィーン!
けたたましく鳴り響く警報。金属質な音が、シャトル内を震撼させる。
俺は思わず耳を押さえ、眼差しに悪戯っぽい光を宿らせたレヴィアを横目ににらんで口をキュッと結んだ。
直後、シャトル内のあちこちが開き、パシュっと酸素マスクが降りてきた。見回せばエアバッグのように船内のあちこちに緩衝材が展開されていく。
レヴィアは、パカッと開いた操縦席の足元のパネルに手を伸ばすと、奥にガジェットのごついケーブルを差し込んだ。直後、ブワンという幻想的な音ともに操縦席の操縦パネルが青く輝き始める。
「ウッシッシ、成功じゃ!」
レヴィアはグッとガッツポーズを見せた。操縦パネルには船内の状況や周辺のレーダー映像などが所狭しと浮かび上がる。
「えっ? もしかしてこのシャトルを乗っ取ったんですか?」
「そうじゃ、緊急モードにすれば手動起動が可能になるんじゃ。裏技じゃな。くははは」
笑いながらレヴィアは手慣れた様子でパネルをパシパシとタップしていく。
警報が止まるとハッチが閉まり、プラズマエンジンがグォンと盛大な音を立てた。船内に低周波の振動が響く――――。
「燃料ヨシ! ステータス、オールグリーン! 発進じゃ!」
昂揚感溢れる声でレヴィアは叫ぶと、ガチリと操縦桿を引き上げた。
キィィィ――――ン!
甲高い音が響き渡り、シャトルはゆるゆると動き出した。
スペースポートに多数停泊している宇宙船の群れの隙間をゆったりと抜けていく。
おぉぉぉ……。
俺は窓の外を横切っていく大小さまざまな宇宙船たちの迫力に圧倒され、キョロキョロと辺りを見回した。
「お主、シートベルトしとけよ。放り出されるぞ!」
操縦パネルをパシパシと叩きながらレヴィアが叫ぶ。
「え? シートベルトって……どこですか?」
俺がキョロキョロしていると、レヴィアは、
「しょうがない奴じゃ! ここじゃ、ここ!」
と、身を乗り出すと俺の頭の上のボタンを押した。豊満な胸が目の前で揺れて俺は思わずのけぞってしまう。
「ちょ、ちょっと……」
直後、椅子の脇からベルトが何本か出てきてシュルシュルと俺の身体に巻き付き、最後にキュッと身体を締めて固定した。一瞬で椅子と一体になったような安定感に俺は驚かされる。なるほど、これは実に便利な物だ。未来の乗り物はきっとみんなこうなっていくのだろう。
◇
シャトルは徐々に加速し、宇宙港を離れ、海王星へと降りていく。目の前には巨大な紺碧の水平線が美しく弧を描いている。
その時、スピーカーから機械音声がけたたましく響いた――――。
『S-4237F、直ちに停船しなさい。繰り返す。直ちに停船しなさい』
ヒェッ!
停船命令である。有無を言わさない厳格な声に俺の心臓はドクンと鼓動を刻み、額には悪い汗が湧いてくる。
「うるさいのう……」
レヴィアは悪びれる様子もなく、操作パネルをパシパシっと叩くとスピーカーを止めてしまった。
「こんなことして大丈夫なんですか?」
俺はキリキリと痛む胃を押さえながら聞く。不安と緊張で、内臓が捩れてしまっていた。
「全部ヌチ・ギのせいじゃからな。ヌチ・ギに操られたことにして逃げ切るしかない。カハハハ」
レヴィアは開ききってしまった真紅の瞳で豪快に笑う。
俺は無理筋のプランに頭がクラクラした。そんな言い訳通るはずがない。俺も共犯確定だ――――。
しかし、ヌチ・ギの暴挙を止めるのがこの手しかない以上、やらねばならない。もはや覚悟を決めるより他なかった。
1
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
スキル「プロアクションマジリプレイ」が凄すぎて異世界で最強無敵なのにニートやってます。
昆布海胆
ファンタジー
神様が異世界ツクールってゲームで作った世界に行った達也はチートスキル「プロアクションマジリプレイ」を得た。
ありえないとんでもスキルのおかげでニート生活を満喫する。
2017.05.21 完結しました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる