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147. モフモフの魅惑
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しばらく行くと、大きな窓が並び、その向こうに壮大な宇宙船群が並ぶ姿が見えてくる。満天の星々を背景に、銀河の光を纏った機体が浮かび上がる。漆黒の宇宙空間に映える姿は、まさに夢の結晶だった。
右手には白いコンテナをたくさん積みこんだ巨大な貨物船が並び、左手にはクルーザーなどの客船が並んでいる。それぞれ三次元プリンタで造形したような有機的な独特のフォルムをしており、滑らかな曲線と鋭利な稜線が絶妙な調和を見せている。その姿はまさに未来そのものに見えた。
「うっほぉ! これはすごい!」
男心をぐっとつかむその情景に俺は思わず声を上げてしまう。
「コラッ! 静かにせんかい!」
レヴィアは子供のようにはしゃぐ俺をジト目でたしなめる。
すると、向こう側から同じく機動椅子に乗った人が二人やってくる。無重力空間の通路を軽やかに駆って進む姿には、熟練の技を感じる。その動きには宇宙で生まれ育ったかのような優雅さすら湛えていた。
「ご安全に!」
レヴィアが片手をあげてにこやかに声をかける。その言葉には、宇宙空間での労働者たちへの連帯感が込められていた。
「ご安全に!」「ご安全に!」
張りのある活気に満ちた声が、金属の通路に温かく響く。
俺も真似して、
「ご安全に!」
そう言って、相手の一人を見て驚いた。
猫だ! 顔が猫で猫耳が生えている! 柔らかそうな銀灰色の毛並みに、琥珀色の瞳が輝いている。その美しい姿は、地球の常識を超えた神の世界を強く印象付けた。俺は思わず見つめてしまう。
猫の人はそんな俺を見ると、ウインクをパチッとしながらすれ違っていく。その仕草には人間らしい理知と獣らしい愛らしさが同居していた。
「お主、失礼じゃぞ」
レヴィアにたしなめられる。その声には微かな嫉妬が混じっていたような気がした。
「あ、そ、そうですね……。猫でしたよ、猫!」
俺が興奮を隠さずに言うと、
「お主、ケモナーか? 我も獣なんじゃぞ」
そう言ってレヴィアはウインクした。金髪が無重力で揺らめく様子は、確かに魅力を放ってはいるが、やはり猫のモフモフには抗いがたいものがある。
「あー、ドラゴンはモフモフできないじゃないですか」
「は?」
レヴィアの真紅の瞳が一瞬凍りつく。金髪の女性の姿をした古代の龍の威厳が、一気に漲る。
バチン! と俺の背中を叩くレヴィア。
龍の威力の片りんが込められた一撃に俺は一気にバランスを崩す。
「おわーーーー!」
何とか姿勢を保とうと思うものの、一気に壁へと一直線。
直後、激しく衝突した俺は椅子ごと宙をクルクルと舞った――――。
天井と床が目まぐるしく入れ替わる。
うひぃぃぃ!
無重力で回ってしまうともうどうしようもない。
もがくものの回転は止まらず、目を回していると、レヴィアは俺の腕をガシッと掴み、器用にそのまま床に引きずりおろした。
「ほれ! へたくそめ!」
レヴィアはニヤッと笑う。その笑顔には勝利の愉悦が満ちていた。
「叩くのは反則ですよ!」
俺はレヴィアをにらんだが、レヵィアにそんなことは通用しない。
「お主はドラゴンの良さが分かっとらん! 一度たっぷりと抱きしめてやらんとな!」
両手で爪を立てる仕草をしたレヴィアは魅惑的な口から牙をキラリとのぞかせる。美しい女性から覗く牙のギャップに俺はゾクッと背筋に冷たい物を感じた。
「し、失礼しました……」
口は禍の元。俺は言い方を間違えたとひどく反省し、深く頭を下げた。ドラゴンとはいえ、彼女も女性なのだ。
俺は大きくため息をついた。
右手には白いコンテナをたくさん積みこんだ巨大な貨物船が並び、左手にはクルーザーなどの客船が並んでいる。それぞれ三次元プリンタで造形したような有機的な独特のフォルムをしており、滑らかな曲線と鋭利な稜線が絶妙な調和を見せている。その姿はまさに未来そのものに見えた。
「うっほぉ! これはすごい!」
男心をぐっとつかむその情景に俺は思わず声を上げてしまう。
「コラッ! 静かにせんかい!」
レヴィアは子供のようにはしゃぐ俺をジト目でたしなめる。
すると、向こう側から同じく機動椅子に乗った人が二人やってくる。無重力空間の通路を軽やかに駆って進む姿には、熟練の技を感じる。その動きには宇宙で生まれ育ったかのような優雅さすら湛えていた。
「ご安全に!」
レヴィアが片手をあげてにこやかに声をかける。その言葉には、宇宙空間での労働者たちへの連帯感が込められていた。
「ご安全に!」「ご安全に!」
張りのある活気に満ちた声が、金属の通路に温かく響く。
俺も真似して、
「ご安全に!」
そう言って、相手の一人を見て驚いた。
猫だ! 顔が猫で猫耳が生えている! 柔らかそうな銀灰色の毛並みに、琥珀色の瞳が輝いている。その美しい姿は、地球の常識を超えた神の世界を強く印象付けた。俺は思わず見つめてしまう。
猫の人はそんな俺を見ると、ウインクをパチッとしながらすれ違っていく。その仕草には人間らしい理知と獣らしい愛らしさが同居していた。
「お主、失礼じゃぞ」
レヴィアにたしなめられる。その声には微かな嫉妬が混じっていたような気がした。
「あ、そ、そうですね……。猫でしたよ、猫!」
俺が興奮を隠さずに言うと、
「お主、ケモナーか? 我も獣なんじゃぞ」
そう言ってレヴィアはウインクした。金髪が無重力で揺らめく様子は、確かに魅力を放ってはいるが、やはり猫のモフモフには抗いがたいものがある。
「あー、ドラゴンはモフモフできないじゃないですか」
「は?」
レヴィアの真紅の瞳が一瞬凍りつく。金髪の女性の姿をした古代の龍の威厳が、一気に漲る。
バチン! と俺の背中を叩くレヴィア。
龍の威力の片りんが込められた一撃に俺は一気にバランスを崩す。
「おわーーーー!」
何とか姿勢を保とうと思うものの、一気に壁へと一直線。
直後、激しく衝突した俺は椅子ごと宙をクルクルと舞った――――。
天井と床が目まぐるしく入れ替わる。
うひぃぃぃ!
無重力で回ってしまうともうどうしようもない。
もがくものの回転は止まらず、目を回していると、レヴィアは俺の腕をガシッと掴み、器用にそのまま床に引きずりおろした。
「ほれ! へたくそめ!」
レヴィアはニヤッと笑う。その笑顔には勝利の愉悦が満ちていた。
「叩くのは反則ですよ!」
俺はレヴィアをにらんだが、レヵィアにそんなことは通用しない。
「お主はドラゴンの良さが分かっとらん! 一度たっぷりと抱きしめてやらんとな!」
両手で爪を立てる仕草をしたレヴィアは魅惑的な口から牙をキラリとのぞかせる。美しい女性から覗く牙のギャップに俺はゾクッと背筋に冷たい物を感じた。
「し、失礼しました……」
口は禍の元。俺は言い方を間違えたとひどく反省し、深く頭を下げた。ドラゴンとはいえ、彼女も女性なのだ。
俺は大きくため息をついた。
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