136 / 154
136. 強制削除コマンド
しおりを挟む
「おーい!」
諏訪湖畔で金髪をキラキラと煌めかせながら、手を振るレヴィアを見つけた。草原の中で彼女の姿は、宝石のように輝いている。
「レヴィア様ぁ! やった、やりましたよ!!」
俺は涙で視界がぼやける中、全身の痛みも忘れて、レヴィアの元へと飛んだ。疲弊した体が、喜びだけで動いている。
「うんうん、よくやった!」
満面の笑みでレヴィアは両手を上げる。無邪気な瞳の奥に灯る喜びの光は、大いなる管理者というより純粋な少女そのものだった。
俺はパァン! といい音でハイタッチ。清々しい音が、辺りに勝利の余韻を奏でた。
「イエーイ!」「イェーイ!」
この瞬間、俺たちは管理者でも人でもない。ただの戦友として喜びを分かち合った。
「いやー、死にかけましたよー!」
俺はズタズタになったシャツの中にのぞく内出血の赤いあざを見せた。紫がかった痣が、壮絶な戦いの痕跡を示している。
「ほぉ、そんなことがあったんかい。知らんかったわ」
レヴィアはそっと俺の胸に手を当ててぶつぶつと何かをつぶやく。指先から温かな魔力が伝わってくる。
「え? 見てなかったんですか?」
「なに言っとる! あれだけの巨大な魔法陣をバレずに描くのはどれほど大変か、考えてもみろ!」
レヴィアは不服そうに俺の胸をパァン! と叩いた。
「痛てて……って、痛くない……? あれ?」
見れば内出血の跡は綺麗に消えていたのだ。傷があった場所に残るのは、かすかな温もりだけ。
「死んでなければ何度でも復活させてやるわ。カッカッカ!」
金髪おかっぱの少女は楽しそうに笑う。その笑顔は、この世界の理を司る者とは思えないほど愛らしいが、俺は今後も死にそうなことをやらされる予感に思わずブルっと震えた。
◇
諏訪湖を見れはすっかりと干上がり、綺麗に丸くくりぬかれた窪地が広がっている――――。
「それにしてもレヴィア様の技には、驚かされました。何ですかこれ?」
俺はため息をつきながらその生々しい戦いの爪痕を眺めた。
「『強制削除コマンド』じゃ。対象領域を一括削除するんじゃ。このコマンドで消せぬものはない。どうじゃ? すごいじゃろ?」
ドヤ顔のレヴィア。両手を腰に当て、胸を張る姿は愛矯たっぷりだ。
「『強制削除』……ですか? もっとカッコいい名前かと思ってました」
「え……?」
レヴィアは一瞬固まると、
「……。いいんじゃ……。我はこれで気に入っとるんじゃ……」
と、露骨にしょげた。
さっきまでの威勢はどこへやら。レヴィアは露骨に肩を落とした。
その世界最強でいてどこか抜けてる少女に思わず笑みがこぼれる。
諏訪湖畔で金髪をキラキラと煌めかせながら、手を振るレヴィアを見つけた。草原の中で彼女の姿は、宝石のように輝いている。
「レヴィア様ぁ! やった、やりましたよ!!」
俺は涙で視界がぼやける中、全身の痛みも忘れて、レヴィアの元へと飛んだ。疲弊した体が、喜びだけで動いている。
「うんうん、よくやった!」
満面の笑みでレヴィアは両手を上げる。無邪気な瞳の奥に灯る喜びの光は、大いなる管理者というより純粋な少女そのものだった。
俺はパァン! といい音でハイタッチ。清々しい音が、辺りに勝利の余韻を奏でた。
「イエーイ!」「イェーイ!」
この瞬間、俺たちは管理者でも人でもない。ただの戦友として喜びを分かち合った。
「いやー、死にかけましたよー!」
俺はズタズタになったシャツの中にのぞく内出血の赤いあざを見せた。紫がかった痣が、壮絶な戦いの痕跡を示している。
「ほぉ、そんなことがあったんかい。知らんかったわ」
レヴィアはそっと俺の胸に手を当ててぶつぶつと何かをつぶやく。指先から温かな魔力が伝わってくる。
「え? 見てなかったんですか?」
「なに言っとる! あれだけの巨大な魔法陣をバレずに描くのはどれほど大変か、考えてもみろ!」
レヴィアは不服そうに俺の胸をパァン! と叩いた。
「痛てて……って、痛くない……? あれ?」
見れば内出血の跡は綺麗に消えていたのだ。傷があった場所に残るのは、かすかな温もりだけ。
「死んでなければ何度でも復活させてやるわ。カッカッカ!」
金髪おかっぱの少女は楽しそうに笑う。その笑顔は、この世界の理を司る者とは思えないほど愛らしいが、俺は今後も死にそうなことをやらされる予感に思わずブルっと震えた。
◇
諏訪湖を見れはすっかりと干上がり、綺麗に丸くくりぬかれた窪地が広がっている――――。
「それにしてもレヴィア様の技には、驚かされました。何ですかこれ?」
俺はため息をつきながらその生々しい戦いの爪痕を眺めた。
「『強制削除コマンド』じゃ。対象領域を一括削除するんじゃ。このコマンドで消せぬものはない。どうじゃ? すごいじゃろ?」
ドヤ顔のレヴィア。両手を腰に当て、胸を張る姿は愛矯たっぷりだ。
「『強制削除』……ですか? もっとカッコいい名前かと思ってました」
「え……?」
レヴィアは一瞬固まると、
「……。いいんじゃ……。我はこれで気に入っとるんじゃ……」
と、露骨にしょげた。
さっきまでの威勢はどこへやら。レヴィアは露骨に肩を落とした。
その世界最強でいてどこか抜けてる少女に思わず笑みがこぼれる。
1
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
転生貴族の魔石魔法~魔法のスキルが無いので家を追い出されました
月城 夕実
ファンタジー
僕はトワ・ウィンザー15歳の異世界転生者だ。貴族に生まれたけど、魔力無しの為家を出ることになった。家を出た僕は呪いを解呪出来ないか探すことにした。解呪出来れば魔法が使えるようになるからだ。町でウェンディを助け、共に行動をしていく。ひょんなことから魔石を手に入れて魔法が使えるようになったのだが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる