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135. 漆黒の円柱
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やがて皆既日蝕は終わり、また、明るさが戻ってきた。薄明の光が大地を照らし、闇から這い出てきた世界は、新たな世界に来たような新鮮さを感じさせる。
「ヨシッ!」
俺は気合を入れなおすと、全力で諏訪湖に向けて飛んだ。響いてくる体の痛みを押し殺し、歯を食いしばる。あともう少し――――。今は弱音を吐いている場合ではない。
超音速で派手に衝撃波を振りまきながら飛ぶ俺を見つけ、戦乙女が追いかけてくる。倒したはずの俺が生きて動いていることに動揺が隠せない様子だった。
「ヘイヘーイ! こっちだよ!」
俺は痛みをこらえながら挑発する。
轟音が空を引き裂き、雲が渦を巻いて散っていく。
そして、ブワッと眼下に碧い湖面が広がった――――。
ついに来た諏訪湖。これで俺たちの勝ちだ!!
『レヴィア様ぁぁぁ! 連れてきましたよ!』
俺は涙交じりに絶叫する。
『よし! 湖面から逃げろ! 全速じゃ!!』
レヴィアの声には、いつもの悠揚迫らぬ調子が見当たらない。それだけとんでもないことを仕組んでいるということだろう。
諏訪湖上空でちょうど戦乙女が俺の目の前に出たので急反転、その直後だった。諏訪湖の底で巨大な魔法陣が眩い金色の光を放った――――。
ぐわっ!
湖面が鏡のように輝き、空の青さを吹き飛ばしていく。そして、そのまま諏訪湖の上空全てが漆黒の闇に堕ちた。戦乙女も瞬時に闇にのみ込まれる。その姿が消えゆく瞬間、かすかな悲鳴が聞こえた気がした――――。
山あいの緑豊かな大自然にいきなり立ち上がる漆黒の円柱。それはこの世の物とは思えない禍々しさを放っており、俺は思わず息をのんだ。
「うほぉ……」
漆黒の柱は天空へと伸び、雲を貫き、まるで天と地を繋ぐ巨大構造物のように立ちはだかる。
やがて、円柱はぼうっという重低音を残し、消えていく。その音は地鳴りのように体の芯まで響いてくる。諏訪湖の水も戦乙女も跡形もなく消え去ったのだった。後に残ったのは、ぽっかりと口を開けた巨大な窪地だけ。
「これが……、神々の戦争……」
俺はその圧倒的で理不尽な力に身震いがした。人知を超えた力の前では、レベル六万の力さえも、ちっぽけな存在でしかない。
『イッチョあがりじゃぁ! キャハッ!』
レヴィアのうれしそうな声が響く。その明るい声が、緊張で強張った空気を溶かしていく。
『あなた、お疲れ様! 良かったわ!』
ドロシーも歓喜に満ちた声を上げる。
ひとまず、難敵は下した。俺はふぅと大きく息をつく。緊張の糸が切れたように、全身から力が抜けていった。
『いやぁ、ドロシーのおかげだよ、グッジョブ!』
俺はドロシーをねぎらう。彼女がいなかったらとっくに死んでいただろう。
夫婦で力を合わせる、それはとても素敵な事だった。二人で分かち合う勝利の喜びは、ただ一人で得る達成感とは比べものにならないほど温かい。俺たちの絆が、また一つ深まったような気がした。
「ヨシッ!」
俺は気合を入れなおすと、全力で諏訪湖に向けて飛んだ。響いてくる体の痛みを押し殺し、歯を食いしばる。あともう少し――――。今は弱音を吐いている場合ではない。
超音速で派手に衝撃波を振りまきながら飛ぶ俺を見つけ、戦乙女が追いかけてくる。倒したはずの俺が生きて動いていることに動揺が隠せない様子だった。
「ヘイヘーイ! こっちだよ!」
俺は痛みをこらえながら挑発する。
轟音が空を引き裂き、雲が渦を巻いて散っていく。
そして、ブワッと眼下に碧い湖面が広がった――――。
ついに来た諏訪湖。これで俺たちの勝ちだ!!
『レヴィア様ぁぁぁ! 連れてきましたよ!』
俺は涙交じりに絶叫する。
『よし! 湖面から逃げろ! 全速じゃ!!』
レヴィアの声には、いつもの悠揚迫らぬ調子が見当たらない。それだけとんでもないことを仕組んでいるということだろう。
諏訪湖上空でちょうど戦乙女が俺の目の前に出たので急反転、その直後だった。諏訪湖の底で巨大な魔法陣が眩い金色の光を放った――――。
ぐわっ!
湖面が鏡のように輝き、空の青さを吹き飛ばしていく。そして、そのまま諏訪湖の上空全てが漆黒の闇に堕ちた。戦乙女も瞬時に闇にのみ込まれる。その姿が消えゆく瞬間、かすかな悲鳴が聞こえた気がした――――。
山あいの緑豊かな大自然にいきなり立ち上がる漆黒の円柱。それはこの世の物とは思えない禍々しさを放っており、俺は思わず息をのんだ。
「うほぉ……」
漆黒の柱は天空へと伸び、雲を貫き、まるで天と地を繋ぐ巨大構造物のように立ちはだかる。
やがて、円柱はぼうっという重低音を残し、消えていく。その音は地鳴りのように体の芯まで響いてくる。諏訪湖の水も戦乙女も跡形もなく消え去ったのだった。後に残ったのは、ぽっかりと口を開けた巨大な窪地だけ。
「これが……、神々の戦争……」
俺はその圧倒的で理不尽な力に身震いがした。人知を超えた力の前では、レベル六万の力さえも、ちっぽけな存在でしかない。
『イッチョあがりじゃぁ! キャハッ!』
レヴィアのうれしそうな声が響く。その明るい声が、緊張で強張った空気を溶かしていく。
『あなた、お疲れ様! 良かったわ!』
ドロシーも歓喜に満ちた声を上げる。
ひとまず、難敵は下した。俺はふぅと大きく息をつく。緊張の糸が切れたように、全身から力が抜けていった。
『いやぁ、ドロシーのおかげだよ、グッジョブ!』
俺はドロシーをねぎらう。彼女がいなかったらとっくに死んでいただろう。
夫婦で力を合わせる、それはとても素敵な事だった。二人で分かち合う勝利の喜びは、ただ一人で得る達成感とは比べものにならないほど温かい。俺たちの絆が、また一つ深まったような気がした。
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