96 / 154
96. バージンロード
しおりを挟む
「そうと決まったら結婚式よぉぉぉ~! 急いで裏のチャペルへGO!」
院長がガバっと立ち上がり、両手を高々と掲げて叫んだ。その声には、長年の夢が叶ったような喜びを感じる。
「えっ!?」「えっ?」
俺もドロシーも驚いて院長を見つめた。
「もうすでに準備は整っているわ。これを着て!」
院長はソファーの脇の大きな箱から白い服を出す。
「ジャーン!」
楽しそうに広げる院長――――。
なんとそれは純白のウェディングドレスだった。ふんだんに花の刺繍が施された豪華なレース、腰の所が優美にふくらむベルラインの立派なつくりに、俺もドロシーもビックリ。その美しさに、二人とも言葉を失った。
「ユータは白のタキシードよ、早く着替えて!」
テキパキと指示する院長。
俺とドロシーは微笑みながら見つめ合い、『院長にはかなわないな』と目で伝えあった。
窓から差し込む陽光が、ウェディングドレスを輝かせる。その光景は、まるで未来への希望を象徴しているかのようだった。俺とドロシーは、この予想外の展開に若干戸惑いはあるものの、心の奥底では喜びに満ちていた。これから始まる新しい人生への期待と、乗り越えなければならない困難への覚悟。全てが混ざり合い、二人の心を熱く震わせていた。
◇
追手は迫っているだろう。俺たちは急いで身支度を整える。ただ、その慌ただしさの中にも、幸せな高揚感が漂っていた。
「あー、もうこんなに泣きはらしちゃって!」
院長は、少しむくんでしまったドロシーのまぶたを、一生懸命化粧で整えていく。
俺はタキシードに着替え、アバドンを呼んだり、カバンにドロシーの身支度を入れたり、準備を進める。
院長はドロシーの銀髪を編み込み、最後に頭の後ろに白いバラをいくつか挿して留め、うれしそうに言った。
「はい、完成よ!」
ドロシーは幸せそうに俺を見る。その瞳には、無限の愛情と希望が輝いていた。俺はドロシーのあまりの美しさに言葉を失い、ポロリと涙をこぼしてしまう。
それを見たドロシーもウルウルと涙ぐんでしまう。言葉を超えて二人の間に流れる深い感情――――。
「新郎が泣いてどうすんのよ! ドロシーも化粧が流れちゃうからダメ! はい! 行くわよ!」
院長は俺たちを先導し、ウキウキした様子で裏口へと足を進めた。
孤児院は組織的には教会の下部組織だ。なので、チャペルも壁をへだてて孤児院の隣にある。
小さな通用門をくぐると花壇の向こうに青い三角屋根の可愛いチャペルが建っていた。ずっと孤児院で暮らしていたのにチャペルに来たのは初めてである。改めて人生の新たな章が始まることを実感した。
俺はドロシーの手を取り、色とりどりの花が咲き乱れる花壇を抜け、入口の大きなガラス戸を開けた――――。
「うわぁ! すごーい!」
ドロシーの目が大きく見開かれた。
正面には神話をモチーフとした色鮮やかなステンドグラスが並び、温かい日差しが差し込む室内は神聖な空気に満ちていた。
中に入ると、たくさんの生け花からのぼる華やかな花の香りに包まれ、思わず深呼吸してしまう。まさに、新たな人生の始まりにふさわしいチャペルだった。
俺たちは見つめ合い、人生最高の瞬間がやってきたことを喜びあう。
チャペルの聖なる静寂の中、二人の心臓の鼓動だけが響いているかのようだった。これから始まる新しい人生への期待と不安、そして何よりも強い愛情。全てが混ざり合い、二人を包み込んでいく。俺は深く息を吐き、ドロシーの手をさらに強く握った。その温もりが、どんな困難も乗り越えられるという確信を与えてくれた。
そして二人は、ゆっくりと祭壇へと歩み始める。その一歩一歩が、新たな人生への歩みだった。
◇
ギギーっとドアが開いた――――。
「こんにちは~! うわっ! 姐さん! 最高に美しいです~!」
絶賛しながら駆け寄ってくるアバドン。
照れるドロシー。頬を赤く染め、はにかんだ笑みを浮かべる彼女の姿は、まさに幸せの絶頂である。
「ごめんね、急に呼び出して。結局、結婚することにしたんだ」
俺の声には、少しの照れくささと、大きな決意が混ざっていた。
「正解です。ずっとヤキモキしてたんですよぉ! お似合いです」
アバドンは自分のことのように喜んで手を合わせる。
院長はいきなり現れた魔人におののいていたが、俺が説明すると仰天しながら首を振っていた。
「はい、じゃ、そこに並んで!」
俺たち二人を並ばせるとパイプオルガンで賛美歌を奏で始める。
その荘厳で美しいハーモニーはチャペルを震わせ、辺りを聖なる空気に包んでいく――――。
三人は目を閉じ、その神聖な波動を体に感じていた。
ひとしきり演奏した院長は、厳かな物腰でステンドグラスの美しい壇上に上がっていく。
そして、俺たちを見つめると開式を宣言した――――。
その声には、厳かさと温かさが同居していた。
院長がガバっと立ち上がり、両手を高々と掲げて叫んだ。その声には、長年の夢が叶ったような喜びを感じる。
「えっ!?」「えっ?」
俺もドロシーも驚いて院長を見つめた。
「もうすでに準備は整っているわ。これを着て!」
院長はソファーの脇の大きな箱から白い服を出す。
「ジャーン!」
楽しそうに広げる院長――――。
なんとそれは純白のウェディングドレスだった。ふんだんに花の刺繍が施された豪華なレース、腰の所が優美にふくらむベルラインの立派なつくりに、俺もドロシーもビックリ。その美しさに、二人とも言葉を失った。
「ユータは白のタキシードよ、早く着替えて!」
テキパキと指示する院長。
俺とドロシーは微笑みながら見つめ合い、『院長にはかなわないな』と目で伝えあった。
窓から差し込む陽光が、ウェディングドレスを輝かせる。その光景は、まるで未来への希望を象徴しているかのようだった。俺とドロシーは、この予想外の展開に若干戸惑いはあるものの、心の奥底では喜びに満ちていた。これから始まる新しい人生への期待と、乗り越えなければならない困難への覚悟。全てが混ざり合い、二人の心を熱く震わせていた。
◇
追手は迫っているだろう。俺たちは急いで身支度を整える。ただ、その慌ただしさの中にも、幸せな高揚感が漂っていた。
「あー、もうこんなに泣きはらしちゃって!」
院長は、少しむくんでしまったドロシーのまぶたを、一生懸命化粧で整えていく。
俺はタキシードに着替え、アバドンを呼んだり、カバンにドロシーの身支度を入れたり、準備を進める。
院長はドロシーの銀髪を編み込み、最後に頭の後ろに白いバラをいくつか挿して留め、うれしそうに言った。
「はい、完成よ!」
ドロシーは幸せそうに俺を見る。その瞳には、無限の愛情と希望が輝いていた。俺はドロシーのあまりの美しさに言葉を失い、ポロリと涙をこぼしてしまう。
それを見たドロシーもウルウルと涙ぐんでしまう。言葉を超えて二人の間に流れる深い感情――――。
「新郎が泣いてどうすんのよ! ドロシーも化粧が流れちゃうからダメ! はい! 行くわよ!」
院長は俺たちを先導し、ウキウキした様子で裏口へと足を進めた。
孤児院は組織的には教会の下部組織だ。なので、チャペルも壁をへだてて孤児院の隣にある。
小さな通用門をくぐると花壇の向こうに青い三角屋根の可愛いチャペルが建っていた。ずっと孤児院で暮らしていたのにチャペルに来たのは初めてである。改めて人生の新たな章が始まることを実感した。
俺はドロシーの手を取り、色とりどりの花が咲き乱れる花壇を抜け、入口の大きなガラス戸を開けた――――。
「うわぁ! すごーい!」
ドロシーの目が大きく見開かれた。
正面には神話をモチーフとした色鮮やかなステンドグラスが並び、温かい日差しが差し込む室内は神聖な空気に満ちていた。
中に入ると、たくさんの生け花からのぼる華やかな花の香りに包まれ、思わず深呼吸してしまう。まさに、新たな人生の始まりにふさわしいチャペルだった。
俺たちは見つめ合い、人生最高の瞬間がやってきたことを喜びあう。
チャペルの聖なる静寂の中、二人の心臓の鼓動だけが響いているかのようだった。これから始まる新しい人生への期待と不安、そして何よりも強い愛情。全てが混ざり合い、二人を包み込んでいく。俺は深く息を吐き、ドロシーの手をさらに強く握った。その温もりが、どんな困難も乗り越えられるという確信を与えてくれた。
そして二人は、ゆっくりと祭壇へと歩み始める。その一歩一歩が、新たな人生への歩みだった。
◇
ギギーっとドアが開いた――――。
「こんにちは~! うわっ! 姐さん! 最高に美しいです~!」
絶賛しながら駆け寄ってくるアバドン。
照れるドロシー。頬を赤く染め、はにかんだ笑みを浮かべる彼女の姿は、まさに幸せの絶頂である。
「ごめんね、急に呼び出して。結局、結婚することにしたんだ」
俺の声には、少しの照れくささと、大きな決意が混ざっていた。
「正解です。ずっとヤキモキしてたんですよぉ! お似合いです」
アバドンは自分のことのように喜んで手を合わせる。
院長はいきなり現れた魔人におののいていたが、俺が説明すると仰天しながら首を振っていた。
「はい、じゃ、そこに並んで!」
俺たち二人を並ばせるとパイプオルガンで賛美歌を奏で始める。
その荘厳で美しいハーモニーはチャペルを震わせ、辺りを聖なる空気に包んでいく――――。
三人は目を閉じ、その神聖な波動を体に感じていた。
ひとしきり演奏した院長は、厳かな物腰でステンドグラスの美しい壇上に上がっていく。
そして、俺たちを見つめると開式を宣言した――――。
その声には、厳かさと温かさが同居していた。
2
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします
猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。
元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。
そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。
そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる