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82. 強い子種
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俺はスクッと立ち上がると、声高らかに叫んだ。
「偉大なるレヴィア様に感謝の乾杯をしたいと思いまーす!」
「おぉ!」「しましょう!」「いいですね!」
場の空気が一気に盛り上がる。
「うむ、皆の衆、お疲れじゃ! キャハッ!」
レヴィアも上機嫌に樽を掲げた。
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」
一同の声が重なり、店内に響き渡る。俺たちはレヴィアの樽にマグカップをカンカンとぶつけた。金属と木の音が鳴り響き、まるで祝祭の鐘のようである。
こんな豪快な乾杯は生まれて初めてだった。俺は異世界での新たな体験への喜びで胸がいっぱいになる。
レヴィアは満足げな表情で、オリジナルのエールの樽を豪快に一気飲みしていく――――。
「クフーッ! やはりオリジナルは美味いのう」
幸せそうに目をつぶり、満足げに首を振った。
数十リットルのエールがこの中学生体形のおなかのどこに消えるのか極めて謎であるが、まぁ、この世界はデータでできた世界。管理者権限を持つドラゴンにとっては何でもアリなのだろう。
宴もたけなわとなり、酒の香りが漂う店内で、みんなの頬は赤く染まっていた。酔いに任せた笑い声が響き渡る中、レヴィアが突如として、とんでもない言葉を口にした。
「こ奴がな、我のことを『美しい』と、言うんじゃよ」
ブフッとエールを吹き出してしまう俺。
「な、何を……」
俺が弁解しようとすると、レヴィアは嬉しそうに俺を引き寄せ、頭を抱いた。その仕草には、少女の無邪気さと、大人びた色気が同居していた。
薄い布一枚へだてて、膨らみ始めた胸の柔らかな肌が頬に当たり、かぐわしい少女の芳香に包まれる。俺の心臓が激しく鼓動を打ち始めた。マズい……。
「ちょ、ちょっと、レヴィア様! んむーー!」
俺は慌てて声を上げたが、レヴィアに頭を抱え込まれて口が塞がれてしまった。
「なんじゃ? 『幼児体形』にもよおしたか? キャハッ!」
レヴィアはグリグリと胸を押し付けてくる。抵抗しようとしたがドラゴンの腕力には全くかなわない。たちの悪い小娘である。
「レヴィア様、飲み過ぎです~!」
「飲みすぎくらいがちょうどいいのじゃ! ガハハハ!」
周囲から制止の声が上がるも、レヴィアの勢いは止まらない。
「ぬははは! 今宵は楽しいのう!」
レヴィアは絶好調だった。
やがて俺を開放すると、小悪魔のような笑みを浮かべて尋ねてくる。
「どうじゃ? まぐわいたくなったか?」
その言葉に、場の空気が一瞬凍りついた。
「そんな、恐れ多いこと、考えもしませんから大丈夫です!」
俺はドキドキしながら慌ててジョッキを取り、エールをあおった。喉を潤すと同時に、高鳴る心臓を落ち着かせようとする。
「ふん、つまらん奴じゃ。なら、誰とまぐわいたいんじゃ?」
「え!?」
全員の視線が俺に集中する。まるで晒し者になったような気分だ。
「いや、ちょっと、それはセクハラですよ! セクハラ!」
俺が真っ赤になって反駁していると、リリアンが静かに俺の手を取った。その仕草には、普段の凛々しさは影を潜め、甘美な色気が漂っていた。
「正直におっしゃっていただいて……、いいのですのよ」
リリアンも相当酔っぱらっている。真っ赤な顔で嬉しそうに俺を見つめる瞳には、普段は見せない大胆さが宿っていた。
「え!? 王女様までからかわないで下さい!」
「なんじゃ? リリアンもユータを狙っておるのか?」
レヴィアはニヤニヤしながらウイスキーをゴクゴクと飲む。
「私、強い人……好きなの……」
そう言ってリリアンは俺の頬をそっとなでた。その指先の温もりに、俺の心臓は急速に高鳴りを増していく。
「王家の繁栄には強い子種が……大切じゃからな。カッカッカ!」
レヴィアがウイスキーを飲み干した。その言葉には、どこか不穏な響きがあった。
「ちょっと、煽らないで下さいよ!」
「あら何……? 私の何が不満なの? 男たちはみんな私に求婚してくるのよ」
リリアンはキラキラと光る瞳で上目づかいに俺を見つめた。透き通るような白い肌、優美にカールする長いまつげ、熟れた果実のようなプリッとしたくちびる、全てが芸術品のような美しさを放っていた。
「ふ、不満なんて……ないですよ」
俺は気圧されながら答える。こんな絶世の美女に迫られて正気を保つのは、並大抵のことではない。心の中で、必死に理性を保とうと戦っていた。
ガタッ!
突然の音に、場の空気が一変する。ドロシーがいきなり席を立ち、タタタタと階段を上っていく。その背中には、何か言いようのない感情が滲んでいるように見えた。
「ドロシー!」
俺はみんなに失礼をわびるとドロシーを追いかけた。毅然とした態度を示せずに状況に流されていた自分の浅はかさにウンザリしてしまう。
二階に登ると、月の光が窓から差し込む薄暗い部屋の中に、ドロシーの儚げな姿が浮かび上がる。仮眠用ベッドにぽつんと座る彼女の背中には、言葉にならない寂しさが滲んでいるようだった。
「偉大なるレヴィア様に感謝の乾杯をしたいと思いまーす!」
「おぉ!」「しましょう!」「いいですね!」
場の空気が一気に盛り上がる。
「うむ、皆の衆、お疲れじゃ! キャハッ!」
レヴィアも上機嫌に樽を掲げた。
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」
一同の声が重なり、店内に響き渡る。俺たちはレヴィアの樽にマグカップをカンカンとぶつけた。金属と木の音が鳴り響き、まるで祝祭の鐘のようである。
こんな豪快な乾杯は生まれて初めてだった。俺は異世界での新たな体験への喜びで胸がいっぱいになる。
レヴィアは満足げな表情で、オリジナルのエールの樽を豪快に一気飲みしていく――――。
「クフーッ! やはりオリジナルは美味いのう」
幸せそうに目をつぶり、満足げに首を振った。
数十リットルのエールがこの中学生体形のおなかのどこに消えるのか極めて謎であるが、まぁ、この世界はデータでできた世界。管理者権限を持つドラゴンにとっては何でもアリなのだろう。
宴もたけなわとなり、酒の香りが漂う店内で、みんなの頬は赤く染まっていた。酔いに任せた笑い声が響き渡る中、レヴィアが突如として、とんでもない言葉を口にした。
「こ奴がな、我のことを『美しい』と、言うんじゃよ」
ブフッとエールを吹き出してしまう俺。
「な、何を……」
俺が弁解しようとすると、レヴィアは嬉しそうに俺を引き寄せ、頭を抱いた。その仕草には、少女の無邪気さと、大人びた色気が同居していた。
薄い布一枚へだてて、膨らみ始めた胸の柔らかな肌が頬に当たり、かぐわしい少女の芳香に包まれる。俺の心臓が激しく鼓動を打ち始めた。マズい……。
「ちょ、ちょっと、レヴィア様! んむーー!」
俺は慌てて声を上げたが、レヴィアに頭を抱え込まれて口が塞がれてしまった。
「なんじゃ? 『幼児体形』にもよおしたか? キャハッ!」
レヴィアはグリグリと胸を押し付けてくる。抵抗しようとしたがドラゴンの腕力には全くかなわない。たちの悪い小娘である。
「レヴィア様、飲み過ぎです~!」
「飲みすぎくらいがちょうどいいのじゃ! ガハハハ!」
周囲から制止の声が上がるも、レヴィアの勢いは止まらない。
「ぬははは! 今宵は楽しいのう!」
レヴィアは絶好調だった。
やがて俺を開放すると、小悪魔のような笑みを浮かべて尋ねてくる。
「どうじゃ? まぐわいたくなったか?」
その言葉に、場の空気が一瞬凍りついた。
「そんな、恐れ多いこと、考えもしませんから大丈夫です!」
俺はドキドキしながら慌ててジョッキを取り、エールをあおった。喉を潤すと同時に、高鳴る心臓を落ち着かせようとする。
「ふん、つまらん奴じゃ。なら、誰とまぐわいたいんじゃ?」
「え!?」
全員の視線が俺に集中する。まるで晒し者になったような気分だ。
「いや、ちょっと、それはセクハラですよ! セクハラ!」
俺が真っ赤になって反駁していると、リリアンが静かに俺の手を取った。その仕草には、普段の凛々しさは影を潜め、甘美な色気が漂っていた。
「正直におっしゃっていただいて……、いいのですのよ」
リリアンも相当酔っぱらっている。真っ赤な顔で嬉しそうに俺を見つめる瞳には、普段は見せない大胆さが宿っていた。
「え!? 王女様までからかわないで下さい!」
「なんじゃ? リリアンもユータを狙っておるのか?」
レヴィアはニヤニヤしながらウイスキーをゴクゴクと飲む。
「私、強い人……好きなの……」
そう言ってリリアンは俺の頬をそっとなでた。その指先の温もりに、俺の心臓は急速に高鳴りを増していく。
「王家の繁栄には強い子種が……大切じゃからな。カッカッカ!」
レヴィアがウイスキーを飲み干した。その言葉には、どこか不穏な響きがあった。
「ちょっと、煽らないで下さいよ!」
「あら何……? 私の何が不満なの? 男たちはみんな私に求婚してくるのよ」
リリアンはキラキラと光る瞳で上目づかいに俺を見つめた。透き通るような白い肌、優美にカールする長いまつげ、熟れた果実のようなプリッとしたくちびる、全てが芸術品のような美しさを放っていた。
「ふ、不満なんて……ないですよ」
俺は気圧されながら答える。こんな絶世の美女に迫られて正気を保つのは、並大抵のことではない。心の中で、必死に理性を保とうと戦っていた。
ガタッ!
突然の音に、場の空気が一変する。ドロシーがいきなり席を立ち、タタタタと階段を上っていく。その背中には、何か言いようのない感情が滲んでいるように見えた。
「ドロシー!」
俺はみんなに失礼をわびるとドロシーを追いかけた。毅然とした態度を示せずに状況に流されていた自分の浅はかさにウンザリしてしまう。
二階に登ると、月の光が窓から差し込む薄暗い部屋の中に、ドロシーの儚げな姿が浮かび上がる。仮眠用ベッドにぽつんと座る彼女の背中には、言葉にならない寂しさが滲んでいるようだった。
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