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42. 特殊工作部勇者分隊

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 俺は何度か深呼吸をし、冷静になろうと奥歯をかみしめながらアバドンに連絡を取る。

『見つけた、川沿いの茶色の屋根の倉庫だ。幌馬車ほろばしゃが止まってるところ。で、奴隷の首輪をつけられてしまってるんだが、どうしたらいい? アイツらホント許せねぇ! クソがっ!!』

『旦那さま落ち着いてください! 奴隷の首輪なら私が解除できます。すぐ行きますんで、少々お待ちください~!』

『ア、アバドーン! お前最高だな!!』

 俺はアバドンに神を見て、思わず宙を仰いだ。

『ぐふふふ、仲間にして良かったでございましょう?』

 嬉しそうに笑うアバドン。

 持つべきものは良い仲間である。俺は初めてアバドンに感謝をした。その言葉に、かすかな希望の光を感じる。

 そうであるならば――――。

 俺は時間稼ぎをすればいい。その決意が、俺の心を静める。

 ビリッ、ビリビリッ!

 若い男がドロシーのブラウスを派手に破いた。

 形のいい白い胸があらわになる。その光景に、俺は目を背けた。

「お、これは上玉だ」

 若い男がそう言うと、「げへへへ」と、周りの男たちも下卑げびた笑い声をあげた。

「ワシらにもヤらせてくださいよ」

「順番な」

 そう言いながら、若い男はドロシーの肌に手をはわせた。その光景に、俺の怒りが頂点に達する。

 俺は目をつぶり、胸に手を当て、呼吸を整えると倉庫の裏手へとピョンと跳び、思いっきり石造りの壁を殴った。

 ズガーン!

 激しい衝撃音を立てながら壁面に大きな穴が開き、破片がバラバラと落ちてくる。

 若い男が立ち上がって身構え、叫んだ。

「おい! 誰だ!」

 俺は静かに表に戻る。その足取りには、抑えきれない怒りと冷静さが混在していた。

 若い男は、ドロシーの手を押さえさせていた男にあごで指示をすると、倉庫をゆっくりと見回す……。

 その隙にドロシーが自由になった手で胸を隠した。

「勝手に動くんじゃねぇ!」

 若い男はドロシーの頭を蹴る。ガスッと鈍い音が倉庫内に響いた。

 ドロシーはうめき、可愛い口元から血がツーっと垂れる。その光景に、俺の心が千々に乱れる。

 俺は怒りの衝動が全身を貫くのを感じる。しかし、あの男を殴ってもドロシーが首輪で殺されてしまっては意味がないのだ。ここは我慢するしかない。

 アバドンよ、早く来てくれ。その祈りを胸に、俺は拳を握りしめ、救出の瞬間を待った。

 改めて若い男を鑑定をしてみると……。

クロディウス=ブルザ 王国軍 特殊工作部 勇者分隊所属
剣士 レベル百八十二

 やはり勇者の手先だった。それにしても、とんでもないレベルの高さだ。勇者が本気でドロシーを潰しに来ていることをうかがわせる。なんと嫌な奴だろうか。こいつをコテンパンにしたら、次は泣いて謝るまで勇者が殴りに行ってやる! 怒りが、俺の中で激しく渦巻く。

「誰もいやしませんぜ!」

 見に行った男が、奥の壁の辺りを探して声を上げる。その声には、不安と焦りが混ざっていた。

「いや、いるはずだ。不思議な術を使う男だと聞いている。用心しろ!」

 ブルザは並んでいる窓を一つずつにらみ、外をチェックしていく。軍人らしく、その所作には訓練されたものを感じる。

 俺は再度倉庫の裏手に回り、俺を探している男を物陰からそっと確認した。男は物陰を一つ一つのぞいていく――――。

 俺は男の背後から瞬歩で迫ると、手刀で後頭部を打った。

「グォッ!」

 うめき声が倉庫に響く。

 ブルザは男が俺に倒されたのを悟り、ほほをピクッと動かした。

「おい! 出てきたらどうだ? お前の女が犯されるのを特等席で見せてやろう」

 大声で叫びながらかがんだブルザはドロシーのショーツに手をかける。その声には、嗜虐的しぎゃくてきな喜びが滲んでいた。

「いやっ!」

 そう言うドロシーをまた蹴ってはぎ取った。その光景に、俺の心がきしむのを感じる。

「いいのか? 腰抜け?」

 ブルザの挑発的な言葉が、倉庫内に響き渡った。

「やめて……うぅぅぅ……やめてよぉ……」

 ドロシーはポロポロと涙をこぼす。その悲痛な声に、俺の心が引き裂かれる。


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