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3-12. 僕らのクーデター
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「これ……、世界征服でもなんでもできちゃう……レベルだよね……」
ルイーズは気圧されながらつぶやいた。
「あー、やる気になったらできるだろうね。でも、やらないよ、スローライフを目指してるんだから」
ヴィクトルはニコッと笑う。
「スローライフ……」
ルイーズはそう言うと両手で顔を覆った。
「どこか景色が綺麗な田舎で、畑を耕してのんびり暮らしたいんだ」
「主さま、いいですね! 二人でそれやりましょう!」
ルコアもノリノリだった。
ルイーズはしばらく考えると、
「ヴュスト家にその力を少し貸して……くれないか?」
「え? 魔物なら倒すよ?」
「それはありがたいんだけど、それだけでなく、土木工事とか開墾とかに協力して欲しいんだ」
「何かあったの?」
ルイーズはふぅと大きく息をつくと、ゆっくりと語り始めた。
「税収が落ちていて、ヴュスト家はもう借金まみれなんだ。でも父さんはぜいたくな暮らしをやめないし、ハンツ兄さんも領地の事は全く考えてないんだよね……」
「しょうがない連中だな……」
ヴィクトルは渋い顔をする。
「力を貸してくれないか?」
「そんなの一回破綻した方がいいんじゃない?」
ヴィクトルは冷たく言い放った。自分を追放した父たちなど到底支援する気にはならない。
「破綻したら、母さんや使用人も、親戚たちも全員路頭に迷っちゃう。それは避けたいんだ……」
ルイーズは手を合わせて言う。
ヴィクトルは口を一文字に結び、ジト目でルイーズを見つめた。
部屋には嫌な静けさが広がる……。
ヴィクトルは目をつぶって腕を組み、しばらく思案すると、ひざをポンと叩いて言った。
「じゃあ、こうしよう! 兄さん、あなたが次期当主になってよ。そしたら協力する」
「じ、次期当主!?」
「そう! 父さんとハンツを追い落とす。クーデターだよ」
ヴィクトルは悪い顔をしてニヤッと笑った。
「そ、それは……」
ルイーズは青い顔をする。
「一週間以内にスタンピードが来る。その際に僕がユーベを守り、父さんとハンツを追い落とし、次期当主を兄さんにすえる。それまでに協力者を水面下で集めてて、いいね?」
「そ、そんなにうまくいくかなぁ……」
ビビってしまうルイーズ。
「やるかやらないか、今決めて」
ヴィクトルは鋭い目でルイーズをまっすぐに見た。
ルイーズは目をつぶり、腕組みをしてうつむいた。
まだ十二歳のルイーズにとって、いきなり当主をやるのはさすがに荷が重い。だが、現行の体制に不満を持っている人は多い。皆、不安の中で暮らしているのだ。彼らの支持をしっかりと得られればできない事はないはずだった。特に世界征服すら可能な、ヴィクトルの圧倒的な大賢者の力を借りれるのだから、何があってもひっくり返せるだろう。
「分かった! 準備するよ!」
ルイーズは立ち上がると、しっかりとした目で右手を差し出す。
ヴィクトルはニコッと笑うとガッシリと握手をした。
自分を追放した馬鹿どもにお灸をすえて、街も発展させる。実にいいプランだとヴィクトルはうれしくなった。
そして、ヴィクトルはちょっと考えると、ルコアに言う。
「ゴメン、もう一枚ウロコ、貰えないかな?」
「え――――! あれ、痛いんですよ?」
ルコアはジト目で不満を露わにする。
「頼むよ、後で返すからさ」
ヴィクトルは手を合わせて言う。
「後で返されても困るんですけど?」
ルコアはしばらくヴィクトルをにらんだ。
ヴィクトルは拝み続ける……。
「……。分かりました。じゃあ、二人ともあっち向いててください」
ふくらんでいたルコアは根負けする。
そして、二人の視線を避けると、
ツゥ……
と、痛そうな声を出す。
同時に、強烈な魔力の波動が屋敷全体を貫いた。
「えっ!?」
ルイーズは悪寒を感じ、青ざめる。
ルコアは立派な暗黒龍のウロコを一枚ヴィクトルの前に差し出すと、
「大切に使ってくださいよ!」
と、ジト目でヴィクトルを見た。
「サンキュー! 恩に着るよ!」
そう言ってヴィクトルはルコアにハグをする。
ルコアはプニプニのヴィクトルの頬に頬ずりをすると、
「ふふふ、主さまからハグされるっていうのもいいものですね」
と、嬉しそうに笑う。
何があったのか分からず、おびえぎみのルイーズに、ヴィクトルはウロコを渡して言った。
「これは暗黒龍のウロコだ。仲間を募る時に、『自分には暗黒龍の加護があるから安心して言う事を聞け』と言って、証拠としてこれを見せるんだ」
「えっ!? 暗黒龍って、伝説の暗黒の森の王者……だよね? 彼女と暗黒龍はどういう関係? ウロコは本物?」
慌てるルイーズ。
「よく見てごらん、この精緻な模様、立ち昇る魔力、誰が見ても本物だろ?」
「確かに……、凄い迫力だ……」
ルイーズはウロコに見入って感心する。
「暗黒龍の加護は実際、間違いないんだ。彼女は暗黒龍の使徒と考えてもらえばいい。スタンピードの時も暗黒龍は飛んでくる。自信をもって使って」
「わ、分かった……。ありがとう!」
ルイーズは吹っ切れたようににこやかに笑うと、ヴィクトルとルコアに礼を言った。
すると、廊下を誰かがドタドタと駆けてくる。さっきの魔力の波動が騒ぎを起こしてしまったらしい。
「それじゃまた!」
ヴィクトルはそう言うと、ルコアと一緒に窓から静かに飛び出していった。
ルイーズは気圧されながらつぶやいた。
「あー、やる気になったらできるだろうね。でも、やらないよ、スローライフを目指してるんだから」
ヴィクトルはニコッと笑う。
「スローライフ……」
ルイーズはそう言うと両手で顔を覆った。
「どこか景色が綺麗な田舎で、畑を耕してのんびり暮らしたいんだ」
「主さま、いいですね! 二人でそれやりましょう!」
ルコアもノリノリだった。
ルイーズはしばらく考えると、
「ヴュスト家にその力を少し貸して……くれないか?」
「え? 魔物なら倒すよ?」
「それはありがたいんだけど、それだけでなく、土木工事とか開墾とかに協力して欲しいんだ」
「何かあったの?」
ルイーズはふぅと大きく息をつくと、ゆっくりと語り始めた。
「税収が落ちていて、ヴュスト家はもう借金まみれなんだ。でも父さんはぜいたくな暮らしをやめないし、ハンツ兄さんも領地の事は全く考えてないんだよね……」
「しょうがない連中だな……」
ヴィクトルは渋い顔をする。
「力を貸してくれないか?」
「そんなの一回破綻した方がいいんじゃない?」
ヴィクトルは冷たく言い放った。自分を追放した父たちなど到底支援する気にはならない。
「破綻したら、母さんや使用人も、親戚たちも全員路頭に迷っちゃう。それは避けたいんだ……」
ルイーズは手を合わせて言う。
ヴィクトルは口を一文字に結び、ジト目でルイーズを見つめた。
部屋には嫌な静けさが広がる……。
ヴィクトルは目をつぶって腕を組み、しばらく思案すると、ひざをポンと叩いて言った。
「じゃあ、こうしよう! 兄さん、あなたが次期当主になってよ。そしたら協力する」
「じ、次期当主!?」
「そう! 父さんとハンツを追い落とす。クーデターだよ」
ヴィクトルは悪い顔をしてニヤッと笑った。
「そ、それは……」
ルイーズは青い顔をする。
「一週間以内にスタンピードが来る。その際に僕がユーベを守り、父さんとハンツを追い落とし、次期当主を兄さんにすえる。それまでに協力者を水面下で集めてて、いいね?」
「そ、そんなにうまくいくかなぁ……」
ビビってしまうルイーズ。
「やるかやらないか、今決めて」
ヴィクトルは鋭い目でルイーズをまっすぐに見た。
ルイーズは目をつぶり、腕組みをしてうつむいた。
まだ十二歳のルイーズにとって、いきなり当主をやるのはさすがに荷が重い。だが、現行の体制に不満を持っている人は多い。皆、不安の中で暮らしているのだ。彼らの支持をしっかりと得られればできない事はないはずだった。特に世界征服すら可能な、ヴィクトルの圧倒的な大賢者の力を借りれるのだから、何があってもひっくり返せるだろう。
「分かった! 準備するよ!」
ルイーズは立ち上がると、しっかりとした目で右手を差し出す。
ヴィクトルはニコッと笑うとガッシリと握手をした。
自分を追放した馬鹿どもにお灸をすえて、街も発展させる。実にいいプランだとヴィクトルはうれしくなった。
そして、ヴィクトルはちょっと考えると、ルコアに言う。
「ゴメン、もう一枚ウロコ、貰えないかな?」
「え――――! あれ、痛いんですよ?」
ルコアはジト目で不満を露わにする。
「頼むよ、後で返すからさ」
ヴィクトルは手を合わせて言う。
「後で返されても困るんですけど?」
ルコアはしばらくヴィクトルをにらんだ。
ヴィクトルは拝み続ける……。
「……。分かりました。じゃあ、二人ともあっち向いててください」
ふくらんでいたルコアは根負けする。
そして、二人の視線を避けると、
ツゥ……
と、痛そうな声を出す。
同時に、強烈な魔力の波動が屋敷全体を貫いた。
「えっ!?」
ルイーズは悪寒を感じ、青ざめる。
ルコアは立派な暗黒龍のウロコを一枚ヴィクトルの前に差し出すと、
「大切に使ってくださいよ!」
と、ジト目でヴィクトルを見た。
「サンキュー! 恩に着るよ!」
そう言ってヴィクトルはルコアにハグをする。
ルコアはプニプニのヴィクトルの頬に頬ずりをすると、
「ふふふ、主さまからハグされるっていうのもいいものですね」
と、嬉しそうに笑う。
何があったのか分からず、おびえぎみのルイーズに、ヴィクトルはウロコを渡して言った。
「これは暗黒龍のウロコだ。仲間を募る時に、『自分には暗黒龍の加護があるから安心して言う事を聞け』と言って、証拠としてこれを見せるんだ」
「えっ!? 暗黒龍って、伝説の暗黒の森の王者……だよね? 彼女と暗黒龍はどういう関係? ウロコは本物?」
慌てるルイーズ。
「よく見てごらん、この精緻な模様、立ち昇る魔力、誰が見ても本物だろ?」
「確かに……、凄い迫力だ……」
ルイーズはウロコに見入って感心する。
「暗黒龍の加護は実際、間違いないんだ。彼女は暗黒龍の使徒と考えてもらえばいい。スタンピードの時も暗黒龍は飛んでくる。自信をもって使って」
「わ、分かった……。ありがとう!」
ルイーズは吹っ切れたようににこやかに笑うと、ヴィクトルとルコアに礼を言った。
すると、廊下を誰かがドタドタと駆けてくる。さっきの魔力の波動が騒ぎを起こしてしまったらしい。
「それじゃまた!」
ヴィクトルはそう言うと、ルコアと一緒に窓から静かに飛び出していった。
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