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1-7. 深夜の攻防
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ヴィクトルは倒したオーガの寝床に戻る。
そこは洞窟となっていて雨露はしのげるし、周りからはなかなか見つからない非常に都合の良い場所だった。
日が暮れ、やがて森は漆黒の闇に包まれる。
ヴィクトルはゴブリンの魔石を出し、薬草でこすって透明になったのを確認し、吸った。抹茶オレのような濃厚な味わいのフレーバーが口の中いっぱいに広がる。
ヴィクトルは恍惚とした表情を浮かべ、癒されながらじっくりと味わった。
ポロロン!
効果音が鳴って画面が開く。
HP最大値 +1、攻撃力 +1
オーガに比べたら相当にショボいが、それでもステータスは上がった。やはりこれは相当に使えそうだ。
空腹もしのげたし、実は魔物だけ食べて暮らすこともできるのかもしれない。ヴィクトルはオーガの寝床にゴロンと大の字に転がり、満足げににっこりと笑った。
明日は弱い魔物を狙ってステータスを上げよう。一匹ずつ慎重に倒していけばそのうち安心できる強さにまで行けるに違いない。
オーガの寝床は思いのほか快適だった。ヴィクトルは激動の一日を振り返りつつ、明日からの逆転劇を楽しみに、すぐに眠りへと落ちて行く……。
◇
ガサガサッ……。
深夜に物音で目を覚ます。
何かいる!?
ヴィクトルはいきなりやってきた死の予感に、眠気もいっぺんに吹き飛んだ。
静かに身を起こし、暗闇の中、震える手で木の棒を探し、握る。
レベルアップで使えるようになった索敵の魔法を使ってみると……。
何やら二匹ほどの魔物が入り口近くを徘徊している。明らかにヴィクトルを探している動きだ。匂いか何かが漏れてしまっているのだろう。
強さはよく分からないが雑魚ではなさそうだ。さらに、二匹はマズい。二匹では自爆攻撃は使えない。生き返った瞬間を狙われたらアウトだからだ。
入り口を見つけられるのは時間の問題である。
ヴィクトルは背筋が凍り、冷や汗が噴き出した。
「ま、まずいぞ……」
ヴィクトルは奥へと静かに移動する。この洞窟には出入り口の他に天井の穴があった。最初にヴィクトルが落ちた小さな穴である。
ヴィクトルは魔法でろうそくのような淡い光を浮かべると、壁面にとりついて登り始めた。
穴に手が届いた時、入り口の木の枝がバーン! と吹き飛ばされ、
ブフッ! グフッ!
と、鼻を鳴らす音が洞窟内に響いた。オークだ!
筋骨隆々とした巨躯にイノシシの頭。口からは凶悪な牙が鋭く伸び、鈍く光っていた。
グァァ――――!
叫びながら突っ込んでくるオーク。
ヴィクトルは必死に穴を登り、ギリギリのところで逃げ切る。
しかし、オークは諦めない。
ゴァァ――――!
巨体を穴に突っ込み、穴の割れ目を広げて迫ってくる。
オーク レア度:★★★
魔物 レベル35
あまりの迫力に気おされるヴィクトルだが、逃げて逃げ切れるような敵じゃない。ここで二匹とも倒す以外生き残るすべはなかった。しかし、レベルはオークの方がはるかに上。闇夜の森でいきなり突き付けられた命の危機に、ヴィクトルの心臓は激しく鳴り響く。
直後、オークが穴を押し広げ、上半身が露わになる。目が血走ってよだれを垂らす醜いオークの顔が灯りで浮かび上がり、ヴィクトルの心に絶望的な恐怖を巻き起こした。
ひぃぃ!
殺られる……。
しかし、諦める訳にもいかない。スローライフで愛する人と第二の人生を満喫すると心に決めたのだ。馬鹿どもに復讐もせねばならない。こんなところで終わってなるものか。
ヴィクトルはぐっと歯を食いしばり、今できる最高の攻撃が何かを必死に考える。
叩こうが魔法撃とうがとても効くとは思えなかったが、もしかしたら……。
「よしっ!」
ヴィクトルは腹を決め、棒をぎゅっと握りなおし、構えた。
グガァ!
オークは叫ぶ。
ヴィクトルはその瞬間を見逃さず、木の棒を素早く口に突っ込む。
グッ! ガッ!
慌てるオーク。
そしてヴィクトルは、木の棒をこじって、開いたすき間めがけて手を当てて叫ぶ。
「風刃!!」
シュゥン!
と、空気を切り裂く音が響いて、緑色の閃光が走り、オークの喉の奥へ風魔法が放たれた。
グホゥ!!
オークは声にならない悲鳴をあげながら落ちて行く。
そして、
ピロローン!
ピロローン!
と、効果音が鳴り響いた。
風魔法が内臓をズタズタに切り裂いたのだ。さしものオークも体内に直接撃たれた魔法には耐えられなかったようだ。
しかし、まだ一匹いる。依然としてピンチには変わりない。
ガサガサッ!
もう一匹は外をまわってヴィクトルの方に走ってくる。
「ヤバい、ヤバい!」
ヴィクトルは急いで穴に降りた。
オークはズーン! ズーン! と、近くの木に体当たりを繰り返し、バキバキバキ! ズズーン! と木が倒れる音が響く。
ヴィクトルはその意味不明な行動をいぶかしく思っていたが、直後、穴から木の幹が落とされる。何と、穴がふさがれてしまった。ヤバいと思って外に逃げようとした時、オークと目が合う。オークは周到にヴィクトルを追い詰めたのだった。
そこは洞窟となっていて雨露はしのげるし、周りからはなかなか見つからない非常に都合の良い場所だった。
日が暮れ、やがて森は漆黒の闇に包まれる。
ヴィクトルはゴブリンの魔石を出し、薬草でこすって透明になったのを確認し、吸った。抹茶オレのような濃厚な味わいのフレーバーが口の中いっぱいに広がる。
ヴィクトルは恍惚とした表情を浮かべ、癒されながらじっくりと味わった。
ポロロン!
効果音が鳴って画面が開く。
HP最大値 +1、攻撃力 +1
オーガに比べたら相当にショボいが、それでもステータスは上がった。やはりこれは相当に使えそうだ。
空腹もしのげたし、実は魔物だけ食べて暮らすこともできるのかもしれない。ヴィクトルはオーガの寝床にゴロンと大の字に転がり、満足げににっこりと笑った。
明日は弱い魔物を狙ってステータスを上げよう。一匹ずつ慎重に倒していけばそのうち安心できる強さにまで行けるに違いない。
オーガの寝床は思いのほか快適だった。ヴィクトルは激動の一日を振り返りつつ、明日からの逆転劇を楽しみに、すぐに眠りへと落ちて行く……。
◇
ガサガサッ……。
深夜に物音で目を覚ます。
何かいる!?
ヴィクトルはいきなりやってきた死の予感に、眠気もいっぺんに吹き飛んだ。
静かに身を起こし、暗闇の中、震える手で木の棒を探し、握る。
レベルアップで使えるようになった索敵の魔法を使ってみると……。
何やら二匹ほどの魔物が入り口近くを徘徊している。明らかにヴィクトルを探している動きだ。匂いか何かが漏れてしまっているのだろう。
強さはよく分からないが雑魚ではなさそうだ。さらに、二匹はマズい。二匹では自爆攻撃は使えない。生き返った瞬間を狙われたらアウトだからだ。
入り口を見つけられるのは時間の問題である。
ヴィクトルは背筋が凍り、冷や汗が噴き出した。
「ま、まずいぞ……」
ヴィクトルは奥へと静かに移動する。この洞窟には出入り口の他に天井の穴があった。最初にヴィクトルが落ちた小さな穴である。
ヴィクトルは魔法でろうそくのような淡い光を浮かべると、壁面にとりついて登り始めた。
穴に手が届いた時、入り口の木の枝がバーン! と吹き飛ばされ、
ブフッ! グフッ!
と、鼻を鳴らす音が洞窟内に響いた。オークだ!
筋骨隆々とした巨躯にイノシシの頭。口からは凶悪な牙が鋭く伸び、鈍く光っていた。
グァァ――――!
叫びながら突っ込んでくるオーク。
ヴィクトルは必死に穴を登り、ギリギリのところで逃げ切る。
しかし、オークは諦めない。
ゴァァ――――!
巨体を穴に突っ込み、穴の割れ目を広げて迫ってくる。
オーク レア度:★★★
魔物 レベル35
あまりの迫力に気おされるヴィクトルだが、逃げて逃げ切れるような敵じゃない。ここで二匹とも倒す以外生き残るすべはなかった。しかし、レベルはオークの方がはるかに上。闇夜の森でいきなり突き付けられた命の危機に、ヴィクトルの心臓は激しく鳴り響く。
直後、オークが穴を押し広げ、上半身が露わになる。目が血走ってよだれを垂らす醜いオークの顔が灯りで浮かび上がり、ヴィクトルの心に絶望的な恐怖を巻き起こした。
ひぃぃ!
殺られる……。
しかし、諦める訳にもいかない。スローライフで愛する人と第二の人生を満喫すると心に決めたのだ。馬鹿どもに復讐もせねばならない。こんなところで終わってなるものか。
ヴィクトルはぐっと歯を食いしばり、今できる最高の攻撃が何かを必死に考える。
叩こうが魔法撃とうがとても効くとは思えなかったが、もしかしたら……。
「よしっ!」
ヴィクトルは腹を決め、棒をぎゅっと握りなおし、構えた。
グガァ!
オークは叫ぶ。
ヴィクトルはその瞬間を見逃さず、木の棒を素早く口に突っ込む。
グッ! ガッ!
慌てるオーク。
そしてヴィクトルは、木の棒をこじって、開いたすき間めがけて手を当てて叫ぶ。
「風刃!!」
シュゥン!
と、空気を切り裂く音が響いて、緑色の閃光が走り、オークの喉の奥へ風魔法が放たれた。
グホゥ!!
オークは声にならない悲鳴をあげながら落ちて行く。
そして、
ピロローン!
ピロローン!
と、効果音が鳴り響いた。
風魔法が内臓をズタズタに切り裂いたのだ。さしものオークも体内に直接撃たれた魔法には耐えられなかったようだ。
しかし、まだ一匹いる。依然としてピンチには変わりない。
ガサガサッ!
もう一匹は外をまわってヴィクトルの方に走ってくる。
「ヤバい、ヤバい!」
ヴィクトルは急いで穴に降りた。
オークはズーン! ズーン! と、近くの木に体当たりを繰り返し、バキバキバキ! ズズーン! と木が倒れる音が響く。
ヴィクトルはその意味不明な行動をいぶかしく思っていたが、直後、穴から木の幹が落とされる。何と、穴がふさがれてしまった。ヤバいと思って外に逃げようとした時、オークと目が合う。オークは周到にヴィクトルを追い詰めたのだった。
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