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44. 伝説のペガサス
しおりを挟む「ヨーシ! 神殿まで競走だゾ!」
何を思ったかノリノリのシアンは、いきなりそう叫ぶと馬のお腹を蹴る。
ブロロロ!
シアンのノリに当てられて、鼻息荒く馬は駆け出した。
「あっ! シアンちゃんズルーい!」「あー、もうっ!」
タニアも駆け出し、レヴィアもそれに続いた。
ヒャッハー!
シアンは青い髪を盛大に揺らしながら楽しそうに坂道を一直線に登っていく。
瑛士はどうしたらいいのか分からなかったが、アイアンホーフは一人置いて行かれるのが悔しいらしく、負けじと駆け出した。
「えっ!? ちょ、ちょっと! 止まって! ひぃぃぃ!」
瑛士は慌てて鞍にしがみつきながら叫ぶが、アイアンホーフはむしろさらに加速していった。
パカラッパカラッ!
馬たちは風を切るように走り抜け、その蹄の響きは雷のように地を揺らした。その勢いは止まることを知らず、四頭が競うように丘の上の神殿を目指す。
ハイヤー!
タニアが鞭を入れ、シアンに肉薄していく。しかし、抜くまでには至らない。
「くふふふ……。もうすぐゴールだゾ!」
シアンはまるで競馬のジョッキーの様に腰を浮かし、完璧なフォームを維持しながらタニアを振り返った。
「くぅ……、気合い入れなさいよっ!」
タニアはさらにビシッと鞭を入れた。
そんなトップ争いなんて見る余裕もない瑛士は、必死に落とされないように丸くなりながらアイアンホーフに言い聞かせる。
「あー、もう! 勝負付いたから速度落とそうよ、ねっ?」
その時だった、いきなりアイアンホーフがヒヒーンと甲高くいななくと、青白い光に包まれていく。
へっ!?
瑛士は驚愕した。なんと、ふわっと浮かび上がったのだ。
見れば青白く光る雄大な翼が肩あたりから生え、それを巧みに使って高度を上げていく。
「はぁっ!? ぺ、ペガサス!?」「な、なんじゃ!?」「あちゃー……」
最終コーナーを回って神殿の門が見えてきた辺りを走っていた一行は、いきなり空に舞い上がる白馬に唖然として言葉を失った。
「いや、マズいって。降りて! 降りて!」
瑛士は死刑がちらついて必死にアイアンホーフの首を叩くが、アイアンホーフは気持ちよさそうに旋回しながら神殿の門を目指した。
ヴィーン! ヴィーン!
警報が響き渡り、大理石造りの荘重なゲートが赤い輝きを放つ。
「何やっとる! 降りろー!」
レヴィアは叫ぶが、瑛士は神殿では力など使えない。こんな高さから落ちたら下手したら死んでしまうのだ。
「む、無理ですよぉ!」
直後、ゲートに浮き彫りされていた幻獣たちの目が赤く輝き、その口から次々と金色に輝く鎖が射出される。
うわぁぁぁぁ!
その魔法の鎖はあっという間に、アイアンホーフごと瑛士をグルグル巻きに縛り上げていく。
「ありゃりゃ……」「あぁぁぁ……」
シアンたちは手綱を引いて速度を落としながら、目の前に展開する想定外の事態に啞然として言葉を失った。
まるで蜘蛛の巣にかかった蝶のように、アイアンホーフは必死にもがくが、もがけばもがくほど鎖はしっかりと締め付けていく。
ピー! ピピーー!!
「曲者だー!」「お前ら動くなー!」
神殿から警備の天使たちが警笛を吹き、杖をもって飛び出してくる。
あわわわわ……。
瑛士はきつく縛られて身動きが取れないまま絶望に堕ちていく。こんなざまではパパを生き返らせることなど不可能だ。もはや死刑にならないことを目標にせざるを得ない現実に、瑛士は白目をむいて意識が遠くなっていった。
◇
「シ、シアン様……? こ、これは一体……」
警備の天使は渋い顔をしているシアンを見つけ、困惑しながら金の鎖に捕らわれた瑛士たちを見上げた。
「いや、これはだねぇ……」
シアンが弁解しようとしたその時だった。いきなり雲の輝きがピカピカと明滅し、暗闇が訪れる――――。
刹那、ピシャーン! という激しい衝撃音と共に雷が近くの樹に落ちて燃え上がった。
「シーアーン!! またお前か!」
野太い女性の声があたりに響き渡り、次々と雷がシアンを襲い始める。
「ち、違うって! おわぁ!!」
シアンが慌てふためく中、天から神の怒りそのものの電撃が次々と降り注ぐ。その閃光はあまりにも激しく、まるで太陽が地上に落ちたかのよう。その衝撃で地面は地震の鼓動のように揺れ動く。
「違うって言ってるでしょ!」
シールドを張って直撃を逃れていたシアンだったが、止まらない雷のラッシュに頭にきて雷をはじき返し始める。
ゲートに、神殿の柱に、屋根に次々と電撃が命中し、まるで空襲を受けたかのように破片をまき散らしながら爆発を起こす。神殿はまるで戦場みたいになってしまった。
何を思ったかノリノリのシアンは、いきなりそう叫ぶと馬のお腹を蹴る。
ブロロロ!
シアンのノリに当てられて、鼻息荒く馬は駆け出した。
「あっ! シアンちゃんズルーい!」「あー、もうっ!」
タニアも駆け出し、レヴィアもそれに続いた。
ヒャッハー!
シアンは青い髪を盛大に揺らしながら楽しそうに坂道を一直線に登っていく。
瑛士はどうしたらいいのか分からなかったが、アイアンホーフは一人置いて行かれるのが悔しいらしく、負けじと駆け出した。
「えっ!? ちょ、ちょっと! 止まって! ひぃぃぃ!」
瑛士は慌てて鞍にしがみつきながら叫ぶが、アイアンホーフはむしろさらに加速していった。
パカラッパカラッ!
馬たちは風を切るように走り抜け、その蹄の響きは雷のように地を揺らした。その勢いは止まることを知らず、四頭が競うように丘の上の神殿を目指す。
ハイヤー!
タニアが鞭を入れ、シアンに肉薄していく。しかし、抜くまでには至らない。
「くふふふ……。もうすぐゴールだゾ!」
シアンはまるで競馬のジョッキーの様に腰を浮かし、完璧なフォームを維持しながらタニアを振り返った。
「くぅ……、気合い入れなさいよっ!」
タニアはさらにビシッと鞭を入れた。
そんなトップ争いなんて見る余裕もない瑛士は、必死に落とされないように丸くなりながらアイアンホーフに言い聞かせる。
「あー、もう! 勝負付いたから速度落とそうよ、ねっ?」
その時だった、いきなりアイアンホーフがヒヒーンと甲高くいななくと、青白い光に包まれていく。
へっ!?
瑛士は驚愕した。なんと、ふわっと浮かび上がったのだ。
見れば青白く光る雄大な翼が肩あたりから生え、それを巧みに使って高度を上げていく。
「はぁっ!? ぺ、ペガサス!?」「な、なんじゃ!?」「あちゃー……」
最終コーナーを回って神殿の門が見えてきた辺りを走っていた一行は、いきなり空に舞い上がる白馬に唖然として言葉を失った。
「いや、マズいって。降りて! 降りて!」
瑛士は死刑がちらついて必死にアイアンホーフの首を叩くが、アイアンホーフは気持ちよさそうに旋回しながら神殿の門を目指した。
ヴィーン! ヴィーン!
警報が響き渡り、大理石造りの荘重なゲートが赤い輝きを放つ。
「何やっとる! 降りろー!」
レヴィアは叫ぶが、瑛士は神殿では力など使えない。こんな高さから落ちたら下手したら死んでしまうのだ。
「む、無理ですよぉ!」
直後、ゲートに浮き彫りされていた幻獣たちの目が赤く輝き、その口から次々と金色に輝く鎖が射出される。
うわぁぁぁぁ!
その魔法の鎖はあっという間に、アイアンホーフごと瑛士をグルグル巻きに縛り上げていく。
「ありゃりゃ……」「あぁぁぁ……」
シアンたちは手綱を引いて速度を落としながら、目の前に展開する想定外の事態に啞然として言葉を失った。
まるで蜘蛛の巣にかかった蝶のように、アイアンホーフは必死にもがくが、もがけばもがくほど鎖はしっかりと締め付けていく。
ピー! ピピーー!!
「曲者だー!」「お前ら動くなー!」
神殿から警備の天使たちが警笛を吹き、杖をもって飛び出してくる。
あわわわわ……。
瑛士はきつく縛られて身動きが取れないまま絶望に堕ちていく。こんなざまではパパを生き返らせることなど不可能だ。もはや死刑にならないことを目標にせざるを得ない現実に、瑛士は白目をむいて意識が遠くなっていった。
◇
「シ、シアン様……? こ、これは一体……」
警備の天使は渋い顔をしているシアンを見つけ、困惑しながら金の鎖に捕らわれた瑛士たちを見上げた。
「いや、これはだねぇ……」
シアンが弁解しようとしたその時だった。いきなり雲の輝きがピカピカと明滅し、暗闇が訪れる――――。
刹那、ピシャーン! という激しい衝撃音と共に雷が近くの樹に落ちて燃え上がった。
「シーアーン!! またお前か!」
野太い女性の声があたりに響き渡り、次々と雷がシアンを襲い始める。
「ち、違うって! おわぁ!!」
シアンが慌てふためく中、天から神の怒りそのものの電撃が次々と降り注ぐ。その閃光はあまりにも激しく、まるで太陽が地上に落ちたかのよう。その衝撃で地面は地震の鼓動のように揺れ動く。
「違うって言ってるでしょ!」
シールドを張って直撃を逃れていたシアンだったが、止まらない雷のラッシュに頭にきて雷をはじき返し始める。
ゲートに、神殿の柱に、屋根に次々と電撃が命中し、まるで空襲を受けたかのように破片をまき散らしながら爆発を起こす。神殿はまるで戦場みたいになってしまった。
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