魔王退治には核兵器だね! お兄ちゃん

月城 友麻

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14.ずっと一緒

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 そんな姿を睥睨へいげいした彩夏は、
「女の敵、ゆるすまじ……」
 そうつぶやくと一気にデュドネとの距離を詰める。
「こっ、小娘め! 調子に乗りやがって!」
 デュドネは全身を青白く光らせ、全力でもって彩夏を迎え撃つ。
 全身のあちこちから放たれる漆黒のハッキング弾が彩夏めがけて襲いかかる。
 彩夏は腕をピンク色に光らせ多くを払いのけたが、残りは彩夏の身体のあちこちに刺さり、ヒルのようにとりついた。そして弾からは彩夏をハックしようとする信号が出される。
 直後、ボン! と爆発音がした。しかし、爆発したのはデュドネの方だった。デュドネの身体のあちこちがスパークを伴いながら次々と爆発していく。
 ぐはぁ!
 瞳の奥に赤い炎をゆらしながらニヤリと笑う彩夏。彩夏にとりついたハッキング弾はポロポロと落ちて行く。
「な、なぜ……」
 デュドネは苦悶の表情を浮かべる。
 彩夏はデュドネに瞬歩で迫ると、
「涼ちゃんのお返しよ!」
 と、叫びながら渾身のビンタをバチコーン! とデュドネの顔面に放った。

 ブヘェ~!
 ボロボロになったデュドネはクルクルと宙を舞い、木の幹にガン! と派手にぶつかって気を失い、落ち葉を舞いあげながら転がっていく。
「成敗!」
 ハァハァと肩で息をつきながら彩夏は叫んだ。
 巫女の血が目覚めた彩夏は、こうしてテロリストの制圧に成功したのだった。

      ◇

 彩夏は涼真の所へ急いだ。
 気を失ってる涼真を抱き上げ、胸でギュッと抱きしめる彩夏。
「涼ちゃん……」
 彩夏は治癒の力を使って涼真のケガを一つずつ丁寧に治していく。
 やがて、涼真は目を覚ます。
 う?
 ふんわりと柔らかく温かいものがほおに当たっている……。
 ゆっくりと目を開けると、破けたボーダーシャツのすき間から発達途中のふくらみがのぞいていた。
 へっ!?
 一気に目が覚めた涼真は上を見上げる。
「涼ちゃーん!」
 彩夏は気がついたことに喜び、グリグリと涼真の顔をきつく抱きしめた。
「うわ、おわぁ……」
 涼真はうれし恥ずかしで混乱して変な声が出てしまう。
「涼ちゃん、もう大丈夫よ。私、倒したから」
 彩夏はそう言って転がっているデュドネを指さした。
「へ? お、お前がやったのか?」
「うん」
 そう言ってうなずく彩夏。
 涼真は立ち上がると恐る恐るデュドネに近づき、特殊な捕縛の鎖でグルグルと縛った。
「これでもう大丈夫だな」
 涼真が彩夏を見てニコッと笑うと、
「涼ちゃん……」
 そう言って彩夏は目に涙をためる。
「ど、どうしたんだ?」
 彩夏は涼真の胸に飛び込み、
「恐かったの……。もうダメかと思っちゃった……」
 と、さめざめと涙を流した。
「そうか……、危なかったな。役立たずでごめん……」
 涼真は彩夏の髪をなでながら謝る。
「ううん……。私を守ろうという涼ちゃんの命がけの攻撃……。あれに勇気をもらったのよ」
「そ、そうなのか?」
「うん……」
 そう言って、彩夏は愛おしそうに涼真の胸をスリスリと頬で感じた。
 そんな彩夏を涼真はギュッと抱きしめる。
「ほんと良かった……」
 涼真は心から安堵し、何物にも代えがたい幸せな温かさを感じていた。

「あのね……」
 彩夏がぽつりとつぶやく。
「どうした?」
「私……、もう涼ちゃんがいないとダメみたい……」
「そ、そうなの?」
 涼真は妹にそんなことを言われてどうしたらいいのか困惑する。

「ねぇ……」
 甘えた声を出す彩夏。
「な、なぁに?」
 彩夏はおずおずと涼真を見上げ、
「ず、ずっと一緒に……いて……くれる?」
 と、恥ずかしげに絞り出すように言った。
 『ずっと一緒』とはどういう意味だろうか? 涼真は、自分が今、人生における一番大切な瞬間に立っていることに気づいた。もし、『一生一緒』という意味であればこれはもうプロポーズなのだ。
「ず、ずっと……って?」
「ずっとはずっとよ! いつまでも……一緒に……」
 彩夏は真っ赤になりながら涼真の胸に顔をうずめた。
 やはり、そう言う意味らしい。涼真は大きく息をついて考える。彩夏のいる人生、彩夏と離れた人生、どちらがいいか……。しかし考えるまでもなかった。答えは明白なのだ。
 涼真は自然とゆるむほほに自分の本心を知る。

「わかった。ずっと一緒だ。いつまでもずーっと……」
 涼真は彩夏の髪にほほを寄せた。
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