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7.最高に幸せな死因
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つまり、シアンはこの地球も仮想現実空間だと言っているのだ。そんな馬鹿な。
すると、シアンはいたずらっ子の笑みを浮かべ、エイッと涼真を指さした。
ポン!
軽い爆発音がして涼真が消える。
彩夏は驚いたが、下を見るとハムスターサイズに小さくなってしまった涼真が、椅子の座面上で呆然としていた。
涼真も、上を見上げて驚く。
「へっ!?」
そこには巨大な彩夏がビックリして見下ろしているのだ。
「りょ、涼ちゃん!」
彩夏はそっと両手で涼真を抱き上げる。
涼真はその異次元な世界に呆然とした。丸太のように太い指、まるで大仏にいだかれたかのように、全てが大きく見える。
質量保存則も何もかも無視した、物理法則の効かない事態、それはここがリアルな世界ではない明白な証拠だった。
「仮想現実空間ならサイズも自由自在だね!」
シアンはニコニコしながら言う。
「いや! ちょっと! 困りますよ!」
彩夏の手の中でインコのような甲高い声をあげる涼真。
「こんな事リアルな世界じゃできないでしょ?」
ドヤ顔で言うシアン。
「分かりました! 分かりましたから、戻してください!」
「ふふっ、じゃあ戻してあげ……」
「ちょっと待って! 小さい涼ちゃんも……可愛いかも?」
彩夏は好奇心いっぱいの目で両手に包んだ涼真を見つめる。
「お、おい、オモチャじゃ……ないんだぞ?」
巨大な彩夏に迫られて冷や汗を流す涼真。
「手乗り涼ちゃん……、こんなの初めての感覚だわ……」
彩夏はほほでスリスリと涼真を感じる。
「うわ、ちょっと! ……、うほぉ――――!」
温かい彩夏のほほの柔らかさに圧倒される涼真。
「そうだ、肩に乗って一緒にお散歩ってどう?」
そう言いながら涼真を肩に乗せる。
涼真は辺りを見回してみる。そこは今までと変わらずただのオフィスの風景なのに、本棚やキャビネットが高層ビルのような迫力を持ち、観葉植物は巨木だった。
涼真は、ブルっと身震いをすると、
「はい! もうおしまい!」
と、彩夏の流れるような黒髪にしがみつきながら、可愛くのぞく耳に向けて叫んだ。
「えー……。もうちょっと」
彩夏は涼真に手を伸ばす。
「もういいから! うわぁ!」
涼真は手を払いのけそこなって、鎖骨のところで足を滑らせた。
そのままスポッと彩夏の服の中に落ちて行く涼真。
「ひぃ!」
服の中から涼真の声が響き、
「きゃぁ!」
思わず両腕で胸を押さえる彩夏。
プチッ……。
嫌な音がして、涼真は彩夏の温かく柔らかい胸で潰された。
「ありゃりゃ……」
シアンは思わず額に手を当て、ため息をつく。
◇
気がつくと、涼真は元のサイズで普通に椅子に座っていた。
「あ、あれ?」
横を見ると、彩夏が真っ赤になって申し訳なさそうに涼真を見ている。
「もしかして……俺、一回死にました?」
恐る恐るシアンを見ると、
「女の子の胸で死ぬなんて、なかなかない体験だよ」
と、嬉しそうに言った。
涼真は意識を失う直前に感じた、ふんわりと柔らかで温かな肌を思い出し、ポッと赤くなる。
「涼ちゃん……、ゴメンね……」
上目づかいで謝る彩夏。
「だ、だ、だ、大丈夫。生き返ったからセーフ」
全身で感じた彩夏の胸のふくらみの記憶をどうしたらいいのか分からず、混乱しながら答えた。
「と、まぁ、こんな具合でね。ここは仮想現実空間なんだよ」
シアンは淡々と説明する。
小さくされて殺され、そして生き返らされたという、現実感がまるでない体験に、涼真は思わずため息をつき、言葉を失った。こんな不可思議な体験をしては、確かにここが作られた世界であることを認めざるを得ない。
「今度、この星を動かしてるコンピューター見せてあげるよ。十五ヨタ・フロップス。スパコンの一兆倍の規模だよ。デカいよ」
ニコニコするシアン。
涼真はこの理解に苦しむ話をどう考えたらいいか途方に暮れた。
「ここが仮想現実空間ってことは、何ができるかな?」
シアンはニヤッと笑って言う。
「それは……、権限さえあれば何でも実現できますよね。さっきみたいに」
「そう。病気を一瞬で治したりね」
そう言ってシアンはウインクした。
この瞬間全てが一つに繋がった。なぜ彼らがガンを治せたのか、なぜ異世界なんてものがあるのか、彼らが管理している百万の星とは何なのか、涼真は全てを理解したのだった。全てはコンピューター上の物語だったのだ。
涼真は大きく息をつくと頭を抱え、この常識とはかけ離れた真実の世界とどう向き合ったらいいか悩む。ここが仮想現実空間なら人間とは何なのか、自分とは何なのか、どう生きて行くのが正解なのか、そもそもこの日本社会に何の意味があるのか……。
すると、シアンはいたずらっ子の笑みを浮かべ、エイッと涼真を指さした。
ポン!
軽い爆発音がして涼真が消える。
彩夏は驚いたが、下を見るとハムスターサイズに小さくなってしまった涼真が、椅子の座面上で呆然としていた。
涼真も、上を見上げて驚く。
「へっ!?」
そこには巨大な彩夏がビックリして見下ろしているのだ。
「りょ、涼ちゃん!」
彩夏はそっと両手で涼真を抱き上げる。
涼真はその異次元な世界に呆然とした。丸太のように太い指、まるで大仏にいだかれたかのように、全てが大きく見える。
質量保存則も何もかも無視した、物理法則の効かない事態、それはここがリアルな世界ではない明白な証拠だった。
「仮想現実空間ならサイズも自由自在だね!」
シアンはニコニコしながら言う。
「いや! ちょっと! 困りますよ!」
彩夏の手の中でインコのような甲高い声をあげる涼真。
「こんな事リアルな世界じゃできないでしょ?」
ドヤ顔で言うシアン。
「分かりました! 分かりましたから、戻してください!」
「ふふっ、じゃあ戻してあげ……」
「ちょっと待って! 小さい涼ちゃんも……可愛いかも?」
彩夏は好奇心いっぱいの目で両手に包んだ涼真を見つめる。
「お、おい、オモチャじゃ……ないんだぞ?」
巨大な彩夏に迫られて冷や汗を流す涼真。
「手乗り涼ちゃん……、こんなの初めての感覚だわ……」
彩夏はほほでスリスリと涼真を感じる。
「うわ、ちょっと! ……、うほぉ――――!」
温かい彩夏のほほの柔らかさに圧倒される涼真。
「そうだ、肩に乗って一緒にお散歩ってどう?」
そう言いながら涼真を肩に乗せる。
涼真は辺りを見回してみる。そこは今までと変わらずただのオフィスの風景なのに、本棚やキャビネットが高層ビルのような迫力を持ち、観葉植物は巨木だった。
涼真は、ブルっと身震いをすると、
「はい! もうおしまい!」
と、彩夏の流れるような黒髪にしがみつきながら、可愛くのぞく耳に向けて叫んだ。
「えー……。もうちょっと」
彩夏は涼真に手を伸ばす。
「もういいから! うわぁ!」
涼真は手を払いのけそこなって、鎖骨のところで足を滑らせた。
そのままスポッと彩夏の服の中に落ちて行く涼真。
「ひぃ!」
服の中から涼真の声が響き、
「きゃぁ!」
思わず両腕で胸を押さえる彩夏。
プチッ……。
嫌な音がして、涼真は彩夏の温かく柔らかい胸で潰された。
「ありゃりゃ……」
シアンは思わず額に手を当て、ため息をつく。
◇
気がつくと、涼真は元のサイズで普通に椅子に座っていた。
「あ、あれ?」
横を見ると、彩夏が真っ赤になって申し訳なさそうに涼真を見ている。
「もしかして……俺、一回死にました?」
恐る恐るシアンを見ると、
「女の子の胸で死ぬなんて、なかなかない体験だよ」
と、嬉しそうに言った。
涼真は意識を失う直前に感じた、ふんわりと柔らかで温かな肌を思い出し、ポッと赤くなる。
「涼ちゃん……、ゴメンね……」
上目づかいで謝る彩夏。
「だ、だ、だ、大丈夫。生き返ったからセーフ」
全身で感じた彩夏の胸のふくらみの記憶をどうしたらいいのか分からず、混乱しながら答えた。
「と、まぁ、こんな具合でね。ここは仮想現実空間なんだよ」
シアンは淡々と説明する。
小さくされて殺され、そして生き返らされたという、現実感がまるでない体験に、涼真は思わずため息をつき、言葉を失った。こんな不可思議な体験をしては、確かにここが作られた世界であることを認めざるを得ない。
「今度、この星を動かしてるコンピューター見せてあげるよ。十五ヨタ・フロップス。スパコンの一兆倍の規模だよ。デカいよ」
ニコニコするシアン。
涼真はこの理解に苦しむ話をどう考えたらいいか途方に暮れた。
「ここが仮想現実空間ってことは、何ができるかな?」
シアンはニヤッと笑って言う。
「それは……、権限さえあれば何でも実現できますよね。さっきみたいに」
「そう。病気を一瞬で治したりね」
そう言ってシアンはウインクした。
この瞬間全てが一つに繋がった。なぜ彼らがガンを治せたのか、なぜ異世界なんてものがあるのか、彼らが管理している百万の星とは何なのか、涼真は全てを理解したのだった。全てはコンピューター上の物語だったのだ。
涼真は大きく息をつくと頭を抱え、この常識とはかけ離れた真実の世界とどう向き合ったらいいか悩む。ここが仮想現実空間なら人間とは何なのか、自分とは何なのか、どう生きて行くのが正解なのか、そもそもこの日本社会に何の意味があるのか……。
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