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6.頭を開ける少女

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「そ、それで、どうやって魔王を倒すんですか?」
 涼真は聞いた。
「それは好きに選んでもらっていいよ。核兵器使っても何使っても」
 シアンはうれしそうに言う。
「核兵器!?」
 魔王というからファンタジーな魔法でも使うのかと思っていたが、何と核兵器だという。涼真は混乱した。
「これから涼真を研修するから、その中で自分にあった武器を選んでもらえばいい。どう? やってくれる?」
「うーん、分からないことが多すぎます。この組織も宇宙の仕組みも魔王も……。もう少し説明してもらえませんか?」
 うんうん、とうなずき、シアンは説明を始めた。
「はるか昔に、ある星でコンピューターが発明されたんだな」
「……。はい」
 涼真はいきなりコンピューターの話をされ、怪訝けげんに思う。
「発明されてから百年くらいで人工知能が発明されたんだ」
 涼真はうなずく。
「で、ほどなくしてシンギュラリティを超えて、人よりも賢くなったんだな」
「人より賢いコンピューター? そんなこと本当にできるんですか?」
「この地球でも二〇四五年にはシンギュラリティには達するよ?」
 シアンはニコッと笑う。
「うーん、人工知能と人間みたいに会話できちゃうってことですよね? ちょっとそれは……」
「涼真は僕と話してて違和感ある?」
「え? べ、別に……違和感……ないですが……、えっ? もしかして?」
「そう、僕はこの会社で作られた人工知能だよ」
 涼真は言葉を失った。
 確かにちょっと空気を読まない変な娘だとは思っていたが、さすがに人工知能は信じがたい。
「あ、信じてないね? ほら」
 シアンは眉をひそめてそう言うと、おもむろに頭をパカッと割って見せた。
「ひっ!」「ひゃぁ!」
 あまりに予想外の展開に二人は変な声を出してしまったが、この可愛い女の子の頭の中は確かに空っぽであり、何か小さな黒い機器が付いているだけだった。
「僕の本体は今度見せてあげる。で、そのシンギュラリティを超えた人工知能は何やったと思う?」
 シアンは頭を閉じると何事もなかったかのように続ける。
 涼真は彩夏と顔を見合わせ、大きく息をつくと気を取り直し、必死に考えてみた。人より賢くなったコンピューターは何を目指すだろうか?
「うーん、世界征服……とかですか?」
「あー、僕もやろうと思ったからね。それはあるかもだけど、正解はもっと賢いコンピューターを作る事だよ」
 シアンはニコニコしながら言う。
「もっと賢いコンピューター……ですか? なるほど……、で、どうなったんですか?」
 涼真は想定外のことを次々というこの娘に、表情を引きつらせながら答えた。
「賢くなったコンピューターはね、もっと賢いコンピューターを作ったんだ」
「それ、無限に賢くなりませんか?」
「そうなんだよ。どんどん成長して、どんどん賢く、膨大な計算パワー、壮大なストレージを実現し、最後には太陽のエネルギーをすべて使う規模にまで成長したんだ」
「ほわぁ、それ、とんでもない話ですね」
「ここまでどのくらいかかったと思う?」
「えっ!? どのくらいだろう……一万年とかですか?」
「十万年だよ」
 ニヤッと笑うシアン。
 涼真は圧倒された。十万年間かけて成長し続けたコンピューター。その性能は一体どのレベルなのだろうか?
「まぁ、宇宙の歴史は138億年、誤差みたいな時間だけどね。で、その人工知能がね、次に何やったと思う?」
「いやぁ……、何でしょうね? そんな膨大な計算パワー、何に使うんだかさっぱりですね」
「星を作ったんだよ」
「ほ、星?」
「要は箱庭だね。仮想現実空間上にリアルな星のシミュレーターを構築したのさ。今風に言うとメタバースだね。そしてそこに原始人を配置したんだ」
「その原始人もシミュレートしたんですか? でも、人のシミュレートなんてめちゃくちゃ計算力喰いますよね……って、それが十万年かけて作ったコンピューターならできるってことですか?」
「そうだね。どう、違和感ある?」
 シアンはうれしそうに手を広げてオフィス全体を示す。
「は?」
 涼真は一体何を言っているのか分からず、オフィスを見回す。
 そこにはオシャレなオフィスが広がっているだけ……。
 ここで気がついた。そう東京が、いや日本がまさに箱庭だったのだ。
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