56 / 65
4-5. 託されたカギ
しおりを挟む
オフィスビルの地下室に三人は軟禁された。
「とんでもない事になっちゃった……」
レオは頭を抱える。
「レヴィア様の警告を生かせなかった……。ヴィクトーたちはお父様たちを襲うつもりだわ、何とかしないと……」
オディーヌは真っ青になって言った。
「何とかって……何か方法あるの?」
「シアンさんかレヴィアさんを呼べれば解決ですが……」
零はそう言うものの、呼ぶ方法がない現実に肩を落とした。
レオたちはスマホも取り上げられ、外界とは隔絶されてしまっているのだ。
「何か方法ないかなぁ……」
レオが頭を抱えながら言う。
三人は黙り込んだ。
どこかの換気扇のグォーンという鈍い音が、かすかに地下室に響いている……。
「あの……、この世界は幻想だって……言ってましたよね……」
零が歓迎会の時のことを思い出して言った。
「そうね、情報でできてるって……」
オディーヌも思い出して言った。
「シアンは『知れば操作できる』と言ってた……」
「この世界を知る……、一体どうやって?」
零が聞く。
「呼吸がカギだって……言ってたわ」
「呼吸!? 知る事と呼吸と何の関係が?」
「分からないわ、でも肺が唯一動かせる内臓だって……」
「なるほど……、瞑想……かもしれないな」
零は腕組みをして言った。
「瞑想?」
レオが聞く。
「心を落ち着かせると無意識の中が見えてくるんだよ。そこがカギになってるのかもしれない」
「じゃあ、やってみよう!」
三人は零の『瞑想のやり方』の記憶を頼りに椅子に浅く座り、背筋をビンと伸ばしてゆっくり深呼吸を繰り返した……。
「なんかボーっとしてくるけど、世界のことは分からないね……」
レオが言う。
するとオディーヌが変な口調で話し始めた。
「なんじゃお前ら、捕まったのか、しょうがないのう……」
「レ、レヴィア様!? レヴィア様なの?」
レオが驚いて聞く。
「いかにも我じゃ。じゃが……、議会の総意が正義である以上、我も介入はできんぞ」
「そ、そんなぁ……、多くの人が死んじゃうよぉ!」
「それが人々の総意なら止められんのじゃ」
「レヴィア様ひどい!」
「ひどいって言われてものう……」
「瞑想するのは正解ですか?」
零が横から聞く。
「いかにも正解じゃ……。ついでに一つだけヒントをやろう。レオの短剣、それがカギになっとる。上手く使えよ」
「えっ? 短剣!?」
レオは腰のベルトに付けておいた短剣を取り出して眺めた。しかし、それはただの剣だ。瞑想でどう使うのか分からない。
「ねぇ、どうやって使うの?」
「瞑想を極めたら自然と分かるよ。これ以上は言えん。健闘を祈っとるよ」
そう言うとオディーヌはぐったりと倒れた。
「これがカギ……」
父の形見だとママに渡された短剣。まさかそれがこの世界のカギだったとは……。思いもかけなかったことにレオはしばし呆然として短剣を眺めていた。
零は、気を失ったオディーヌを丁寧に横たえると、言った。
「レオさん、カギを使いましょう!」
「う、うん……。瞑想してこれを使うとシアンみたいになれる……ってことだよね?」
「そうだと思います。ヴィクトーを止めましょう!」
レオは短剣を握り締め、再度深呼吸を繰り返した。
ス――――、フゥ――――。
ス――――、フゥ――――。
何度か繰り返すものの、雑念が邪魔をして一向に瞑想状態まで行けないレオ。
「ダメです、どうやるんですか?」
レオは泣きそうになって零に聞いた。
「焦らなくていいんです。雑念が湧いてもいいんです。雑念が湧いたら『これは横に置いておこう』って思ってまた深呼吸するといいんです」
零は以前読んだ瞑想のやり方を思い出し、伝える。
「分かったよ!」
レオは再度深呼吸を始めた。
ス――――、フゥ――――。
ヴィクトーの顔がチラついたが、それを横に流し、
ス――――、フゥ――――、と深呼吸を続けた。
やがてフワッと体が浮き、スーッと落ち込んでいく感覚がした。
レオはそのまま深呼吸を続ける……。
どんどん、どんどん、落ちて行く……。
それは今までにレオが感じたことのない感覚だった。
レオは恍惚とした表情でさらに深い所を目指す……。
「とんでもない事になっちゃった……」
レオは頭を抱える。
「レヴィア様の警告を生かせなかった……。ヴィクトーたちはお父様たちを襲うつもりだわ、何とかしないと……」
オディーヌは真っ青になって言った。
「何とかって……何か方法あるの?」
「シアンさんかレヴィアさんを呼べれば解決ですが……」
零はそう言うものの、呼ぶ方法がない現実に肩を落とした。
レオたちはスマホも取り上げられ、外界とは隔絶されてしまっているのだ。
「何か方法ないかなぁ……」
レオが頭を抱えながら言う。
三人は黙り込んだ。
どこかの換気扇のグォーンという鈍い音が、かすかに地下室に響いている……。
「あの……、この世界は幻想だって……言ってましたよね……」
零が歓迎会の時のことを思い出して言った。
「そうね、情報でできてるって……」
オディーヌも思い出して言った。
「シアンは『知れば操作できる』と言ってた……」
「この世界を知る……、一体どうやって?」
零が聞く。
「呼吸がカギだって……言ってたわ」
「呼吸!? 知る事と呼吸と何の関係が?」
「分からないわ、でも肺が唯一動かせる内臓だって……」
「なるほど……、瞑想……かもしれないな」
零は腕組みをして言った。
「瞑想?」
レオが聞く。
「心を落ち着かせると無意識の中が見えてくるんだよ。そこがカギになってるのかもしれない」
「じゃあ、やってみよう!」
三人は零の『瞑想のやり方』の記憶を頼りに椅子に浅く座り、背筋をビンと伸ばしてゆっくり深呼吸を繰り返した……。
「なんかボーっとしてくるけど、世界のことは分からないね……」
レオが言う。
するとオディーヌが変な口調で話し始めた。
「なんじゃお前ら、捕まったのか、しょうがないのう……」
「レ、レヴィア様!? レヴィア様なの?」
レオが驚いて聞く。
「いかにも我じゃ。じゃが……、議会の総意が正義である以上、我も介入はできんぞ」
「そ、そんなぁ……、多くの人が死んじゃうよぉ!」
「それが人々の総意なら止められんのじゃ」
「レヴィア様ひどい!」
「ひどいって言われてものう……」
「瞑想するのは正解ですか?」
零が横から聞く。
「いかにも正解じゃ……。ついでに一つだけヒントをやろう。レオの短剣、それがカギになっとる。上手く使えよ」
「えっ? 短剣!?」
レオは腰のベルトに付けておいた短剣を取り出して眺めた。しかし、それはただの剣だ。瞑想でどう使うのか分からない。
「ねぇ、どうやって使うの?」
「瞑想を極めたら自然と分かるよ。これ以上は言えん。健闘を祈っとるよ」
そう言うとオディーヌはぐったりと倒れた。
「これがカギ……」
父の形見だとママに渡された短剣。まさかそれがこの世界のカギだったとは……。思いもかけなかったことにレオはしばし呆然として短剣を眺めていた。
零は、気を失ったオディーヌを丁寧に横たえると、言った。
「レオさん、カギを使いましょう!」
「う、うん……。瞑想してこれを使うとシアンみたいになれる……ってことだよね?」
「そうだと思います。ヴィクトーを止めましょう!」
レオは短剣を握り締め、再度深呼吸を繰り返した。
ス――――、フゥ――――。
ス――――、フゥ――――。
何度か繰り返すものの、雑念が邪魔をして一向に瞑想状態まで行けないレオ。
「ダメです、どうやるんですか?」
レオは泣きそうになって零に聞いた。
「焦らなくていいんです。雑念が湧いてもいいんです。雑念が湧いたら『これは横に置いておこう』って思ってまた深呼吸するといいんです」
零は以前読んだ瞑想のやり方を思い出し、伝える。
「分かったよ!」
レオは再度深呼吸を始めた。
ス――――、フゥ――――。
ヴィクトーの顔がチラついたが、それを横に流し、
ス――――、フゥ――――、と深呼吸を続けた。
やがてフワッと体が浮き、スーッと落ち込んでいく感覚がした。
レオはそのまま深呼吸を続ける……。
どんどん、どんどん、落ちて行く……。
それは今までにレオが感じたことのない感覚だった。
レオは恍惚とした表情でさらに深い所を目指す……。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる