48 / 65
3-16. 壮大な宇宙の神秘
しおりを挟む
「ふぅん、必要な計算量が多いから無理っていうのね?」
シアンはニヤニヤしながら言う。
「そうですよ! この世界をシミュレーションするって事は、シュレディンガー方程式を解いて分子の動きからシミュレートしなきゃダメです。そしてそんなのスパコン使ったって、たった一グラムの物体すら計算不可能です!」
零は勝ち誇ったように言い放った。
「ふぅん、零は人体のシミュレーションをする時、シュレディンガー方程式なんて解くの?」
シアンは目をキラッと光らせて、うれしそうに聞いた。
「えっ!? じ、人体……ですか……。そのスケールだったら……、分子シミュレーションなんて……、意味ないから……、やらない……」
零は元気なくなってきて、うつむいてしまった。
「でしょ? 正解はこちら!」
シアンは楽しそうに箸を指揮者のように振った。
すると、ボン! と言って零の身体はワイヤーフレームになった。
「へっ!?」
スカスカの線画になってしまった零は驚いて立ち上がり、両手を見る。しかしそこには白い線の針金細工のような手があるだけであり、向こうが透けて見えていた。
「な、何だこれは!?」
零はあわてて、針金のロボットみたいに見える自分の手を握った。しかし、触ってみるとちゃんと感覚があり、力も暖かさも感じる……。しかし……、向こうが丸見えで透け透けなのだ。
零はしばらく考え込む。この非常識な事態をどう考えたらいいのだろうか……?
しかし、幾ら考えても答えは一つしか考えられなかった。
そして、ゆっくりと口を開く。
「こう……、計算させてるんですね……。なるほどこれなら……」
そう言って零はぐったりとうなだれると、しばらく動かなくなった。
「零……、大丈夫?」
レオは零の針金づくりの顔をのぞきこみ、心配そうに言う。
零は針金の手でジョッキをガッとつかむとそのまま一気飲みし、観念したように言った。
「全て理解しました。この世界がどうやって作られているかも想像がつきました」
「うんうん、零は優秀だなぁ」
シアンはうれしそうにして零の身体を元に戻した。
「で、サーバーが海王星にあるってことですよね?」
「そうそう」
「でも、全てが情報でできてるってことは、そこも根源じゃないってことですよね?」
零は鋭く切り込む。
「ほほう、お主すごいな」
レヴィアは感心して言った。
「我々は広大な情報の海に生まれ、生きる情報生命体……。あなた達の異世界はこの地球とどういう関係なんですか?」
零は吹っ切れたように饒舌に聞いた。
「パラレルワールドじゃな。多くの分身の中の兄弟世界じゃ」
「でもですよ? そんなことができるなら、私が書くようなプログラミングコードなど自動で合成できちゃうんじゃないですか?」
「そんなことやったら多様性が失われるじゃろ?」
「えっ? 多様性?」
「効率を求めるならそもそも世界など作らんよ。我々に求められてるのは多様性じゃ」
「なるほど! なるほど! 我々は試されてれるってことですね? この宇宙を司る大いなる存在に!」
零は興奮して言った。
「まぁ……、そうじゃな……」
「その大いなる存在って誰なんですか!?」
零は壮大な宇宙の神秘に触れ、大興奮して聞いた。
レヴィアは渋い顔をしながらシアンを見る。
「きゃははは!」
うれしそうに笑うシアン。
「まぁ、それはデリケートな問題じゃな」
レヴィアはお茶を濁す。
それでも零は、この世界の真実に触れられたことに感動し、スクッと立ち上がると、
「わたくし、零は今! モーレツに感動しております!! この素敵な出会いにカンパーイ!」
と、勢いよくジョッキを掲げた。
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「イエーイ!」「よろしくぅ!」
ジョッキのビールをゴクゴクと飲み干しながら、零は今までの悩みが全て吹っ飛んでいくような爽快感に浸っていた。今ここに見えている世界は幻想にすぎず、異世界は無数にあり、今、そこへのアクセスを手に入れたのだ。それは零の世界観をひっくり返すコペルニクス的転回だった。
シアンはニヤニヤしながら言う。
「そうですよ! この世界をシミュレーションするって事は、シュレディンガー方程式を解いて分子の動きからシミュレートしなきゃダメです。そしてそんなのスパコン使ったって、たった一グラムの物体すら計算不可能です!」
零は勝ち誇ったように言い放った。
「ふぅん、零は人体のシミュレーションをする時、シュレディンガー方程式なんて解くの?」
シアンは目をキラッと光らせて、うれしそうに聞いた。
「えっ!? じ、人体……ですか……。そのスケールだったら……、分子シミュレーションなんて……、意味ないから……、やらない……」
零は元気なくなってきて、うつむいてしまった。
「でしょ? 正解はこちら!」
シアンは楽しそうに箸を指揮者のように振った。
すると、ボン! と言って零の身体はワイヤーフレームになった。
「へっ!?」
スカスカの線画になってしまった零は驚いて立ち上がり、両手を見る。しかしそこには白い線の針金細工のような手があるだけであり、向こうが透けて見えていた。
「な、何だこれは!?」
零はあわてて、針金のロボットみたいに見える自分の手を握った。しかし、触ってみるとちゃんと感覚があり、力も暖かさも感じる……。しかし……、向こうが丸見えで透け透けなのだ。
零はしばらく考え込む。この非常識な事態をどう考えたらいいのだろうか……?
しかし、幾ら考えても答えは一つしか考えられなかった。
そして、ゆっくりと口を開く。
「こう……、計算させてるんですね……。なるほどこれなら……」
そう言って零はぐったりとうなだれると、しばらく動かなくなった。
「零……、大丈夫?」
レオは零の針金づくりの顔をのぞきこみ、心配そうに言う。
零は針金の手でジョッキをガッとつかむとそのまま一気飲みし、観念したように言った。
「全て理解しました。この世界がどうやって作られているかも想像がつきました」
「うんうん、零は優秀だなぁ」
シアンはうれしそうにして零の身体を元に戻した。
「で、サーバーが海王星にあるってことですよね?」
「そうそう」
「でも、全てが情報でできてるってことは、そこも根源じゃないってことですよね?」
零は鋭く切り込む。
「ほほう、お主すごいな」
レヴィアは感心して言った。
「我々は広大な情報の海に生まれ、生きる情報生命体……。あなた達の異世界はこの地球とどういう関係なんですか?」
零は吹っ切れたように饒舌に聞いた。
「パラレルワールドじゃな。多くの分身の中の兄弟世界じゃ」
「でもですよ? そんなことができるなら、私が書くようなプログラミングコードなど自動で合成できちゃうんじゃないですか?」
「そんなことやったら多様性が失われるじゃろ?」
「えっ? 多様性?」
「効率を求めるならそもそも世界など作らんよ。我々に求められてるのは多様性じゃ」
「なるほど! なるほど! 我々は試されてれるってことですね? この宇宙を司る大いなる存在に!」
零は興奮して言った。
「まぁ……、そうじゃな……」
「その大いなる存在って誰なんですか!?」
零は壮大な宇宙の神秘に触れ、大興奮して聞いた。
レヴィアは渋い顔をしながらシアンを見る。
「きゃははは!」
うれしそうに笑うシアン。
「まぁ、それはデリケートな問題じゃな」
レヴィアはお茶を濁す。
それでも零は、この世界の真実に触れられたことに感動し、スクッと立ち上がると、
「わたくし、零は今! モーレツに感動しております!! この素敵な出会いにカンパーイ!」
と、勢いよくジョッキを掲げた。
「カンパーイ!」「カンパーイ!」「イエーイ!」「よろしくぅ!」
ジョッキのビールをゴクゴクと飲み干しながら、零は今までの悩みが全て吹っ飛んでいくような爽快感に浸っていた。今ここに見えている世界は幻想にすぎず、異世界は無数にあり、今、そこへのアクセスを手に入れたのだ。それは零の世界観をひっくり返すコペルニクス的転回だった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる