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3-13. 少年の外交
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「次は移民の受け入れじゃな」
レヴィアが言った。
「スラムのたくさんの人たちに来てもらわないとね」
レオはニコニコして言う。
「しかし、どうやって周知し、どう来てもらうか……うーん」
レヴィアは腕を組んで悩む。
「お父様に相談してみるわ!」
オディーヌが言う。
「王様、いいって言うかな?」
レオは心配そうにオディーヌを見つめる。
「スラムの貧困層たちは犯罪の温床となったりして、国としても手を焼いていたから協力してくれると思うわ」
「良かった!」
「でも……、そんな犯罪の温床となってる人たちを連れてきちゃったら、この国壊れちゃわないかしら……」
「うーん、衣食住を保証してあげれば変わると思うんだけどね……」
するとレヴィアが、スマホみたいな小さな装置をレオに渡して言った。
「そういうお主らにこれをプレゼントしよう」
「え? これは何?」
「ウソ発見器じゃ。こうやってグラフが出て、ウソだったら赤の方に振れ、本当だったら緑の方に振れるのじゃ」
「これって……どう使うの?」
レオは不思議そうに言った。
「試しに『レヴィア様は凄い』って言ってごらん」
レヴィアはニヤッと笑って言った。
「分かったよ。レヴィア様は凄い!」
レオがウソ発見器に向かってそう言うと、グラフは緑に振れた。
「おぉ、お主は良い子じゃなぁ……」
レヴィアはうれしそうにレオの頭をなで、レオは少し照れた。
「じゃあ、レヴィア様嫌い!」
レオがそう言うと、グラフは赤に振れた。
「うむうむ」
レヴィアはご満悦だった。
「そしたら、これを入国審査に使えばいいってことですよね?」
ウソ発見器に感心しながらオディーヌは言った。
「そうじゃな。『犯罪を犯しません』って宣誓させて、赤くなった人には入国をお断りすればいい」
「でも、考えを改めたら入れてあげたいよね」
レオは言う。
「そうじゃな、毎日パンを配りながら生活を安定させ、心に余裕を持たせてもう一度宣誓してもらえばええじゃろ」
「うんうん、みんなに来てもらいたいからね!」
レオはニコニコして言う。
「そうと決まれば、お父様に話してくるわ!」
オディーヌは元気に立ち上がり、レヴィアにつなげてもらった空間から王宮へと入って行った。
◇
その日の午後、一行は王宮におもむいた。
豪奢な会議室に通され、メイドが紅茶を丁寧にサーブしていく。薄い純白の気品漂うティーカップには、可愛い赤い花の装飾が施されていた。きっと名のある職人の手による物だろう。
レオは静かに紅茶を飲みながら、何度も王様に頼む事を思い出し、確認する。
手の込んだ刺繍が施されたレースのカーテンには柔らかな日差しが当たり、室内をふんわりと照らしていた。
シアンはお茶菓子のクッキーを美味しそうに食べ、ポリポリという音が静かな室内に響く……。
ほどなくして王様が現れた。
「ようこそお越し下された。娘も世話になっていて申し訳ない」
王様は席に着くと一同を見回しながら威厳のある声で切り出した。
「オディーヌには助けてもらっています」
レオはそう言ってニコッと笑った。
王様は小さな少年、レオが答えたことにちょっと驚いて言う。
「それで今日は何やら提案があるとか……」
「スラムの人たちを僕たちの国で引き取りたいんですが、いいですか?」
レオはニコッと笑って言った。
「え!? あの人たちを?」
「そうです、そうです。まずこれを見てください」
レオがそう言うと、オディーヌがパソコンで街の動画を見せた。
「な、なんだ……、これは……」
驚く王様。
「ドラゴンの領地にこういう街を作りました。ここの住民としてスラムの人たちを呼び寄せたいのです」
「ちょ、ちょっと待って、この高い建物は何かね?」
「あぁ、この一番高いのがオフィスビルで、低いビル群がタワマン、住居です」
「ほわぁ……。こんなのどうやって建てたの?」
王様は圧倒されながらレオに聞いた。
「シアンがエイッて建てたんです」
「きゃははは!」
シアンはうれしそうに笑った。
王様はシアンの方を向いてただ茫然と見つめていた。
「お父様、スラムの人たちを引き取るのは、ニーザリにとってもいい事でしょ?」
「それはそうだが……。それには安全保障条約とか脅威にならない保証を得ないと……」
王様は困惑した。こんなオーバーテクノロジーを実現するドラゴンの国とどう付き合ったらいいのか皆目見当がつかなかったのだ。
「別にニーザリを攻めたりせんよ。条約なら問題ない。レオ、ええじゃろ?」
「うん、僕は大丈夫」
「ちょっと待って、君が意思決定者なのか?」
王様が驚いてレオを見る。
「あ、自己紹介がまだでしたね。この国、アレグリスの国王のレオです」
そう言ってレオはニコッと笑った。
「こ、国王……?」
唖然とする王様。
前代未聞の恐るべき国を率いる存在が、まだ幼いこの子供だという事実に、王様は困惑する。この少年との付き合い方がニーザリの将来をも左右するのだ。王様はただ茫然とレオを見つめた。
レヴィアが言った。
「スラムのたくさんの人たちに来てもらわないとね」
レオはニコニコして言う。
「しかし、どうやって周知し、どう来てもらうか……うーん」
レヴィアは腕を組んで悩む。
「お父様に相談してみるわ!」
オディーヌが言う。
「王様、いいって言うかな?」
レオは心配そうにオディーヌを見つめる。
「スラムの貧困層たちは犯罪の温床となったりして、国としても手を焼いていたから協力してくれると思うわ」
「良かった!」
「でも……、そんな犯罪の温床となってる人たちを連れてきちゃったら、この国壊れちゃわないかしら……」
「うーん、衣食住を保証してあげれば変わると思うんだけどね……」
するとレヴィアが、スマホみたいな小さな装置をレオに渡して言った。
「そういうお主らにこれをプレゼントしよう」
「え? これは何?」
「ウソ発見器じゃ。こうやってグラフが出て、ウソだったら赤の方に振れ、本当だったら緑の方に振れるのじゃ」
「これって……どう使うの?」
レオは不思議そうに言った。
「試しに『レヴィア様は凄い』って言ってごらん」
レヴィアはニヤッと笑って言った。
「分かったよ。レヴィア様は凄い!」
レオがウソ発見器に向かってそう言うと、グラフは緑に振れた。
「おぉ、お主は良い子じゃなぁ……」
レヴィアはうれしそうにレオの頭をなで、レオは少し照れた。
「じゃあ、レヴィア様嫌い!」
レオがそう言うと、グラフは赤に振れた。
「うむうむ」
レヴィアはご満悦だった。
「そしたら、これを入国審査に使えばいいってことですよね?」
ウソ発見器に感心しながらオディーヌは言った。
「そうじゃな。『犯罪を犯しません』って宣誓させて、赤くなった人には入国をお断りすればいい」
「でも、考えを改めたら入れてあげたいよね」
レオは言う。
「そうじゃな、毎日パンを配りながら生活を安定させ、心に余裕を持たせてもう一度宣誓してもらえばええじゃろ」
「うんうん、みんなに来てもらいたいからね!」
レオはニコニコして言う。
「そうと決まれば、お父様に話してくるわ!」
オディーヌは元気に立ち上がり、レヴィアにつなげてもらった空間から王宮へと入って行った。
◇
その日の午後、一行は王宮におもむいた。
豪奢な会議室に通され、メイドが紅茶を丁寧にサーブしていく。薄い純白の気品漂うティーカップには、可愛い赤い花の装飾が施されていた。きっと名のある職人の手による物だろう。
レオは静かに紅茶を飲みながら、何度も王様に頼む事を思い出し、確認する。
手の込んだ刺繍が施されたレースのカーテンには柔らかな日差しが当たり、室内をふんわりと照らしていた。
シアンはお茶菓子のクッキーを美味しそうに食べ、ポリポリという音が静かな室内に響く……。
ほどなくして王様が現れた。
「ようこそお越し下された。娘も世話になっていて申し訳ない」
王様は席に着くと一同を見回しながら威厳のある声で切り出した。
「オディーヌには助けてもらっています」
レオはそう言ってニコッと笑った。
王様は小さな少年、レオが答えたことにちょっと驚いて言う。
「それで今日は何やら提案があるとか……」
「スラムの人たちを僕たちの国で引き取りたいんですが、いいですか?」
レオはニコッと笑って言った。
「え!? あの人たちを?」
「そうです、そうです。まずこれを見てください」
レオがそう言うと、オディーヌがパソコンで街の動画を見せた。
「な、なんだ……、これは……」
驚く王様。
「ドラゴンの領地にこういう街を作りました。ここの住民としてスラムの人たちを呼び寄せたいのです」
「ちょ、ちょっと待って、この高い建物は何かね?」
「あぁ、この一番高いのがオフィスビルで、低いビル群がタワマン、住居です」
「ほわぁ……。こんなのどうやって建てたの?」
王様は圧倒されながらレオに聞いた。
「シアンがエイッて建てたんです」
「きゃははは!」
シアンはうれしそうに笑った。
王様はシアンの方を向いてただ茫然と見つめていた。
「お父様、スラムの人たちを引き取るのは、ニーザリにとってもいい事でしょ?」
「それはそうだが……。それには安全保障条約とか脅威にならない保証を得ないと……」
王様は困惑した。こんなオーバーテクノロジーを実現するドラゴンの国とどう付き合ったらいいのか皆目見当がつかなかったのだ。
「別にニーザリを攻めたりせんよ。条約なら問題ない。レオ、ええじゃろ?」
「うん、僕は大丈夫」
「ちょっと待って、君が意思決定者なのか?」
王様が驚いてレオを見る。
「あ、自己紹介がまだでしたね。この国、アレグリスの国王のレオです」
そう言ってレオはニコッと笑った。
「こ、国王……?」
唖然とする王様。
前代未聞の恐るべき国を率いる存在が、まだ幼いこの子供だという事実に、王様は困惑する。この少年との付き合い方がニーザリの将来をも左右するのだ。王様はただ茫然とレオを見つめた。
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