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3-3. 都市計画

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「で? これどうするんですか?」
 オディーヌがシアンに聞く。
 眼下にはボコボコに荒らされた地面が広がっていた。
「これは……うぅん……」
 レヴィアもその無残な姿に引いている。

「大丈夫、こうするんだよ」
 シアンはそう言うと、両手を地面に向けて、
「クリアグランド!」
 と、叫んだ。
 すると、閃光が走り、天も地も激しい光に覆われ、レオたちはたまらず目を覆った。
 ズン! ズン! と激しい重低音が響き渡り、コテージもビリビリと震える。
 しばらくして光が収まり、レオたちが恐る恐る様子を見ると、十キロ四方のボコボコの荒れ地は真ったいらの更地となっていた。
「へ?」「え?」「うわぁ!」
 驚く三人。
「これで完璧でしょ?」
 シアンはうれしそうに言った。
「最初から……、これで良かったのでは?」
 レヴィアは肩を落としながら言った。
「うーん、コマンド一発ってロマンが無いんだよねー」
 首をかしげるシアン。
 レヴィアは目をつぶり、首を振った。

「あそこはクレーターが残ってるよ」
 レオが指さす。
「あそこは湖にするんだ。水源近いからあそこに水をためると便利そう」
 と、シアンは答えた。
 確かに削られた山のガケからは水が湧き出し、クレーターに流れ込んでいくのが見える。
「じゃあ、クモスケ湖だね!」
 レオはうれしそうに言った。
「あんな奴の名前なんか付けなくていいよ!」
 シアンはプリプリしながら答える。
「じゃあ、あしの湖?」
「うーん……、まぁ、レオが好きに決めて」
 シアンは興味なさそうだった。
「よーし、じゃぁ『脚の湖』で!」
「変な名前……」
 オディーヌは渋い顔でつぶやく。

    ◇

「島はどうするんですか?」
 レヴィアはシアンに聞いた。
 シアンはニコッと笑うと、海の方に両手を向けて、
「デヴアイラン!」
 と叫んだ。すると、海がいきなり盛り上がっていく。やがて、津波が辺りの海岸を洗い、同時に五キロ四方ほどの広大な四角い埋め立て地がせりあがって、現れた。
 
「うわぁ! もう何でもアリだね……」
 レオが驚いて言う。
「我のやる事、ない気がするのう……」
 レヴィアは首を振りながらつぶやいた。

「何言ってんの、これからが大変だよ! 上下水道、道路に橋に建物! やる事いっぱい!」
 シアンはうれしそうに言った。
 そして、コテージを地面に着陸させる。
 丸太でできた素朴なコテージはスーッと地面の方に下りてくると、速度を落としながら……でも最後は派手に地面とぶつかってズン! と音を立てて大きく揺れた。

 レオとオディーヌは外に駆け出す。
 茶色の地面はどこまでも真っ平に広大な平野を形作っていた。
「うわ――――!」「すごぉい!」
 二人は目をキラキラさせて辺りを見回し、両手をあげて、
「ここが僕らの国だ!」「やった――――!」
 と、叫んだ。
 まだ何もないただ広いだけの土地だったが、二人には夢のいっぱい詰まった希望の大地に見える。ここに多くの人が夢を紡ぐ希望の王国を打ち立てるのだ。
 レオもオディーヌもうれしくてうれしくて、手を繋いでピョンピョンと飛び跳ねた。

       ◇

 シアンは棒で地面にガリガリと四角を二つ描いて言った。
「はい、王様に大臣! 区画を決めてね~」
「区画?」
 レオが首をかしげると、オディーヌは、
「土地の使い方ってことよね? 住宅地とか商業地とか……」
「そうそう、島の方は工業と貿易、こっち側は農地、住宅地、商業地、公園かな?」
 シアンは棒で地面をつつきながら言う。
「なるほど、じゃあ、住宅は海沿いに……」
 レオがそう言うと、
「海沿いは風が強いからおすすめせんぞ」
 と、レヴィアが突っ込んだ。
「うーん、じゃ、公園?」
 レオがそう言いながら、ガリガリと棒で線を引いて『こうえん』と書いた。
「次は商業地かしら?」
「じゃ、この辺はお店とかだね」
 レオは商業地を書き足した。
「その周りが住宅地で、周辺は公園作って、残りは全部農地……かしら?」
 オディーヌは、首をかしげながら言う。
「良いと思うぞ。じゃあ、道を引いてごらん」
「道? うーん、どう引いたらいいんだろう……」
「貸して!」
 そう言うと、オディーヌは棒を手に取り、大胆に一本、ガリガリと二つの四角を貫く線を描いた。
「これが幹線道路。昨日見た国道十五号線みたいな道よ!」
 自信たっぷりにそう言った。

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