27 / 65
2-11. ドラゴン遊覧飛行
しおりを挟む
「さて、せっかく来たんだから東京を案内してあげよう」
そう言って、シアンはみんなを引き連れて屋上へと移動した。
地上二百三十メートルに吹く風はさすがに強かったが、レオもオディーヌもうれしそうに三百六十度の夜景のパノラマを堪能する。
「じゃぁ、レヴィア、僕たち乗せて飛んでよ」
無茶振りするシアン。
「え!? こ、ここでですか?」
レヴィアは観光客がそれなりにいる屋上を見回して言った。
「大丈夫、大丈夫。飛び立っちゃえばこっちのもんだよ」
「我が乗せなくたって、普通に飛べばいいじゃないですか!」
「僕が乗りたいんだよ」
シアンはニコニコしながら言った。
レヴィアは目をつぶり、大きく息をつくと、
「……。じゃあ、すぐに乗ってくださいよ」
そう言って少し離れると、ボン! と爆発音を放って巨大なドラゴンへと戻った。厳ついウロコに巨大なトゲトゲ。鋭い爪に光る牙。それはスタイリッシュな東京にいきなり現れた異質な怪物だった。
「キャ――――!」「うわぁ!」「ば、化け物だぁ!」
辺りが騒然とする。
「きゃははは! やっぱりレヴィアはこうじゃないと!」
うれしそうなシアン。
「いいから早く乗ってください!」
レヴィアの重低音の声が響く。
シアンはレオとオディーヌを抱えると、ヒョイッとレヴィアの背中に飛び乗った。
「出発進行!」
シアンは叫ぶ。
レヴィアはバサッバサッと巨大な翼を大きくはためかせると、一気に夜空へとジャンプして離陸した。
「うわぁ!」「きゃあ!」
レオとオディーヌは背中のウロコのトゲになっているところにしがみつき、振り落とされないように必死に耐える。
「飛び立ったぞ――――!」「なんだあれは!?」
騒然とする屋上の人たちをしり目に、バサッバサッとさらに翼を羽ばたかせ一気に高度を上げるレヴィア。
東京に突如現れた、ファンタジーな怪物の軽やかな身のこなしに見る者は言葉を失い、ただ夜空に飛び去って行くさまを呆然と見ていた。
「きゃははは! いいね、いいね!」
シアンは大喜びである。
「落ちないで下さいよ!」
レヴィアは重低音を響かせながら不機嫌そうに言う。
どんどんと高度を上げていくと、旅客機が飛んでいるのが見えた。羽田空港への着陸体制に入っている。
「お、挨拶しよう!」
シアンははしゃいで言う。
「え!? 危ないですよ」
「いいから、いいから!」
そう言うとシアンは、レヴィアの巨体をボウッと光らせて勝手に操作し始めた。そして旅客機へと舵を切った。
「うわ――――!」
制御を奪われたレヴィアは喚く。
ほどなく旅客機のそばまでやってきて編隊飛行となる。灯りの点った窓がズラッと並び、乗客の姿が見える。
「うわっ! 人が乗ってるわ!」
オディーヌが驚く。
「この星では、遠くへ行くときはこうやって飛行機で行くんだよ」
シアンは乗客に手を振りながら説明する。
「こんな大きなもの、どうやって飛んでるんですか? 魔法?」
「この星には魔法はないよ」
「え!? 魔法がない!?」
「魔法は後付けなんだよね。魔法がある星の方が特殊なんだよ」
オディーヌは絶句した。子供の頃から当たり前のように存在し、便利に使われていた魔法が誰かに後付けされた存在だったとは、想像もしていなかったのだ。
徐々に旅客機に近づいて行くと、乗客もドラゴンに気がついたようで、皆驚き、スマホを向けたり大騒ぎしている。
「シアン様、これ以上はヤバいですよ!」
「じゃあ、次はビルでも見ますか」
そう言って眼下に見えてきた品川の高層ビル群へと舵を切った。
一気に急降下する一行。
「ひぃ!」「きゃぁ!」「おわぁ――――!」
叫ぶ三人をしり目に、
「きゃははは!」
と、シアンは楽しそうに笑いながらさらに加速する。
グングンと迫る高層ビル。
「そりゃー!」
シアンはビルの間を巧みに通過していく。
残業しているフロアでは明かりが灯り、働いている人がパソコンを叩いている。
「この辺はオフィスビルだねー」
そう言いながら地面スレスレを通過し、今度は徐々に高度をあげながら品川駅前を飛ぶ。
帰宅途中の多くのサラリーマンたちはドラゴンに気がつかなかったが、子供が見つけて指さして叫んだ。
「ママ! 恐竜だ!」
母親は何を言っているのかと、呆れたように指の先をたどりながら、
「何言ってるの、恐竜なんていない……」
と言いかけて固まった。
シアンは母子連れに手を振り、
「ひぃ!」
と叫ぶ母親のすぐ上を、ビュオォと轟音をあげ、通過していく。
「ヒャッハー!」
シアンはそう叫ぶと今度は一気に高度を上げる。
「ママ! 僕もあれ乗りたい!」
子供が叫んだが、母親は言葉を失っていた。
轟音に気がついたサラリーマンたちは、ドラゴンの巨体が飛び去っていくのを見ながら騒然とする。
みんな足を止め、ザワザワとするが、もうドラゴンはスマホでは撮れないほどに小さくなっていった。
そう言って、シアンはみんなを引き連れて屋上へと移動した。
地上二百三十メートルに吹く風はさすがに強かったが、レオもオディーヌもうれしそうに三百六十度の夜景のパノラマを堪能する。
「じゃぁ、レヴィア、僕たち乗せて飛んでよ」
無茶振りするシアン。
「え!? こ、ここでですか?」
レヴィアは観光客がそれなりにいる屋上を見回して言った。
「大丈夫、大丈夫。飛び立っちゃえばこっちのもんだよ」
「我が乗せなくたって、普通に飛べばいいじゃないですか!」
「僕が乗りたいんだよ」
シアンはニコニコしながら言った。
レヴィアは目をつぶり、大きく息をつくと、
「……。じゃあ、すぐに乗ってくださいよ」
そう言って少し離れると、ボン! と爆発音を放って巨大なドラゴンへと戻った。厳ついウロコに巨大なトゲトゲ。鋭い爪に光る牙。それはスタイリッシュな東京にいきなり現れた異質な怪物だった。
「キャ――――!」「うわぁ!」「ば、化け物だぁ!」
辺りが騒然とする。
「きゃははは! やっぱりレヴィアはこうじゃないと!」
うれしそうなシアン。
「いいから早く乗ってください!」
レヴィアの重低音の声が響く。
シアンはレオとオディーヌを抱えると、ヒョイッとレヴィアの背中に飛び乗った。
「出発進行!」
シアンは叫ぶ。
レヴィアはバサッバサッと巨大な翼を大きくはためかせると、一気に夜空へとジャンプして離陸した。
「うわぁ!」「きゃあ!」
レオとオディーヌは背中のウロコのトゲになっているところにしがみつき、振り落とされないように必死に耐える。
「飛び立ったぞ――――!」「なんだあれは!?」
騒然とする屋上の人たちをしり目に、バサッバサッとさらに翼を羽ばたかせ一気に高度を上げるレヴィア。
東京に突如現れた、ファンタジーな怪物の軽やかな身のこなしに見る者は言葉を失い、ただ夜空に飛び去って行くさまを呆然と見ていた。
「きゃははは! いいね、いいね!」
シアンは大喜びである。
「落ちないで下さいよ!」
レヴィアは重低音を響かせながら不機嫌そうに言う。
どんどんと高度を上げていくと、旅客機が飛んでいるのが見えた。羽田空港への着陸体制に入っている。
「お、挨拶しよう!」
シアンははしゃいで言う。
「え!? 危ないですよ」
「いいから、いいから!」
そう言うとシアンは、レヴィアの巨体をボウッと光らせて勝手に操作し始めた。そして旅客機へと舵を切った。
「うわ――――!」
制御を奪われたレヴィアは喚く。
ほどなく旅客機のそばまでやってきて編隊飛行となる。灯りの点った窓がズラッと並び、乗客の姿が見える。
「うわっ! 人が乗ってるわ!」
オディーヌが驚く。
「この星では、遠くへ行くときはこうやって飛行機で行くんだよ」
シアンは乗客に手を振りながら説明する。
「こんな大きなもの、どうやって飛んでるんですか? 魔法?」
「この星には魔法はないよ」
「え!? 魔法がない!?」
「魔法は後付けなんだよね。魔法がある星の方が特殊なんだよ」
オディーヌは絶句した。子供の頃から当たり前のように存在し、便利に使われていた魔法が誰かに後付けされた存在だったとは、想像もしていなかったのだ。
徐々に旅客機に近づいて行くと、乗客もドラゴンに気がついたようで、皆驚き、スマホを向けたり大騒ぎしている。
「シアン様、これ以上はヤバいですよ!」
「じゃあ、次はビルでも見ますか」
そう言って眼下に見えてきた品川の高層ビル群へと舵を切った。
一気に急降下する一行。
「ひぃ!」「きゃぁ!」「おわぁ――――!」
叫ぶ三人をしり目に、
「きゃははは!」
と、シアンは楽しそうに笑いながらさらに加速する。
グングンと迫る高層ビル。
「そりゃー!」
シアンはビルの間を巧みに通過していく。
残業しているフロアでは明かりが灯り、働いている人がパソコンを叩いている。
「この辺はオフィスビルだねー」
そう言いながら地面スレスレを通過し、今度は徐々に高度をあげながら品川駅前を飛ぶ。
帰宅途中の多くのサラリーマンたちはドラゴンに気がつかなかったが、子供が見つけて指さして叫んだ。
「ママ! 恐竜だ!」
母親は何を言っているのかと、呆れたように指の先をたどりながら、
「何言ってるの、恐竜なんていない……」
と言いかけて固まった。
シアンは母子連れに手を振り、
「ひぃ!」
と叫ぶ母親のすぐ上を、ビュオォと轟音をあげ、通過していく。
「ヒャッハー!」
シアンはそう叫ぶと今度は一気に高度を上げる。
「ママ! 僕もあれ乗りたい!」
子供が叫んだが、母親は言葉を失っていた。
轟音に気がついたサラリーマンたちは、ドラゴンの巨体が飛び去っていくのを見ながら騒然とする。
みんな足を止め、ザワザワとするが、もうドラゴンはスマホでは撮れないほどに小さくなっていった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
元構造解析研究者の異世界冒険譚
犬社護
ファンタジー
主人公は持水薫、女30歳、独身。趣味はあらゆる物質の立体構造を調べ眺めること、構造解析研究者であったが、地震で後輩を庇い命を落とす。魂となった彼女は女神と出会い、話をした結果、後輩を助けたこともあってスキル2つを持ってすぐに転生することになった。転生先は、地球からはるか遠く離れた惑星ガーランド、エルディア王国のある貴族の娘であった。前世の記憶を持ったまま、持水薫改めシャーロット・エルバランは誕生した。転生の際に選んだスキルは『構造解析』と『構造編集』。2つのスキルと持ち前の知能の高さを生かし、順調な異世界生活を送っていたが、とある女の子と出会った事で、人生が激変することになる。
果たして、シャーロットは新たな人生を生き抜くことが出来るのだろうか?
…………………
7歳序盤まではほのぼのとした話が続きますが、7歳中盤から未開の地へ転移されます。転移以降、物語はスローペースで進んでいきます。読者によっては、早くこの先を知りたいのに、話が進まないよと思う方もおられるかもしれません。のんびりした気持ちで読んで頂けると嬉しいです。
…………………
主人公シャーロットは、チートスキルを持っていますが、最弱スタートです。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる