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2-3. 王都解放戦線

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 すっかり酔って、調子に乗ってきたレヴィアは、肉に豪快にかぶりつきながらレオに聞いた。
「で、人口は何人にするんじゃ?」
「えっ? ニーザリと同じくらい……かな?」
 そう言ってオディーヌをチラッと見た。
「ニーザリは登録市民が約七万三千人です。奴隷や未登録者を入れると十万人くらいかと……」
 オディーヌは丁寧に説明する。
「ほほう、お主、凄いな。確かにあんなところで王女にしておくのはもったいないのう」
 そう言ってレヴィアはニヤッと笑った。
「十万人なら……、そうじゃな、ワシの家の東側の山地をならして平地にしたら入るじゃろう」
「それ、どこ?」
 すっかり酔っぱらって眠そうなシアンが聞いてくる。
「ここから南西に五百キロくらいの……」
「あー、宮崎ね」
 そう言ってシアンはあくびをした。
「ミヤザキ……、ですか?」
 オディーヌは怪訝けげんそうな顔をして聞く。
「あー、シアン様の星ではそう呼ぶんじゃよ」
「台風がたくさん来るけど暖かくていい所だよ」
 シアンが横から言う。
「た、台風……。大丈夫なの?」
 レオは不安げに聞いた。
「ワハハ、単に風が強いだけじゃ。すぐに慣れる」
「はぁ……、でそのミヤザキの山をならす……ってことですか?」
「そうじゃ、十キロ四方程度をならして、出た土砂で海に人工島を作る」
「え!? そんなことできるんですか!?」
「このくらいシアン様なら一瞬じゃよ」
「レヴィア、よろしく」
 シアンは眠そうに、うつらうつらしながら言う。
「えっ? シアン様も手伝ってくださいよぉ」
 懇願するレヴィア。
「星消す方が簡単なんだよね……」
 そう言ってシアンはあくびをした。
「……。わかりました……。とほほほ」

 と、その時だった。いきなりシアンとレヴィアはカッと目を見開くと、それぞれ通りの方に素早く腕を掲げ、何かをつぶやいた。
 金色の魔法陣が二つ、空中にブワッと展開され、その直後何かが通りで爆発する。耳をつんざく爆発音が街中に響き、辺りのものがことごとく破壊されていった。いきなりやってきた地獄絵図に皆パニックに陥る。
「うわぁ!」「キャ――――!」
 さらに街灯の柱が倒れてきてレオ達のテーブルを真っ二つに割った。
「ひぃ!」「うぉぉ!」
 料理もジョッキも樽も全部吹っ飛んでいく。
 辺り一帯阿鼻叫喚の惨状に叩き落とされた。通りの方では多くの人が倒れている。

「レヴィアは救護、僕はぶちのめしてくる」
 シアンはそう言うと、茜色がほのかに残る夕闇の空へツーっと飛び上がった。そして、目をつぶってジーっと何かを感じ取る。
 風が吹き、舞い上がった爆煙がゆっくりと流れていった……。
「みーつけた!」
 シアンはうれしそうにそう言うと、街外れの方向に両手を向け巨大な真紅の魔法陣を展開した。夜空にひときわ禍々しく輝く魔法陣に、レオとオディーヌは圧倒され戦慄を覚える。
 直後、魔法陣が閃光を放って夜空をまばゆく照らし、青白い激烈な光線が魔法陣から一直線にほとばしった。そして、遠くの空がまるで巨大な雷が落ちたように激しく光り輝く。
「きゃははは!」
 一帯にシアンの笑い声が響いた。
 レオとオディーヌはまるで戦場に来たような恐るべき力の行使に言葉を失っていた。しかし、周囲の人はその様子に気が付かない様だった。何らかの認識阻害をかけているのだろう。

 ズン!
 激しい爆発音が街全体に轟いた。
 シアンは満足そうにうなずくと、辺りを飛び回って被害状況を見て回っていく。

「一体何があったの?」
 レオはオディーヌに聞く。
「多分、テロリストによるテロだわ」
 オディーヌは、通りに倒れている多くの人たちを見て声を震わせながら言った。
「テロリスト?」
「王都では今、『王都解放戦線』というテロリストが暗躍しているって聞いたわ。王都の支配者層に対して反感を持っている人がこうやって無差別に市民を襲うのよ」
「一体何のために?」
「自分たちの主義主張が認められないことに怒りを覚えて、暴れて注目を集めたいんじゃないかしら?」
「そんな子供みたいなこと……」
「これが国というシステムの現実よ。私たちも国を作るということは、テロリストと対峙たいじしなくちゃならなくなる日も来るかもしれないわ」
 オディーヌは青い顔をして言った。
「そうか……。でも、やめないよ……」
 レオはキュッと歯を食いしばると立ち上がり、自分ができそうなことを探した。
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