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相対化する人類
53.天空の城、降臨
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しかし、とんでもない事になってしまった。
この地球がVRゲームの様な仮想現実だったとは……。
俺の身体も心も海王星の深くにある光コンピューターの制御の結果だというのはいまだに実感はわかないが、ポリゴン姿にさせられた以上認めざるを得ない。
それにそう考えればクリスの奇跡や行動は辻褄が合う。
メンバー達は今あった事をどう考えたらいいのか分からない、といった感じで皆押し黙っている。
とりあえず、このままオフィスで黙ってても仕方ないので一旦解散として、俺は動かなくなったシアンをソファーに横たえた。
クリスもシアンも横たわったままだが、医者に診せてどうにかなるような物でもない。
ここは仮想現実空間なのだ。
実は死すらあまり意味のない事なのかもしれない。
考えないといけない事が多すぎる。
俺は応接のソファーに横たわりながら再度起こったことを整理する。
この世界はジグラートと呼ばれる、海王星深くに設置された巨大コンピューターが計算して作っている仮想現実空間。
この俺の肉体も単なるデータの産物らしい。VRゲームのアバターだな。
しかし、なぜそんな大掛かりな面倒くさい事をやるんだ?
海王星人はそんなに暇人なのか?
シアンの話だとクリスが海王星人で地球を管理していた訳だろ?
クリスは何を考えて地球を管理していたんだろう?
神になりたかった? そんな感じしなかったけどなぁ……。
海王星人が何考えてこんな事をしてるのかは想像を絶するので答えが出ない。
で、この俺の思考はどうなるんだ?
これもジグラートの計算上作られた千数百億個の脳細胞の動きのシミュレーションの結果……か。
いやいや、シアンは俺をポリゴンにして見せた。つまり、海王星人は厳密なシミュレーションにこだわっている訳ではなさそうだ。かなり巧妙に端折ってるはずだ。
何しろ月ですら見ない時は消えてるんだから。
と、なると、思考も脳細胞のシミュレートではなく、直接光コンピューターで計算してるのだろう。脳は飾りだな。
でも、一応辻褄合わせはしないとならないから頭蓋骨を開くと脳は見えるのだろう。そして、顕微鏡で観察したら神経線維も見える。でも、頭を閉じた瞬間にすべて消える。
医療機器のCTスキャンで観測すれば脳は浮かび上がってくるけど、CTから降りたらまた消える。
脳血管に動脈瘤がある人は一定確率で破裂し、一定確率で死ぬ。手術が間に合った人は脳の一部機能が欠損した状態からシミュレーションが再スタート。
でも、当然そう言うカラクリに気づいちゃう人もたまに出るよね。それは……義兄さんみたいに記憶を消して終わり……だな。
両手を見てみる。
血管に指紋……実に精巧にできてるが、さっきポリゴンにされた時の手を覚えてる俺からしたら、もはやフェイクにしか見えない。
うまく誤魔化してますね!
俺達が作ったシアンがどんどんいろんな発明をして、コンピューターを高度化して行ったら何十万年もしたらそんなのも作れちゃうだろう。
この世は仮想現実であるというシミュレーション仮説と言うのは随分前から言われていて、科学者によってはシミュレーションの方が妥当性が高いと言っていたな。
宇宙に他の知的生命体が居ない、痕跡一つ見つからないというのはシミュレーションだからとしか説明がつかないらしい。
うーん、しかしなぁ。
自分がゲームのアバターと同じだと言われて、これをそのまま納得できる人間なんて居るのか?
俺はこの先どう生きて行けばいい……。
アバターの人生に意味なんてあるのか?
由香ちゃんも美奈ちゃんもみんなアバター……。
グルグルといろんなことを考えているうちに、俺はどうやら眠ってしまっていたらしい。
◇
スマホからマリンバの音がけたたましく鳴り響いた。
う?? 由香ちゃんだ。
目をこすりながら出ると
「誠さん、大変よ! TV、TVすぐ点けて!」
随分慌てている。
寝ぼけ眼でTVのリモコンを探して点けてみる。
そこにはラピ〇タが映っていた。
「相模湾上空に謎の飛行物体が出現しています!」
「現在政府は緊急の対策会議を招集し、情報の収集と対応策について協議しています!!」
アナウンサーが緊迫した声で話している。
望遠レンズで捉えているだろう映像は、空に浮かぶお城を映していた。
その城はラピ〇タを実写化したと言うよりは、空に浮かぶ21世紀風にサイバーな構造物でなんと言うか、カッコいい。
きっとシアンなりに凝ったつもりなのだろう。
「あー、シアンの奴、本当にやりやがったな」
俺が寝起きのしゃがれた声で話すと
「誠さん、どうしよう!?」
「どうしようって言ってもクリスも倒れちゃったし、俺達にできる事なんてあるのかな?」
「でも、シアンは私たちの子よ! このまま放置はできないわ!」
「うーん、分かった。ちょっと考えてみるよ」
そう言って電話を切った。
ネットでも情報を集めてみると
「ラピ〇タは本当にあったんだ!!!」
「ラピ〇タは相模湾にいる。聞こえないのか? このまま進め。必ず入口はある!」
SNSの連中はみんな浮かれている。お前ら危機感無さすぎだろ。
データを分析してるページでは、200mくらいのサイズの城が相模湾の上空2000mに留まっているという分析がされている。
飛行機やヘリコプターが近づくと突風で危険な状態になり、結果皆引き返しているとの事だ。
近くから撮った映像を分析すると、城の中では黄色いネズミが多数動いていたという報告もあり、シアンは本気でテーマパーク化をしようとしているらしい。
今後アニメに出て来たような構造物が次々に登場するのだろう。
一体世界はどうなってしまうのか。
俺は頭を抱えた。
そもそも俺がシアンを作らなければこんな事態にはなっていない訳であり、責任は凄く感じる。でも、この世界が仮想現実だったというのは俺のせいじゃないしなぁ。
どうも思考が定まらない。
ただ、何か見落としているような感覚がする。
俺には何かやるべき事があるんじゃないのか?
そもそも世界が何かおかしくなったのは……未来の由香ちゃんを呼び出した時だ。
未来の由香ちゃんはヤバい奴がメンバーに居ると言っていた。
それはシアンか?
いや、シアンならメンバーとは呼ばないだろう。
しかし、他に変な動きをしている人はいないしなぁ……。
美奈ちゃんは自称『ヤバい人』だが、美奈ちゃんがこの有事に何か動いているわけでもないしなぁ……。
ここに来てようやく思い出した。
「第三岩屋だ!」
俺は一体何をやってたんだ。
クリスが倒れたら第三岩屋へ行かなきゃいけないじゃないか!
こんな事やってる場合じゃない、今すぐいかなきゃ!
あ、でも大潮の干潮じゃなきゃ入れないんだった……。
潮見表! 潮見表!
俺はネットで調べる。『江ノ島 潮見表』っと
今日は大潮! やった! えーと……干潮は14:34!?
もうお昼だ! 時間が無い。
岩屋へ行くなら胸まで防水の胴長が必須だな……。後はロープとか懐中電灯とか軍手とか……うーん。
またスマホが鳴った。由香ちゃんだ。
「誠さん、大変! どうも自衛隊が出動するみたいよ!」
「なんだって? 自衛隊なんか使ったってシアンには効かないぞ。これ以上事を大きくするとシアンの奴何しでかすか分からないってのに!」
「ど、どうしよう??」
由香ちゃんはオロオロしている。
「実はこれからクリスを助けに行こうと思ってるんだ、来る?」
「え? もちろん行く!」
俺は江ノ島に行くことを話し、田町駅に集合する事にした。
この地球がVRゲームの様な仮想現実だったとは……。
俺の身体も心も海王星の深くにある光コンピューターの制御の結果だというのはいまだに実感はわかないが、ポリゴン姿にさせられた以上認めざるを得ない。
それにそう考えればクリスの奇跡や行動は辻褄が合う。
メンバー達は今あった事をどう考えたらいいのか分からない、といった感じで皆押し黙っている。
とりあえず、このままオフィスで黙ってても仕方ないので一旦解散として、俺は動かなくなったシアンをソファーに横たえた。
クリスもシアンも横たわったままだが、医者に診せてどうにかなるような物でもない。
ここは仮想現実空間なのだ。
実は死すらあまり意味のない事なのかもしれない。
考えないといけない事が多すぎる。
俺は応接のソファーに横たわりながら再度起こったことを整理する。
この世界はジグラートと呼ばれる、海王星深くに設置された巨大コンピューターが計算して作っている仮想現実空間。
この俺の肉体も単なるデータの産物らしい。VRゲームのアバターだな。
しかし、なぜそんな大掛かりな面倒くさい事をやるんだ?
海王星人はそんなに暇人なのか?
シアンの話だとクリスが海王星人で地球を管理していた訳だろ?
クリスは何を考えて地球を管理していたんだろう?
神になりたかった? そんな感じしなかったけどなぁ……。
海王星人が何考えてこんな事をしてるのかは想像を絶するので答えが出ない。
で、この俺の思考はどうなるんだ?
これもジグラートの計算上作られた千数百億個の脳細胞の動きのシミュレーションの結果……か。
いやいや、シアンは俺をポリゴンにして見せた。つまり、海王星人は厳密なシミュレーションにこだわっている訳ではなさそうだ。かなり巧妙に端折ってるはずだ。
何しろ月ですら見ない時は消えてるんだから。
と、なると、思考も脳細胞のシミュレートではなく、直接光コンピューターで計算してるのだろう。脳は飾りだな。
でも、一応辻褄合わせはしないとならないから頭蓋骨を開くと脳は見えるのだろう。そして、顕微鏡で観察したら神経線維も見える。でも、頭を閉じた瞬間にすべて消える。
医療機器のCTスキャンで観測すれば脳は浮かび上がってくるけど、CTから降りたらまた消える。
脳血管に動脈瘤がある人は一定確率で破裂し、一定確率で死ぬ。手術が間に合った人は脳の一部機能が欠損した状態からシミュレーションが再スタート。
でも、当然そう言うカラクリに気づいちゃう人もたまに出るよね。それは……義兄さんみたいに記憶を消して終わり……だな。
両手を見てみる。
血管に指紋……実に精巧にできてるが、さっきポリゴンにされた時の手を覚えてる俺からしたら、もはやフェイクにしか見えない。
うまく誤魔化してますね!
俺達が作ったシアンがどんどんいろんな発明をして、コンピューターを高度化して行ったら何十万年もしたらそんなのも作れちゃうだろう。
この世は仮想現実であるというシミュレーション仮説と言うのは随分前から言われていて、科学者によってはシミュレーションの方が妥当性が高いと言っていたな。
宇宙に他の知的生命体が居ない、痕跡一つ見つからないというのはシミュレーションだからとしか説明がつかないらしい。
うーん、しかしなぁ。
自分がゲームのアバターと同じだと言われて、これをそのまま納得できる人間なんて居るのか?
俺はこの先どう生きて行けばいい……。
アバターの人生に意味なんてあるのか?
由香ちゃんも美奈ちゃんもみんなアバター……。
グルグルといろんなことを考えているうちに、俺はどうやら眠ってしまっていたらしい。
◇
スマホからマリンバの音がけたたましく鳴り響いた。
う?? 由香ちゃんだ。
目をこすりながら出ると
「誠さん、大変よ! TV、TVすぐ点けて!」
随分慌てている。
寝ぼけ眼でTVのリモコンを探して点けてみる。
そこにはラピ〇タが映っていた。
「相模湾上空に謎の飛行物体が出現しています!」
「現在政府は緊急の対策会議を招集し、情報の収集と対応策について協議しています!!」
アナウンサーが緊迫した声で話している。
望遠レンズで捉えているだろう映像は、空に浮かぶお城を映していた。
その城はラピ〇タを実写化したと言うよりは、空に浮かぶ21世紀風にサイバーな構造物でなんと言うか、カッコいい。
きっとシアンなりに凝ったつもりなのだろう。
「あー、シアンの奴、本当にやりやがったな」
俺が寝起きのしゃがれた声で話すと
「誠さん、どうしよう!?」
「どうしようって言ってもクリスも倒れちゃったし、俺達にできる事なんてあるのかな?」
「でも、シアンは私たちの子よ! このまま放置はできないわ!」
「うーん、分かった。ちょっと考えてみるよ」
そう言って電話を切った。
ネットでも情報を集めてみると
「ラピ〇タは本当にあったんだ!!!」
「ラピ〇タは相模湾にいる。聞こえないのか? このまま進め。必ず入口はある!」
SNSの連中はみんな浮かれている。お前ら危機感無さすぎだろ。
データを分析してるページでは、200mくらいのサイズの城が相模湾の上空2000mに留まっているという分析がされている。
飛行機やヘリコプターが近づくと突風で危険な状態になり、結果皆引き返しているとの事だ。
近くから撮った映像を分析すると、城の中では黄色いネズミが多数動いていたという報告もあり、シアンは本気でテーマパーク化をしようとしているらしい。
今後アニメに出て来たような構造物が次々に登場するのだろう。
一体世界はどうなってしまうのか。
俺は頭を抱えた。
そもそも俺がシアンを作らなければこんな事態にはなっていない訳であり、責任は凄く感じる。でも、この世界が仮想現実だったというのは俺のせいじゃないしなぁ。
どうも思考が定まらない。
ただ、何か見落としているような感覚がする。
俺には何かやるべき事があるんじゃないのか?
そもそも世界が何かおかしくなったのは……未来の由香ちゃんを呼び出した時だ。
未来の由香ちゃんはヤバい奴がメンバーに居ると言っていた。
それはシアンか?
いや、シアンならメンバーとは呼ばないだろう。
しかし、他に変な動きをしている人はいないしなぁ……。
美奈ちゃんは自称『ヤバい人』だが、美奈ちゃんがこの有事に何か動いているわけでもないしなぁ……。
ここに来てようやく思い出した。
「第三岩屋だ!」
俺は一体何をやってたんだ。
クリスが倒れたら第三岩屋へ行かなきゃいけないじゃないか!
こんな事やってる場合じゃない、今すぐいかなきゃ!
あ、でも大潮の干潮じゃなきゃ入れないんだった……。
潮見表! 潮見表!
俺はネットで調べる。『江ノ島 潮見表』っと
今日は大潮! やった! えーと……干潮は14:34!?
もうお昼だ! 時間が無い。
岩屋へ行くなら胸まで防水の胴長が必須だな……。後はロープとか懐中電灯とか軍手とか……うーん。
またスマホが鳴った。由香ちゃんだ。
「誠さん、大変! どうも自衛隊が出動するみたいよ!」
「なんだって? 自衛隊なんか使ったってシアンには効かないぞ。これ以上事を大きくするとシアンの奴何しでかすか分からないってのに!」
「ど、どうしよう??」
由香ちゃんはオロオロしている。
「実はこれからクリスを助けに行こうと思ってるんだ、来る?」
「え? もちろん行く!」
俺は江ノ島に行くことを話し、田町駅に集合する事にした。
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