キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきた!?

月城 友麻

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人類を継ぐ者

33.未来からの神託

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 二日ほどして由香ちゃんの歓迎会を開く事にした。
 赤ちゃんも安定したので、クリスもつきっきりで無くても良くなり、参加できる。

 でも、俺も由香ちゃんも血液を提供する関係上お酒は飲めない。
 ちょっと残念。
 
 せめて食事は美味しい物にしたいので ふぐ料理屋を選んだ。
 
 みんな揃って乾杯である。
「Hey Guys! Yuka-chan will officially join us! (由香ちゃんが入社する事になりました!)」
「カンパーイ!」「Cheers!」「カンパーイ!」「Cheers!」「Cheers!」「Cheers!」

 俺はジンジャーエールで由香ちゃんのグラスに合わせる。

「これからよろしくね、期待してるよ!」
「お役に立てるかドキドキなんです……。でも、頑張ります!」
 いい笑顔だ。

 ビール片手に由香ちゃんがやってくる。
「せんぱーい、もう逃げられませんよ!」
「大丈夫! もう、決めたの!」
 由香ちゃんは力強く言い切る。
 
「てっさでございます」
 店員がふぐの刺身を持ってくる。
 大きな皿に薄い刺身が綺麗に並べられて、まるで大きな花の様だ。

「Oh! サシミ!」
 マーカスが感激して叫び声をあげる。

「Sashimi!」「Sashimi!」「Sashimi!」

 お前らうるさいよ

「こんな立派なてっさ、初めてですぅ」
 由香ちゃんがウットリとしている。

「いただき!」
 美奈ちゃんは一気に5,6枚取っていく

 プリップリの ふぐをポン酢につけて一気食いである

「う~~~、うま~~~!!!」
 感動で顔がクシャクシャである。

「美奈ちゃんズル~い!」

「そうだぞ! 取っていいのは3枚まで!」

 そう言ってる間にマーカス達が10枚くらいずつ持っていく

「あ~、おまえら!!!」

 ダメだ、制止するより取った方がいい。

「由香ちゃんもどんどん取って!」
「はい!」

 クリスはそんな様子を楽しそうに眺めている。

「クリスも早く取って! 無くなっちゃうよ!」
「…。そうだな、少しいただくか……」

 大皿一杯のてっさは一瞬でなくなってしまった。

 何なんだお前らは!

「うふふ、楽しい会社ですねぇ」
 美奈ちゃんは楽しそうである。

 由香ちゃんが声をかける。
「折角だから、誰か呼んであげようか?」
「え? 呼ぶって?」

「もう亡くなっちゃった人で話したい人居ない?」
「え? 死んだ人を呼べるの?」
「そうそう、呼べるのよ~」

 いや、呼ぶのはお前じゃない、クリスだろ!

「え~~、呼べるなら……織田信長かな?」
「え~~~~!? なんで?」

「なんで、って、興味ないですかぁ?」
「無いわよ! 女子大生が興味ある様な人じゃないわ!」
「でも、話したいの!」

 由香ちゃんは決意が固そうだ。『歴女』というんだっけ? 歴史オタクの女子。

「じゃぁ……クリス、織田信長呼べる?」

 美奈ちゃんは恐る恐るクリスに聞く。
 いや、クリスでもそんな昔の人無理なんじゃないかなぁ?

「…。昔の人は……ちょっと大変ですね。でもお祝いですし、頑張って呼んでみましょう」

 クリスは美奈ちゃんの手を取って目を瞑る。
 美奈ちゃんがトランス状態に入った――――

 しばらくして美奈ちゃんが目を開いた。

 美奈ちゃんはゆっくりと部屋の様子を見ると

「なんじゃ、お前らは!」
 いきなり怒り出した。

「織田信長……さんですか?」
 由香ちゃんが恐る恐る聞く。

「ワシの眠りを邪魔したのはおぬしか!」
 なんだかすごい怒ってる。

「あ、初めまして、私、宮田由香と申します。ぜひ、お話しをしたくてですね……」
「お話しじゃと? 小娘の遊びで気軽に呼ぶでないわ!!!」
「あ、いや、遊びというわけでは……」
「不愉快じゃ! 帰る!」
 そう言って美奈ちゃんはがっくりとうなだれた。

 あらら、やはり相手にも話したい意向が無いと難しいな。

「あ~~~」
 由香ちゃんはがっくりしている。

「…。相手が悪かったようですね。他の人にしましょうか?」
 由香ちゃんはショックでうなだれている。
 
「ふぐのから揚げでございます」
 店員が次の皿を持ってきた。

 ふぐはから揚げも美味い。
 皆、無言で貪っている。

 由香ちゃんも無言でゆっくりから揚げを味わっている。

 俺も骨付きのから揚げの肉を剥がしながら考えたが、呼び出す人は結構難しい。
 俺もおばあちゃんを呼び出そうかと思った事もあるが、今更何を話したらいいのか分からない。

 由香ちゃんが顔を上げてクリスに聞く。
「死んだ人じゃなくて、未来の自分と話したり出来ますか?」

 俺は思わず横から言った。
「何言ってんの! 無理に決まって……」
「…。できますよ」

 クリスが事も無げに言うので俺はビックリ!

「え~~~!?」
 なんだよ、クリス、あなたとんでもないな。

「そしたら、死ぬ直前の私を出してください!」
 由香ちゃんが目を輝かせて言う。

 いや、あなた、死ぬ前の自分と何話すのよ?

 俺が絶句していると美奈ちゃんは、
「先輩、すごいチャレンジャーですね! 私だったら無理だわ~」

 離れたところで話を聞いていたマーカスも、目を輝かせながらやってきた。

「Oh! Chris スゴイネ! キョウミシンシン!!」
 神の技を見ようとわざわざ席を移動してやってきた。
 
「じゃ、先輩行きますよ~」
 と、いいながらクリスと手を繋ぐ。

 やがてうなだれて……そして目を開いた――――

「……。うふふ……。この時を……待ってたわ」

 心なしかしわがれた声で美奈ちゃんは口を開いた。
 そして周りを見渡して、

「あはは、みんな若いわ、そう、そうだったわ~」
 と、とても上機嫌である。
 
 由香ちゃんが聞く、
「あなたは私ですか?」

 美奈ちゃんは由香ちゃんをじーっと見て、

「そうよ、あなたの時からず~~~~っと長い、なが~~い戦いを経た後のわ、た、し」
 人差し指を揺らしながら言う。

「私の人生はどうでしたか?」
「ふふっ、最高だったわ~。本当に……。もちろん、あの時はこうしとけば良かったとかいっぱいあるわよ、でも、今はそういう失敗ひっくるめて満足してるのよ」
 そう言って満足げに目を細めた。

「良かった! 何かアドバイスありますか?」
「アドバイス? うーん、これ、言っちゃっていいのかな……」
「え? 何でも言ってくださいよ!」
「すごくすごく言いたいんだけど……。私の時も教えてくれなかったからな。まぁ、お楽しみって事で」
 未来の由香ちゃんはそう言ってニヤッと笑った。

「え――――! ヒントだけ、ヒントだけお願いします!」

 未来の由香ちゃんは少し考え込むと……

「このメンバーの中にヤバい人がいるわ、本当にヤバいの。でも……おっといけない」
「え? クリスの事じゃなくて?」
「ふふふ、ひ・み・つ!」
 そう言って人差し指を口の前で振った。

「え~~っ!」

「そうそう、追い込まれたらクリスの言葉を一字一句しっかりと考えるといいわ」
「そんな事があるの!?」
「ふふっ、そろそろ行かなきゃ」
「え、まって!」
「Good luck!」

 そう言うと美奈ちゃんはガックリとうなだれた――――

 もう行ってしまったようだ。
 静けさが広がる。
 
 由香ちゃんは言われた言葉の意味を、一生懸命反芻しているみたいだ。
 
「ヤバい人って誰だろう?」
 俺はそう言ってクリスを見た。

「…。おかしいな……。そんな事言うはずないんだが……」
 クリスも不思議がっている。
 
「はい、てっちりです。鍋ここ置かしてもらいますね~」
 店員がコンロに大きな鍋を置いて火をつけた。
 
「未来の人から話聞いちゃうと、因果律が狂うから駄目なんじゃないかな?」
 俺はジンジャーエールを飲みながらクリスに聞いた。
 
「…。確かにちょっとやり過ぎだった。今後は止めようと思う」
 そう言ってクリスはジョッキのビールをぐっと空けた。
 本当は未来の俺の話も聞いてみたかったけど、なんだか悪影響出そうだから止めておこうと思う。
 
 てっちりをつつきながら未来の由香ちゃんの言った事を思い出す。

 『ヤバい人』って誰だ……?

 日本側はただの一般人だからエンジニアチームの誰かか?

 でも、ヤバいというだけで悪人という訳でもないんだろう。裏切者が居たとしたら『ヤバい』とは言わない……はず?

 いやー、言うかもな~。

 とは言え由香ちゃんの人生は最高だったわけだから、深層後継者計画もポジティブに推移したと考える方が自然……かな?
 後悔や失敗があるって言ってたからそうとも言い切れないか……。
 
 結局、何も分からんじゃないか!
 
 未来の由香ちゃんはモヤモヤだけを残して去って行った。
 
 
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