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AIの発露
30.二次方程式にキス
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翌日、今度はシアンの論理的思考力を鍛える事にする。
タブレットに簡単なパズルを表示させて正解の所をつつくと餌が出るようにしてみた。
果たしてうまく行きますやら。
「はい、シアンちゃんお勉強の時間ですよ~」
そう言いながらタブレットをジオラマに配置すると、シアンは早速出てきて興味津々で臭いを嗅いでいる。
タブレットの画面には押すボタンが2か所表示されている。一つのボタンの上には「●」、もう一つには「●●」が書いてある。
●が多い方が正解という事で「●●」のボタンを押すと餌が出るのだ。
最初シアンは画面の意味が分かっていない。でもシアンがたまたま鼻先でボタンの所に触れた時、ピンポーン! と音がして上から餌が落ちて来た。
シアンは驚いて逃げて身構えたが、餌が出た事に気が付き、餌を拾って食べた。
回答が終わると問題はリフレッシュされ、正解のボタンはその都度変わる仕組みだ。
もう一度タブレットに近づいてボタンの所の臭いを嗅いでみる。
今度はブー!という音がして画面が変わる。餌は落ちてこない。
またボタンの所の臭いを嗅ぐと、ピンポーン!という音がして餌が出た。
こうやって、同じ所に触れても餌が出る時と出ない時があることをシアンは体験し、そこに何か規則があることに気が付いた。
5,6回繰り返したら正答率は100%になった。さすが賢い。
次は足し算だ
「●+●●=?」
というような問題が出て正解のボタンを押す奴。
これも5,6回でマスターした。
この要領でアラビア数字を覚えさせ、四則演算を覚えさせ、分数、小数を順次覚えさせていく。
午前中だけで小学数学は全てマスターしてしまった。
お昼を挟んで午後は中学数学だ、因数分解、分数式、無理数・無理式の加減乗除、2次方程式、連立方程式、と結構ヘビーなはずなんだがシアンはあっという間に覚えて行ってしまう。
あっという間にやらせる問題が尽きてしまった。
仕方ないので新たに問題を作っていると、
「なになに? 算数やってんの?」
様子を見に美奈ちゃんがやってくる。
「そうそう、美奈ちゃん、シアンと競争してみるか?」
「競争? 応京大生を舐めちゃいけないわよ!」
美奈ちゃんはやる気満々である。
では、美奈ちゃんはこっちのタブレットで正解のボタンを押してね。
「はいはい……なるほどね」
「では、用意……スタート!」
シアンと美奈ちゃんのタブレットに二次方程式の問題が出る。
「えー、と紙とペン……」
と、美奈ちゃんが筆記用具を探している間に
ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!
シアンが正解を積み上げる。餌がその辺にパラパラと散らばっていく。
美奈ちゃんは唖然として固まってしまった。
「なによこれー!!!」
持っていたノートをパシーン! と床にたたきつける美奈ちゃん。
驚いて逃げるシアン。
「私をもてあそんだわね!」
そう言って俺をキッと睨む美奈ちゃん。
「いや、シアンの凄さを体感してもらいたくてですね……」
「最低!」
そう言って俺の頬をバシッと叩いて出て行った。
ドアが壊れそうな勢いで『ガン!』と締まる。
また叩かれてしまった……。叩かれた頬をさすりながら少し反省する。
確かにちょっと意地悪だったかな。
後でちゃんと謝っておかないとな……。
シアンの頭脳は品川のIDCにあるラック2本分のAIチップ(数億円相当)なんだから、この計算速度は当たり前と言えば当たり前かもしれない。
それにエアコン20台分の電力注いでやってる事が単純計算なんだから、なんて贅沢な計算処理だろう。
とは言え見た目は二次方程式を一瞬で解くネズミ、いよいよAIらしくなってきたじゃないか。
これ、TV局に紹介したらすごい扱いになるよな。
『天才ネズミのアルジャーノン現る!?』って感じのテロップが頭に浮かぶ。
シアンの問題作りを再開していると、ドアが『バン!』と開いた。
美奈ちゃんだ。
どこから持ってきたのかハチマキまでしている。
「応京大生として敗北は許されない!」
何かすごい覚悟決めてやってきたよ。
「いやいや、AIとの勝負は分が悪いよ」
「女に二言はないわ! さっきの問題をもう一度やらせなさい!」
目が血走っている。
ヤバい人に関わってしまった……。
仕方ないのでタブレットを渡して、
シアンにもスタンバってもらった。
人間じゃ勝てないのになぁ。
「じゃぁいくよ~、用意……ドン!」
ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!
今度は美奈ちゃんが恐ろしい速度で問題を解いていく。
え!? 一体どうしちゃったんだ?
人間の速度じゃないぞ。
「やったー!!!」
最後まで解き切って飛び上がる美奈ちゃん。
唖然とする俺を得意げに見下ろして、
「ざっとまぁこんなもんよ!」
「いや、ちょっと待って、あんな速度で解けないよね? どうやったの?」
「あら? 不正を疑うの? あなたが作った問題でしょ?」
そう言って余裕の笑みを浮かべる美奈ちゃん。
「いやまぁ……そうなんだけど……」
「こんな2択ね、覚え……じゃないや直感でちょちょいのチョイよ!」
「覚えたの!?」
「違う違う、直感で答えのボタンが浮かび上がって見えるのよ!」
美奈ちゃんの目が泳いでいる。
うーん、覚えるって言っても問題覗き見るためのシステムの利用権限は、美奈ちゃん持ってないしなぁ。
マーカスに教えてもらったとかかなぁ……。
何にせよその執念には脱帽だ。
「分かった分かった、姫の勝ち!」
「やったー!」
本当にうれしそうに笑う。
そして急に抱き着いてきて俺の頬に軽くキスをした。
いきなりブルガリアンローズの香りに包まれて俺は動けなくなった……。
テンパる俺をそのままに、美奈ちゃんは
「さっきはごめんね!」
そう言ってウィンクして出て行った――――
俺はまだ柔らかな唇の感触が残る頬をそっとさすりながら呆然としていた。
柔らかな彼女の身体、温もり……心臓の鼓動が高く鳴りっぱなしだ。
な、なんなんだよ……
俺は喉の渇きに耐えられず冷めたコーヒーをゴクゴクと飲み干した。
タブレットに簡単なパズルを表示させて正解の所をつつくと餌が出るようにしてみた。
果たしてうまく行きますやら。
「はい、シアンちゃんお勉強の時間ですよ~」
そう言いながらタブレットをジオラマに配置すると、シアンは早速出てきて興味津々で臭いを嗅いでいる。
タブレットの画面には押すボタンが2か所表示されている。一つのボタンの上には「●」、もう一つには「●●」が書いてある。
●が多い方が正解という事で「●●」のボタンを押すと餌が出るのだ。
最初シアンは画面の意味が分かっていない。でもシアンがたまたま鼻先でボタンの所に触れた時、ピンポーン! と音がして上から餌が落ちて来た。
シアンは驚いて逃げて身構えたが、餌が出た事に気が付き、餌を拾って食べた。
回答が終わると問題はリフレッシュされ、正解のボタンはその都度変わる仕組みだ。
もう一度タブレットに近づいてボタンの所の臭いを嗅いでみる。
今度はブー!という音がして画面が変わる。餌は落ちてこない。
またボタンの所の臭いを嗅ぐと、ピンポーン!という音がして餌が出た。
こうやって、同じ所に触れても餌が出る時と出ない時があることをシアンは体験し、そこに何か規則があることに気が付いた。
5,6回繰り返したら正答率は100%になった。さすが賢い。
次は足し算だ
「●+●●=?」
というような問題が出て正解のボタンを押す奴。
これも5,6回でマスターした。
この要領でアラビア数字を覚えさせ、四則演算を覚えさせ、分数、小数を順次覚えさせていく。
午前中だけで小学数学は全てマスターしてしまった。
お昼を挟んで午後は中学数学だ、因数分解、分数式、無理数・無理式の加減乗除、2次方程式、連立方程式、と結構ヘビーなはずなんだがシアンはあっという間に覚えて行ってしまう。
あっという間にやらせる問題が尽きてしまった。
仕方ないので新たに問題を作っていると、
「なになに? 算数やってんの?」
様子を見に美奈ちゃんがやってくる。
「そうそう、美奈ちゃん、シアンと競争してみるか?」
「競争? 応京大生を舐めちゃいけないわよ!」
美奈ちゃんはやる気満々である。
では、美奈ちゃんはこっちのタブレットで正解のボタンを押してね。
「はいはい……なるほどね」
「では、用意……スタート!」
シアンと美奈ちゃんのタブレットに二次方程式の問題が出る。
「えー、と紙とペン……」
と、美奈ちゃんが筆記用具を探している間に
ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!
シアンが正解を積み上げる。餌がその辺にパラパラと散らばっていく。
美奈ちゃんは唖然として固まってしまった。
「なによこれー!!!」
持っていたノートをパシーン! と床にたたきつける美奈ちゃん。
驚いて逃げるシアン。
「私をもてあそんだわね!」
そう言って俺をキッと睨む美奈ちゃん。
「いや、シアンの凄さを体感してもらいたくてですね……」
「最低!」
そう言って俺の頬をバシッと叩いて出て行った。
ドアが壊れそうな勢いで『ガン!』と締まる。
また叩かれてしまった……。叩かれた頬をさすりながら少し反省する。
確かにちょっと意地悪だったかな。
後でちゃんと謝っておかないとな……。
シアンの頭脳は品川のIDCにあるラック2本分のAIチップ(数億円相当)なんだから、この計算速度は当たり前と言えば当たり前かもしれない。
それにエアコン20台分の電力注いでやってる事が単純計算なんだから、なんて贅沢な計算処理だろう。
とは言え見た目は二次方程式を一瞬で解くネズミ、いよいよAIらしくなってきたじゃないか。
これ、TV局に紹介したらすごい扱いになるよな。
『天才ネズミのアルジャーノン現る!?』って感じのテロップが頭に浮かぶ。
シアンの問題作りを再開していると、ドアが『バン!』と開いた。
美奈ちゃんだ。
どこから持ってきたのかハチマキまでしている。
「応京大生として敗北は許されない!」
何かすごい覚悟決めてやってきたよ。
「いやいや、AIとの勝負は分が悪いよ」
「女に二言はないわ! さっきの問題をもう一度やらせなさい!」
目が血走っている。
ヤバい人に関わってしまった……。
仕方ないのでタブレットを渡して、
シアンにもスタンバってもらった。
人間じゃ勝てないのになぁ。
「じゃぁいくよ~、用意……ドン!」
ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!
今度は美奈ちゃんが恐ろしい速度で問題を解いていく。
え!? 一体どうしちゃったんだ?
人間の速度じゃないぞ。
「やったー!!!」
最後まで解き切って飛び上がる美奈ちゃん。
唖然とする俺を得意げに見下ろして、
「ざっとまぁこんなもんよ!」
「いや、ちょっと待って、あんな速度で解けないよね? どうやったの?」
「あら? 不正を疑うの? あなたが作った問題でしょ?」
そう言って余裕の笑みを浮かべる美奈ちゃん。
「いやまぁ……そうなんだけど……」
「こんな2択ね、覚え……じゃないや直感でちょちょいのチョイよ!」
「覚えたの!?」
「違う違う、直感で答えのボタンが浮かび上がって見えるのよ!」
美奈ちゃんの目が泳いでいる。
うーん、覚えるって言っても問題覗き見るためのシステムの利用権限は、美奈ちゃん持ってないしなぁ。
マーカスに教えてもらったとかかなぁ……。
何にせよその執念には脱帽だ。
「分かった分かった、姫の勝ち!」
「やったー!」
本当にうれしそうに笑う。
そして急に抱き着いてきて俺の頬に軽くキスをした。
いきなりブルガリアンローズの香りに包まれて俺は動けなくなった……。
テンパる俺をそのままに、美奈ちゃんは
「さっきはごめんね!」
そう言ってウィンクして出て行った――――
俺はまだ柔らかな唇の感触が残る頬をそっとさすりながら呆然としていた。
柔らかな彼女の身体、温もり……心臓の鼓動が高く鳴りっぱなしだ。
な、なんなんだよ……
俺は喉の渇きに耐えられず冷めたコーヒーをゴクゴクと飲み干した。
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