キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきた!?

月城 友麻

文字の大きさ
上 下
46 / 78
AIの発露

30.二次方程式にキス

しおりを挟む
 翌日、今度はシアンの論理的思考力を鍛える事にする。
 タブレットに簡単なパズルを表示させて正解の所をつつくと餌が出るようにしてみた。
 果たしてうまく行きますやら。
 
「はい、シアンちゃんお勉強の時間ですよ~」
 そう言いながらタブレットをジオラマに配置すると、シアンは早速出てきて興味津々で臭いを嗅いでいる。

 タブレットの画面には押すボタンが2か所表示されている。一つのボタンの上には「●」、もう一つには「●●」が書いてある。
 ●が多い方が正解という事で「●●」のボタンを押すと餌が出るのだ。
 
 最初シアンは画面の意味が分かっていない。でもシアンがたまたま鼻先でボタンの所に触れた時、ピンポーン! と音がして上から餌が落ちて来た。

 シアンは驚いて逃げて身構えたが、餌が出た事に気が付き、餌を拾って食べた。

 回答が終わると問題はリフレッシュされ、正解のボタンはその都度変わる仕組みだ。
 もう一度タブレットに近づいてボタンの所の臭いを嗅いでみる。

 今度はブー!という音がして画面が変わる。餌は落ちてこない。
 またボタンの所の臭いを嗅ぐと、ピンポーン!という音がして餌が出た。

 こうやって、同じ所に触れても餌が出る時と出ない時があることをシアンは体験し、そこに何か規則があることに気が付いた。

 5,6回繰り返したら正答率は100%になった。さすが賢い。
 次は足し算だ

「●+●●=?」

 というような問題が出て正解のボタンを押す奴。
 これも5,6回でマスターした。

 この要領でアラビア数字を覚えさせ、四則演算を覚えさせ、分数、小数を順次覚えさせていく。
 午前中だけで小学数学は全てマスターしてしまった。
 
 お昼を挟んで午後は中学数学だ、因数分解、分数式、無理数・無理式の加減乗除、2次方程式、連立方程式、と結構ヘビーなはずなんだがシアンはあっという間に覚えて行ってしまう。
 あっという間にやらせる問題が尽きてしまった。

 仕方ないので新たに問題を作っていると、

「なになに? 算数やってんの?」
 様子を見に美奈ちゃんがやってくる。

「そうそう、美奈ちゃん、シアンと競争してみるか?」
「競争? 応京大生を舐めちゃいけないわよ!」
 美奈ちゃんはやる気満々である。
 
 では、美奈ちゃんはこっちのタブレットで正解のボタンを押してね。

「はいはい……なるほどね」
「では、用意……スタート!」

 シアンと美奈ちゃんのタブレットに二次方程式の問題が出る。

「えー、と紙とペン……」
 と、美奈ちゃんが筆記用具を探している間に

 ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!
 シアンが正解を積み上げる。餌がその辺にパラパラと散らばっていく。

 美奈ちゃんは唖然として固まってしまった。

「なによこれー!!!」
 持っていたノートをパシーン! と床にたたきつける美奈ちゃん。

 驚いて逃げるシアン。

「私をもてあそんだわね!」
 そう言って俺をキッと睨む美奈ちゃん。

「いや、シアンの凄さを体感してもらいたくてですね……」
「最低!」
 そう言って俺の頬をバシッと叩いて出て行った。

 ドアが壊れそうな勢いで『ガン!』と締まる。

 また叩かれてしまった……。叩かれた頬をさすりながら少し反省する。
 確かにちょっと意地悪だったかな。
 後でちゃんと謝っておかないとな……。
 
 シアンの頭脳は品川のIDCにあるラック2本分のAIチップ(数億円相当)なんだから、この計算速度は当たり前と言えば当たり前かもしれない。
 それにエアコン20台分の電力注いでやってる事が単純計算なんだから、なんて贅沢な計算処理だろう。

 とは言え見た目は二次方程式を一瞬で解くネズミ、いよいよAIらしくなってきたじゃないか。
 これ、TV局に紹介したらすごい扱いになるよな。

 『天才ネズミのアルジャーノン現る!?』って感じのテロップが頭に浮かぶ。
 
 シアンの問題作りを再開していると、ドアが『バン!』と開いた。

 美奈ちゃんだ。

 どこから持ってきたのかハチマキまでしている。
 
「応京大生として敗北は許されない!」
 何かすごい覚悟決めてやってきたよ。

「いやいや、AIとの勝負は分が悪いよ」
「女に二言はないわ! さっきの問題をもう一度やらせなさい!」
 目が血走っている。

 ヤバい人に関わってしまった……。

 仕方ないのでタブレットを渡して、
 シアンにもスタンバってもらった。

 人間じゃ勝てないのになぁ。

「じゃぁいくよ~、用意……ドン!」

 ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポ!
 今度は美奈ちゃんが恐ろしい速度で問題を解いていく。

 え!? 一体どうしちゃったんだ?
 人間の速度じゃないぞ。
 
「やったー!!!」
 最後まで解き切って飛び上がる美奈ちゃん。

 唖然とする俺を得意げに見下ろして、

「ざっとまぁこんなもんよ!」
「いや、ちょっと待って、あんな速度で解けないよね? どうやったの?」
「あら? 不正を疑うの? あなたが作った問題でしょ?」

 そう言って余裕の笑みを浮かべる美奈ちゃん。

「いやまぁ……そうなんだけど……」
「こんな2択ね、覚え……じゃないや直感でちょちょいのチョイよ!」
「覚えたの!?」
「違う違う、直感で答えのボタンが浮かび上がって見えるのよ!」
 美奈ちゃんの目が泳いでいる。

 うーん、覚えるって言っても問題覗き見るためのシステムの利用権限は、美奈ちゃん持ってないしなぁ。
 マーカスに教えてもらったとかかなぁ……。

 何にせよその執念には脱帽だ。

「分かった分かった、姫の勝ち!」
「やったー!」
 本当にうれしそうに笑う。

 そして急に抱き着いてきて俺の頬に軽くキスをした。

 いきなりブルガリアンローズの香りに包まれて俺は動けなくなった……。

 テンパる俺をそのままに、美奈ちゃんは

「さっきはごめんね!」
 そう言ってウィンクして出て行った――――
 
 俺はまだ柔らかな唇の感触が残る頬をそっとさすりながら呆然としていた。
 柔らかな彼女の身体、温もり……心臓の鼓動が高く鳴りっぱなしだ。

 な、なんなんだよ……

 俺は喉の渇きに耐えられず冷めたコーヒーをゴクゴクと飲み干した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

我ら新興文明保護艦隊

ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら? もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら? これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。 ※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

No One's Glory -もうひとりの物語-

はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `) よろしくお願い申し上げます 男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。 医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。 男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく…… 手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。 採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。 各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した…… 申し訳ございませんm(_ _)m 不定期投稿になります。 本業多忙のため、しばらく連載休止します。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...