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33. 虹色の宇宙の根源

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「ヨーシ! 祝勝会だ! 肉食いに行くぞ――――!」

 シアンは嬉しそうに腕を上げ、

「肉肉~!」

 と、芽依も真似て腕を上げた。

「え? あの、自分はこのまま暮らしていいんです……か?」

 パパは恐る恐るシアンに聞いた。

「ん? いいんじゃない? いい活躍だったわ。レヴィちゃん、手続きよろしく」

「分かりました! 良かったな、お主ら」

 レヴィアは目に涙を浮かべながら、二人の肩をポンポンと叩いた。



         ◇



 パパはママに会いたいというので自宅に送り、一行は恵比寿の焼き肉屋にやってきた。

「さーて、飲むぞー!」

 シアンは席に着くと、腕まくりして気合いを入れる。

「お酒ってそんなに美味しいんですか?」

 和真は不思議そうに聞く。

「そりゃあもう! 世界で一番高い飲み物も酒だからね」

「でも、酒の味が分かるにはそれなりの年季がいるぞ」

 レヴィアはニヤッと笑う。

「え? シアン様って五歳ですよね?」

「ふふーん、それは地球時間でね。僕という存在は全宇宙に広がっているから、もはや無限とも言える時間を生きているんだよ」

「広がる? 無限……?」

 和真は理解の限界を超えてしまう。

「それって……、シアン様は全宇宙のあちこちに同時にいるってことですか?」

 芽依が興味津々に聞く。

「ほほう、君はわかってるな」

「そうなると、単なる仮想現実とかではなく宇宙の根源に関わる話……になりませんか?」

 シアンはニコッと笑うと、両手を向かい合わせにして、ほわぁと気合を込めた。

 やがて手の中に虹色に鮮やかに輝く点が現れる。

「これが宇宙の根源だよ」

「は?」「へ?」

 和真も芽依も意味が分からず困惑する。

 焼き肉屋のテーブルの上で輝く点が広大な宇宙の全ての根源だというのだ。飛躍しすぎて全くついていけない。

「これ、パンと叩いて潰したら宇宙滅亡しちゃうんですか?」

 芽依が穏やかじゃないことを聞く。

「やってみる?」

 ニヤッと笑うシアン。

「シアン様、そういう物騒なのは困りますよ!」

 レヴィアは冷汗を浮かべながら叫んだ。

「なんで点が宇宙の根源なんですか?」

「うーん、要は縦横高さって大きさも結局は情報で、情報そのものは無次元なんだよね。中身はこんなだよ」

 シアンがパチンと指を鳴らすと、輝点から虹色の輝くリボンがブシューっと噴き出してきた。

 うわぁ!

 驚く和真たちをしり目にどんどん噴き出してくるリボン。やがて部屋の中はリボンで埋め尽くされていった。

「あれ? これ、数字だわ……」

 芽依がリボンを観察しながら言った。

「本当だ……1と……0だ」

 和真はリボンにびっしりと書かれた1010001010111010100101010といった数字列に見入る。数字は赤、青、緑と色を変えながら次々と書き換わっていく。それはまるで芸術品のような精緻な美しさを放ちながら何かを表していた。

「宇宙は無数の1と0の集積でできてるってことだよ」

 ニコッと笑うシアン。

「これ? 本物……ですか?」

 和真が見とれながら聞くと、

「本物さ、例えば……」

 と、言いながらシアンは数字を書き換えた。

 すると、隣でレヴィアが食べようとつまみ上げた肉がいきなり、ボシュー! と音を立てて燃え上がり、

「うわぁ! アチャチャ!」

 と、放り出した。

 テーブルの上を点々と転がりながら炎上する肉。

「ほらね、リアルでしょ?」

 シアンはドヤ顔で言った。

「ちょっと! シアン様困ります!」

 シアンは前髪をチリチリに焦がしながら怒る。

「おぉ、レヴィちゃん、ごめんごめん!」

 シアンは大げさにハグをして、レヴィアのプニプニのほっぺたに頬ずりをする。

「うわぁ! シアン様、ダメですって!」

 真っ赤になってワタワタするレヴィア。

 シアンはそんなレヴィアの姿をチラッと見て嬉しそうにすると、前髪に手を当て、

「はーい、動かないで」

 と、焦げたところを直していった。

 和真は可愛い女の子たちがじゃれあう姿にちょっとドキドキしながら、この宇宙のとらえどころのない不思議さに言葉を失っていた。

 この世界はコンピューターで作られており、さらにそのコンピューターも他の世界のコンピューター上でシミュレートされ動いている。そしてそのコンピューターも……と、連なった先がこの光の点だという。

 和真は大きく息をつき、芽依を見る。芽依は嬉しそうに光のリボンを手に取って移り変わる数字を眺めていた。



 その時、ガラッとドアが開いた。

「ジョッキお持ちしましたー! えっ?」

 店員は輝く虹のリボンに埋め尽くされた店内に驚く。

「あら、ごめんね」

 シアンはそう言うと両手でパチンと輝点を潰し、虹のリボンはすうっと消えていった。

「えっ!?」

 芽依は驚き、そっと和真の方を向くと、首をかしげた。

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