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11. 明かされた真実
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階段を降り、立派な革張りソファに案内される。
「まぁ座れ」
レヴィアはコーヒーをふるまった。
「あ、ありがとうございます」
「なぜ分かった?」
レヴィアは鋭い視線を投げかける。
「メタバースがあれだけ精巧な世界を作っているんです。この世界だってメタバースの進化の先にあってもおかしくないじゃないですか」
「ふむ、メタバースは金儲けのために作られておる。ではこの世界は何のため?」
レヴィアは少し意地悪な表情で聞く。
「えっ!? 何のため……?」
和真は考え込んでしまった。確かにスパコン一兆個分のコンピューターの開発と運用など膨大なコストがかかる。それに見合うだけの物なのだろうか?
「まぁええ、これは宿題にしておこう」
レヴィアはニヤッと笑い、コーヒーをすすった。
和真はふぅと息をつき、軽くガッツポーズをする。
何とか関門は突破した。この世界がコンピューターの作り出したものだというのはいまだにピンとは来ないが、宇宙エレベーターに金色のドラゴン、もはや疑いようもない。
これをどう捉えたらいいのか、考えるべきことは山積みではあったが、和真にはそれよりももっと大切なことがある。
いよいよ目的を切り出した。
「これで仲間ですよね? それで……、お願いしたいことが……」
「なんじゃ? 言うてみい」
レヴィアはコーヒーをすすりながら真紅の瞳をクリっと動かし、和真に向ける。
「実は……」
和真は六年前の事故について説明し、その現場を見せてほしいと懇願した。
「それはそれは……、苦労したのう」
必死に頭を下げる和真を、レヴィアは憐憫のまなざしで見る。そして、目の前に黒い画面をパカッと浮かべ、ローテーブルの上にバーチャルキーボードを設定してタカタカと何かを打ち込んでいった。
「六年前の伊豆……ね……」
和真はそんなレヴィアを拝むようにじっと見つめる。
「むむっ!」
レヴィアは急に眉をひそめ、しばらく画面を見つめ固まってしまう。
薬指がタンタンとテーブルを叩く音が響いた。
そして、ソファーの背もたれにドサッともたれかかり、腕を組んで宙を見つめる。
「デ、データは残ってますか?」
和真が心配そうに聞くと、レヴィアはおもむろに起き上がりコーヒーをすすって大きく息をついた。
「お主は我々の仕事は何か知っとるか?」
「え? 地球を運営したり悪さするハッカーを叩いたり……ですよね?」
「そうじゃ、特にハッカー対策が……結構大変なんじゃ」
レヴィアは腕を組んで渋い顔をする。
「も、もしかして……」
「まぁ、見てもらった方がいいじゃろう」
そう言うとレヴィアは立ち上がって和真の手を取り、ワープした。
◇
いきなり広がる青空、そして向こうには水平線、見下ろせばそこは伊豆の磯だった。
「えっ? ここはもしかして……」
「六年前の事故現場じゃ」
レヴィアはそう言いながら磯を指さした。
その先には子供とその父親らしき人の姿が見える。
「えっ!?」
和真は固まった。その姿は忘れもしない今は亡き父だった。
和真にせがまれてこんな伊豆の磯にまでやってきた、黄色いジャンパーの三十代の働き盛りのパパ。
和真はあまりのなつかしさに思わず涙が湧いてくるのを抑えられなかった。
そう、そうだった。
幸せな家庭の風景、失われてしまった父子の温かさがうちにもあったのだ。
涙をポロポロとこぼしながら、ぼやける視界の先で元気に魚を捕る姿を必死に追いかける。
やがて問題の場面がやってきた。
小学生の和真にせがまれて崖を登り始めるパパ。
「パパ! ダメ!」
和真は思わずそれを止めようと近づこうとする。
しかし、レヴィアはガシッと和真の腕をつかみ、
「これは記録映像じゃ。止められんし止めても歴史は変わらん」
「えっ、そんな……」
悲しみではち切れそうな胸を押さえ、うつむく和真。
「お主が見たかったのはあれじゃろ?」
レヴィアはそう言いながら和真を引っ張りながらツーっと空を飛んだ。
やがて見えてくる入江。
そして、そこには奇妙な巨大なものの姿があった。
「へっ!?」
和真は驚いた。伊豆の入り江に紫がかった茶色い巨大な球状の物が動いていたのだ。そして、その上には白衣を着た男の姿も見える。男の大きさから言うと、見えている部分だけで優に十メートルくらいの大きさがありそうである。
その現実とは思いがたい奇妙な光景に、和真は思わず息をのんだ。
「まぁ座れ」
レヴィアはコーヒーをふるまった。
「あ、ありがとうございます」
「なぜ分かった?」
レヴィアは鋭い視線を投げかける。
「メタバースがあれだけ精巧な世界を作っているんです。この世界だってメタバースの進化の先にあってもおかしくないじゃないですか」
「ふむ、メタバースは金儲けのために作られておる。ではこの世界は何のため?」
レヴィアは少し意地悪な表情で聞く。
「えっ!? 何のため……?」
和真は考え込んでしまった。確かにスパコン一兆個分のコンピューターの開発と運用など膨大なコストがかかる。それに見合うだけの物なのだろうか?
「まぁええ、これは宿題にしておこう」
レヴィアはニヤッと笑い、コーヒーをすすった。
和真はふぅと息をつき、軽くガッツポーズをする。
何とか関門は突破した。この世界がコンピューターの作り出したものだというのはいまだにピンとは来ないが、宇宙エレベーターに金色のドラゴン、もはや疑いようもない。
これをどう捉えたらいいのか、考えるべきことは山積みではあったが、和真にはそれよりももっと大切なことがある。
いよいよ目的を切り出した。
「これで仲間ですよね? それで……、お願いしたいことが……」
「なんじゃ? 言うてみい」
レヴィアはコーヒーをすすりながら真紅の瞳をクリっと動かし、和真に向ける。
「実は……」
和真は六年前の事故について説明し、その現場を見せてほしいと懇願した。
「それはそれは……、苦労したのう」
必死に頭を下げる和真を、レヴィアは憐憫のまなざしで見る。そして、目の前に黒い画面をパカッと浮かべ、ローテーブルの上にバーチャルキーボードを設定してタカタカと何かを打ち込んでいった。
「六年前の伊豆……ね……」
和真はそんなレヴィアを拝むようにじっと見つめる。
「むむっ!」
レヴィアは急に眉をひそめ、しばらく画面を見つめ固まってしまう。
薬指がタンタンとテーブルを叩く音が響いた。
そして、ソファーの背もたれにドサッともたれかかり、腕を組んで宙を見つめる。
「デ、データは残ってますか?」
和真が心配そうに聞くと、レヴィアはおもむろに起き上がりコーヒーをすすって大きく息をついた。
「お主は我々の仕事は何か知っとるか?」
「え? 地球を運営したり悪さするハッカーを叩いたり……ですよね?」
「そうじゃ、特にハッカー対策が……結構大変なんじゃ」
レヴィアは腕を組んで渋い顔をする。
「も、もしかして……」
「まぁ、見てもらった方がいいじゃろう」
そう言うとレヴィアは立ち上がって和真の手を取り、ワープした。
◇
いきなり広がる青空、そして向こうには水平線、見下ろせばそこは伊豆の磯だった。
「えっ? ここはもしかして……」
「六年前の事故現場じゃ」
レヴィアはそう言いながら磯を指さした。
その先には子供とその父親らしき人の姿が見える。
「えっ!?」
和真は固まった。その姿は忘れもしない今は亡き父だった。
和真にせがまれてこんな伊豆の磯にまでやってきた、黄色いジャンパーの三十代の働き盛りのパパ。
和真はあまりのなつかしさに思わず涙が湧いてくるのを抑えられなかった。
そう、そうだった。
幸せな家庭の風景、失われてしまった父子の温かさがうちにもあったのだ。
涙をポロポロとこぼしながら、ぼやける視界の先で元気に魚を捕る姿を必死に追いかける。
やがて問題の場面がやってきた。
小学生の和真にせがまれて崖を登り始めるパパ。
「パパ! ダメ!」
和真は思わずそれを止めようと近づこうとする。
しかし、レヴィアはガシッと和真の腕をつかみ、
「これは記録映像じゃ。止められんし止めても歴史は変わらん」
「えっ、そんな……」
悲しみではち切れそうな胸を押さえ、うつむく和真。
「お主が見たかったのはあれじゃろ?」
レヴィアはそう言いながら和真を引っ張りながらツーっと空を飛んだ。
やがて見えてくる入江。
そして、そこには奇妙な巨大なものの姿があった。
「へっ!?」
和真は驚いた。伊豆の入り江に紫がかった茶色い巨大な球状の物が動いていたのだ。そして、その上には白衣を着た男の姿も見える。男の大きさから言うと、見えている部分だけで優に十メートルくらいの大きさがありそうである。
その現実とは思いがたい奇妙な光景に、和真は思わず息をのんだ。
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