35 / 45
34. メイドの適性検査装置
しおりを挟む
それから一週間、ベンは毎日便意に耐える練習を繰り返した。十万倍を出すとどうしてもすぐに意識を失ってしまうので、何とか意識を失わない方法はないかと一人トイレに籠って試行錯誤を繰り返す。
屋敷のメイドたちはその奇行を見て不思議そうに首をかしげていた。
トイレで気を失い、しばらくしてげっそりした顔で出てきたベンに、赤毛のメイドが聞いた。
「ご主人様何をされているんですか? そろそろお部屋に呼ぶ娘を決めてください」
メイドは不満そうに頬をぷっくりとふくらませている。
「あー、そうだったな……」
彼女たちを抱くような余裕はないが、確かにそろそろ誰かを指名してあげないと不満が爆発してしまう。
ベンはしばらく思案し、ニヤッと笑うと、大浴場にメイドたちを集めた。
◇
「そろそろ部屋に呼ぶ娘を決めたいと思う。希望者はこれをつけなさい」
ベンはそう言って、魔王から借りてきた金属ベルトのガジェットを台に山盛りに載せた。
「これは……、何ですか?」
赤毛のメイドは不思議そうに金属ベルトをしげしげと眺めた。目鼻立ちの整った美しい顔に怪訝そうな色が浮かぶ。ベンはチクリと胸が痛んだが、一晩百万円の栄誉と引き換えの試練は甘くはないのだ。
「これは適性検査装置だ。この適性検査に合格した者は毎日部屋に呼んでやろう。ただし、結構つらい試験だ。よく考えて決めなさい」
ベンがそう言うと、メイドたちは先を争って金属ベルトを奪い合うように手にしていく。若く美しい娘たちが便意促進器に群がる姿はひどく滑稽で、この世界の理不尽を思わせた。
使い方を教え、いよいよ適性を検査する。これは嫌がらせではなく、もし、耐えられる娘がいるなら一緒に集会についてきてほしかったのだ。彼女たちの異常な執念ならもしかしたら耐えられるのかもしれない。
「ボタンを押して一分間便意に耐えられたら合格だ。用意はいいか?」
ベンはそう言ってみんなを見回した。
「ふふふ、すごい特殊なプレイですね。一分なら余裕ですよ! 今晩は私と二人きりですよ」
赤毛のメイドは嬉しそうに笑う。
「私も便意ぐらい耐えられます! もし、たくさん合格したらどうなるんですか?」
他のメイドが不安そうに聞いてくる。
「一分は長いぞー。そんなことは心配せずに耐えてみせなさい。ちなみに僕は余裕だからね」
ベンはニコッと笑って言った。
「一分ぐらい余裕だわ!」「ようやく夢が叶うわ!」
メイドたちは合格する気満々である。
ベンはそんなメイドたちを見渡すと、
「ハイ! では、ボタンに手をかけてー! 三、二、一、GO!」
と、叫んだ。
メイドたちはベンを挑戦的なまなざしで見ながら、一斉にボタンを押し込んだ。
ガチッ! ガチッ! ガチッ!
ふぐぅ……。くぅ……。ひゃぁ……。
あちこちから声にならない声が上がる。
直後、真っ青な顔をしてバタバタと倒れていくメイドたち。
あれほど自信満々だったのに、誰一人耐えられなかったのだ。
大浴場には壮絶な排泄音が響き渡った。
ベンは急いで耳をふさぎ、目をつぶって「アーメン」と祈る。
彼女たちのガッツに期待したのだが、残念ながら適性者は現れなかった。
大浴場には汚物にまみれてビクンビクンと痙攣をする女の子たちが死屍累々となって横たわる。
ベンは掃除洗濯は自分がやってあげるしかないな、とため息をつき、肩を落とした。
◇
その頃、窓の外に巨大な碧い星、海王星を見渡せる衛星軌道の宇宙ステーションで、小太りの中年男が若いブロンドの女性と打ち合わせをしていた。
「いよいよだな。計画は順調かね」
中年男はドカッと革張りの椅子にふんぞり返り、ケミカルの金属パイプを吸いながら女性をチラッと見た。
「順調でございます、ボトヴィッド様」
「うむうむ。計画が上手く行くよう、ワシの方で秘密兵器を用意してやったぞ」
そう言うとボトヴィッドと呼ばれた中年男は指先で空間を切り裂き、倉庫に積まれた金属ベルトのガジェットの山を見せる。そして、ニヤリと笑うと、一つ取り出し、女性に渡した。
「こ、これは何ですか?」
女性はいぶかしそうに金属ベルトとプラスチックノズルを子細に眺める。
「まず、この映像を見たまえ」
そう言うと、ベンがヒュドラを瞬殺した時の映像を空中に再生した。
「ベ、ベン君……」
女性は驚いて目を丸くする。
「なんだ、この小僧のことを知っとるのか?」
「え、ええまぁ……。しかしこの強さは?」
「この小僧はこの金属ベルトでとんでもない強さを発揮しておった。戦闘員全員分用意してやったから装着させなさい」
ドヤ顔のボトヴィッド。
「いやしかし……こんなベルトがパワーを生むとは考えにくいのですが……」
「なんだ! お前はワシの見立てにケチをつけるのか!?」
ボトヴィッドはひどい剣幕で怒る。
「い、いやそのようなことは……」
「そのベルトのボタンを押した瞬間、攻撃力がグンと上がったのだ。そのベルトが魔王側の切り札であるのは間違いない。ワシらは量産で対抗じゃ!」
悪い顔でニヤッと笑うボトヴィッドに、女性は渋い顔をしながら答えた。
「わ、わかりました。戦闘員全員に着用させます」
「よろしい。では吉報を待っているぞ」
ボトヴィッドはニヤリと笑い、席を立つ。
「お、お待ちください。街の人全員を生贄に捧げたら星をいただける、というお約束は守っていただけるのですよね?」
女性は眉をひそめ、ボトヴィッドをすがるように見る。
「ふん! 俺を信じろ。生贄さえ用意してくれれば約束通り管理局に提案しよう。女性だけの星というのはいまだに例がない。通る公算は高いだろう」
「ありがたき幸せにございます」
女性はうやうやしく頭を下げた。
こうして多くの人の思惑を載せ、総決起集会の日がやってくる――――。
屋敷のメイドたちはその奇行を見て不思議そうに首をかしげていた。
トイレで気を失い、しばらくしてげっそりした顔で出てきたベンに、赤毛のメイドが聞いた。
「ご主人様何をされているんですか? そろそろお部屋に呼ぶ娘を決めてください」
メイドは不満そうに頬をぷっくりとふくらませている。
「あー、そうだったな……」
彼女たちを抱くような余裕はないが、確かにそろそろ誰かを指名してあげないと不満が爆発してしまう。
ベンはしばらく思案し、ニヤッと笑うと、大浴場にメイドたちを集めた。
◇
「そろそろ部屋に呼ぶ娘を決めたいと思う。希望者はこれをつけなさい」
ベンはそう言って、魔王から借りてきた金属ベルトのガジェットを台に山盛りに載せた。
「これは……、何ですか?」
赤毛のメイドは不思議そうに金属ベルトをしげしげと眺めた。目鼻立ちの整った美しい顔に怪訝そうな色が浮かぶ。ベンはチクリと胸が痛んだが、一晩百万円の栄誉と引き換えの試練は甘くはないのだ。
「これは適性検査装置だ。この適性検査に合格した者は毎日部屋に呼んでやろう。ただし、結構つらい試験だ。よく考えて決めなさい」
ベンがそう言うと、メイドたちは先を争って金属ベルトを奪い合うように手にしていく。若く美しい娘たちが便意促進器に群がる姿はひどく滑稽で、この世界の理不尽を思わせた。
使い方を教え、いよいよ適性を検査する。これは嫌がらせではなく、もし、耐えられる娘がいるなら一緒に集会についてきてほしかったのだ。彼女たちの異常な執念ならもしかしたら耐えられるのかもしれない。
「ボタンを押して一分間便意に耐えられたら合格だ。用意はいいか?」
ベンはそう言ってみんなを見回した。
「ふふふ、すごい特殊なプレイですね。一分なら余裕ですよ! 今晩は私と二人きりですよ」
赤毛のメイドは嬉しそうに笑う。
「私も便意ぐらい耐えられます! もし、たくさん合格したらどうなるんですか?」
他のメイドが不安そうに聞いてくる。
「一分は長いぞー。そんなことは心配せずに耐えてみせなさい。ちなみに僕は余裕だからね」
ベンはニコッと笑って言った。
「一分ぐらい余裕だわ!」「ようやく夢が叶うわ!」
メイドたちは合格する気満々である。
ベンはそんなメイドたちを見渡すと、
「ハイ! では、ボタンに手をかけてー! 三、二、一、GO!」
と、叫んだ。
メイドたちはベンを挑戦的なまなざしで見ながら、一斉にボタンを押し込んだ。
ガチッ! ガチッ! ガチッ!
ふぐぅ……。くぅ……。ひゃぁ……。
あちこちから声にならない声が上がる。
直後、真っ青な顔をしてバタバタと倒れていくメイドたち。
あれほど自信満々だったのに、誰一人耐えられなかったのだ。
大浴場には壮絶な排泄音が響き渡った。
ベンは急いで耳をふさぎ、目をつぶって「アーメン」と祈る。
彼女たちのガッツに期待したのだが、残念ながら適性者は現れなかった。
大浴場には汚物にまみれてビクンビクンと痙攣をする女の子たちが死屍累々となって横たわる。
ベンは掃除洗濯は自分がやってあげるしかないな、とため息をつき、肩を落とした。
◇
その頃、窓の外に巨大な碧い星、海王星を見渡せる衛星軌道の宇宙ステーションで、小太りの中年男が若いブロンドの女性と打ち合わせをしていた。
「いよいよだな。計画は順調かね」
中年男はドカッと革張りの椅子にふんぞり返り、ケミカルの金属パイプを吸いながら女性をチラッと見た。
「順調でございます、ボトヴィッド様」
「うむうむ。計画が上手く行くよう、ワシの方で秘密兵器を用意してやったぞ」
そう言うとボトヴィッドと呼ばれた中年男は指先で空間を切り裂き、倉庫に積まれた金属ベルトのガジェットの山を見せる。そして、ニヤリと笑うと、一つ取り出し、女性に渡した。
「こ、これは何ですか?」
女性はいぶかしそうに金属ベルトとプラスチックノズルを子細に眺める。
「まず、この映像を見たまえ」
そう言うと、ベンがヒュドラを瞬殺した時の映像を空中に再生した。
「ベ、ベン君……」
女性は驚いて目を丸くする。
「なんだ、この小僧のことを知っとるのか?」
「え、ええまぁ……。しかしこの強さは?」
「この小僧はこの金属ベルトでとんでもない強さを発揮しておった。戦闘員全員分用意してやったから装着させなさい」
ドヤ顔のボトヴィッド。
「いやしかし……こんなベルトがパワーを生むとは考えにくいのですが……」
「なんだ! お前はワシの見立てにケチをつけるのか!?」
ボトヴィッドはひどい剣幕で怒る。
「い、いやそのようなことは……」
「そのベルトのボタンを押した瞬間、攻撃力がグンと上がったのだ。そのベルトが魔王側の切り札であるのは間違いない。ワシらは量産で対抗じゃ!」
悪い顔でニヤッと笑うボトヴィッドに、女性は渋い顔をしながら答えた。
「わ、わかりました。戦闘員全員に着用させます」
「よろしい。では吉報を待っているぞ」
ボトヴィッドはニヤリと笑い、席を立つ。
「お、お待ちください。街の人全員を生贄に捧げたら星をいただける、というお約束は守っていただけるのですよね?」
女性は眉をひそめ、ボトヴィッドをすがるように見る。
「ふん! 俺を信じろ。生贄さえ用意してくれれば約束通り管理局に提案しよう。女性だけの星というのはいまだに例がない。通る公算は高いだろう」
「ありがたき幸せにございます」
女性はうやうやしく頭を下げた。
こうして多くの人の思惑を載せ、総決起集会の日がやってくる――――。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
防火管理者、異世界でほのぼの火の用心ライフを送る
ずいずい瑞祥
ファンタジー
人生で初の資格「甲種防火管理者」を取得して喜んだのも束の間、僕は階段から落ちて異世界に転移してしまう。チートスキルを期待したのに、装備された能力はショボい「防火管理者」。けれども通りかかった食堂で小火に遭遇して……。
無双はできないけど、のんびり防火管理者生活、はじめます。
(カクヨムにも同じ作品を公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる