15 / 45
15. 伝説の真龍
しおりを挟む
「ベンくーん!」
ベネデッタはベンに走り寄るが、ベンにはもう全く余裕がなかった。強引に流し込んだ水が腸内でさっきからグルグルとすさまじい音を立て、肛門を襲っているのだ。もはや一刻の猶予もない。
「失礼!」
ベンは脂汗を流しながら一言そう言うと、ベネデッタを小脇に抱え、次いで班長も小脇に抱え、ピョコピョコと走り出した。出口はシアンが教えてくれるらしい。
走ると言っても千倍のパワーの走りである。あっという間に時速百キロを超え、飛ぶように草原を一直線に駆け抜けていった。
その圧倒的な速度に二人は圧倒されて言葉を失う。ベンの超人的パワーは明らかに人の領域を超えているのだ。ただ、大人しく運ばれるしかなかった。
途中オーガやゴーレムみたいなAクラスモンスターが行く手をふさいだが、ベンは止まりもせずにただ膝蹴りで一蹴し、楽しそうに飛んでいくシアンの後をひたすら追っていく。
しばらく行くと湖があり、その湖畔に小さな三角屋根の建物が見えてきた。どうやら、ここらしい。
漏れる、漏れる、漏れる……。
ベンは建物の入り口で二人を下ろし、急いでドアを開ける。
奥に下り階段が見えた。ビンゴ!
だがその時、天井から閃光が放たれた。
ズン!
グハァ!
ベンは天井に潜んでいたハーピーの攻撃をまともに受け、服が焦げた。千倍の防御力では身体は傷一つつかないものの、デリケートな下腹部にはこたえた。
ビュッ、ビュルッ!
たまらず肛門が一部決壊。オムツ代わりに仕込んでおいたタオルに生暖かい液体が染みていく。
ポロン! 『×10000』
ついに限界突破の一万倍に達してしまった。
「キタ――――! きゃははは!」
シアンは大喜びである。
ベンは奥歯をギリッと鳴らすと、
「エアスラッシュ!」
と、叫んで初級風魔法を放った。初級と言え一万倍の威力である、それぞれが普通の百倍くらいの威力を持った風の刃が数百発天井に向って放たれる。それはまるで竜巻が直撃したかのような衝撃でハーピーを襲う。
キュワァァァ!
断末魔の叫びが響き、ハーピーは屋根ごと粉々に吹き飛んでしまった。
くふぅ……。
ガクッとひざをつくベン。もう肛門は限界だ。しかし、まだこの先、ボスを斃さない限り外には出られない。それまではこの便意を温存するしかない。休憩してもう一発水筒注入というのはもう耐えられそうになかった。
「ベン君……」
ベネデッタはその尋常ではないベンの辛そうな様子に、思わず駆け寄って後ろからハグをした。しかし、それは下腹部を締め付けて逆効果だった。
グハァ!
思わず叫んでしまうベン。
ビュッビュとまた少し決壊してしまう。
「ごめんなさい、わたくしそんなつもりじゃ……」
オロオロするベネデッタ。
「だ、大丈夫。ちょっと待っててください」
ベンは必死に肛門のコントロールを取り戻そうと大きく深呼吸を繰り返し、精神統一に全力を注ぐ。
ベネデッタは心配そうな顔をしながら、癒しの神聖魔法をそっとかけたのだった。
ベンの全身が淡く金色に光輝き、光の微粒子が舞い上がる火の粉のようにチラチラとしながら巻き上がり、辺りを照らす。
ベンは激痛の走る下腹部をそっとなでながら、少しずつ癒されていくのを感じていた。
◇
「ありがとうございます。行きましょう」
便意が少し収まると、ベンは立ち上がり、前かがみでピョコピョコと階段を降りていった。
そこには高さ十メートルはあろうかという巨大な扉があり、随所に金の細工が施され、冒険者の覚悟を試しているかのようにゆったりとたたずんでいる。
ベンはバン! と、扉を無操作にぶち開けて、中に突入して行った。
すると、天井の高い巨大な大広間には中央に何やら小山のようなものがそびえている。そして、部屋の周囲の魔法ランプがポツポツと煌めき始め、部屋の様子を浮かび上がらせていった。
ひっ! ひぃ!
班長が思わずしりもちをついて叫ぶ。
ランプが照らした小山、それはなんと漆黒の鱗に覆われた巨大なドラゴンだったのだ。それもこのドラゴンは鱗のとげも立派に伸びた真龍、もしかしたら神話の時代から生き延びている伝説の龍かもしれなかった。
「ダメです! ダメ! あれは我々の手に負えるものじゃない!」
班長はドラゴンの圧倒的な存在感に気おされ真っ青になって叫ぶ。
確かにドラゴンというのはもはや災厄であり、一般的な攻撃は全く通じず、過去には一個師団が相対して多量の犠牲者を出しながらようやく仕留めることができたというくらい破格の存在なのだ。
しかし、ベンにとってはもはや一刻の猶予もなかった。
過去最悪レベルに腸は暴れまわり、グルグルギューとすさまじい叫びをあげている。
持って十秒、それ以上は暴発か人格崩壊か、そのくらい追い込まれていた。
ベネデッタはベンに走り寄るが、ベンにはもう全く余裕がなかった。強引に流し込んだ水が腸内でさっきからグルグルとすさまじい音を立て、肛門を襲っているのだ。もはや一刻の猶予もない。
「失礼!」
ベンは脂汗を流しながら一言そう言うと、ベネデッタを小脇に抱え、次いで班長も小脇に抱え、ピョコピョコと走り出した。出口はシアンが教えてくれるらしい。
走ると言っても千倍のパワーの走りである。あっという間に時速百キロを超え、飛ぶように草原を一直線に駆け抜けていった。
その圧倒的な速度に二人は圧倒されて言葉を失う。ベンの超人的パワーは明らかに人の領域を超えているのだ。ただ、大人しく運ばれるしかなかった。
途中オーガやゴーレムみたいなAクラスモンスターが行く手をふさいだが、ベンは止まりもせずにただ膝蹴りで一蹴し、楽しそうに飛んでいくシアンの後をひたすら追っていく。
しばらく行くと湖があり、その湖畔に小さな三角屋根の建物が見えてきた。どうやら、ここらしい。
漏れる、漏れる、漏れる……。
ベンは建物の入り口で二人を下ろし、急いでドアを開ける。
奥に下り階段が見えた。ビンゴ!
だがその時、天井から閃光が放たれた。
ズン!
グハァ!
ベンは天井に潜んでいたハーピーの攻撃をまともに受け、服が焦げた。千倍の防御力では身体は傷一つつかないものの、デリケートな下腹部にはこたえた。
ビュッ、ビュルッ!
たまらず肛門が一部決壊。オムツ代わりに仕込んでおいたタオルに生暖かい液体が染みていく。
ポロン! 『×10000』
ついに限界突破の一万倍に達してしまった。
「キタ――――! きゃははは!」
シアンは大喜びである。
ベンは奥歯をギリッと鳴らすと、
「エアスラッシュ!」
と、叫んで初級風魔法を放った。初級と言え一万倍の威力である、それぞれが普通の百倍くらいの威力を持った風の刃が数百発天井に向って放たれる。それはまるで竜巻が直撃したかのような衝撃でハーピーを襲う。
キュワァァァ!
断末魔の叫びが響き、ハーピーは屋根ごと粉々に吹き飛んでしまった。
くふぅ……。
ガクッとひざをつくベン。もう肛門は限界だ。しかし、まだこの先、ボスを斃さない限り外には出られない。それまではこの便意を温存するしかない。休憩してもう一発水筒注入というのはもう耐えられそうになかった。
「ベン君……」
ベネデッタはその尋常ではないベンの辛そうな様子に、思わず駆け寄って後ろからハグをした。しかし、それは下腹部を締め付けて逆効果だった。
グハァ!
思わず叫んでしまうベン。
ビュッビュとまた少し決壊してしまう。
「ごめんなさい、わたくしそんなつもりじゃ……」
オロオロするベネデッタ。
「だ、大丈夫。ちょっと待っててください」
ベンは必死に肛門のコントロールを取り戻そうと大きく深呼吸を繰り返し、精神統一に全力を注ぐ。
ベネデッタは心配そうな顔をしながら、癒しの神聖魔法をそっとかけたのだった。
ベンの全身が淡く金色に光輝き、光の微粒子が舞い上がる火の粉のようにチラチラとしながら巻き上がり、辺りを照らす。
ベンは激痛の走る下腹部をそっとなでながら、少しずつ癒されていくのを感じていた。
◇
「ありがとうございます。行きましょう」
便意が少し収まると、ベンは立ち上がり、前かがみでピョコピョコと階段を降りていった。
そこには高さ十メートルはあろうかという巨大な扉があり、随所に金の細工が施され、冒険者の覚悟を試しているかのようにゆったりとたたずんでいる。
ベンはバン! と、扉を無操作にぶち開けて、中に突入して行った。
すると、天井の高い巨大な大広間には中央に何やら小山のようなものがそびえている。そして、部屋の周囲の魔法ランプがポツポツと煌めき始め、部屋の様子を浮かび上がらせていった。
ひっ! ひぃ!
班長が思わずしりもちをついて叫ぶ。
ランプが照らした小山、それはなんと漆黒の鱗に覆われた巨大なドラゴンだったのだ。それもこのドラゴンは鱗のとげも立派に伸びた真龍、もしかしたら神話の時代から生き延びている伝説の龍かもしれなかった。
「ダメです! ダメ! あれは我々の手に負えるものじゃない!」
班長はドラゴンの圧倒的な存在感に気おされ真っ青になって叫ぶ。
確かにドラゴンというのはもはや災厄であり、一般的な攻撃は全く通じず、過去には一個師団が相対して多量の犠牲者を出しながらようやく仕留めることができたというくらい破格の存在なのだ。
しかし、ベンにとってはもはや一刻の猶予もなかった。
過去最悪レベルに腸は暴れまわり、グルグルギューとすさまじい叫びをあげている。
持って十秒、それ以上は暴発か人格崩壊か、そのくらい追い込まれていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる