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4-14. 絶対神ユリア

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「そ、そうだ、ジェ、ジェイドは?」
 ユリアは周りを見回したが、転送されてきたのはユリア一人のようだった。目をつぶって必死にジェイドの気配を探ってみても、それらしきものは見つけられない。
「えっ!? 私一人だけ?」
 この摩天楼そびえる大都市で、ユリアは一人ぼっちになってしまったことを知り、愕然がくぜんとした。
「う、嘘よね……、まさか」
 楽しそうな家族連れ、子供たちが遊ぶ中でユリアは一人呆然として立ち尽くす。

「シ、シアンさん……、そうよシアンさんならどこかにいるはずだわ」
 ユリアは心を静め、神の回線を開き、シアンを呼ぶ。
 しかし、応答がない。
「そ、そんなはずはないわ! シアンさん、シアンさん!」
 ユリアは心の奥で強くシアンをイメージする。水色の髪をした可愛い女の子、でも中身は底知れない強さと神秘に彩られた『神様の娘』。六十万年を平気で待てる彼女なら百年程度で消えるはずなどないのだ。
「シアンさん……シアンさん……」
 ユリアは感覚を全開にして深層意識の中でシアンのイメージを追う。
 すると、覚えがある雰囲気を肌に感じた。
「あっ!」
 ユリアは目を開けて辺りを見回す。
 すると、初めて会った時のように上空から光をまといながら降りてくる人影が見える。
「シアンさーん!」
 ユリアは思わず両手を振って叫び、シアンはユリアの前に着地した。
 しかし、降り立ったシアンはいつもと様子が違う。
「ユリア様、お呼びでしょうか?」
 そう言いながら胸に手を当てて頭を下げたのだ。その予想外の応対にユリアは困惑しながら聞く。
「えっ? ど、どうしたんですか?」
「どうと言われましても、ユリア様はこの世界の神であらせられます。私は神に創られたしもべに過ぎません」
 ユリアは困惑する。見た目も声もシアンそのままなのに、中身はシアンではないのだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。私がシアンさんを創ったってどういうことですか?」
「この宇宙はユリア様の想いによって生まれ、ユリア様の観測によって事象が確定しています。無限の可能性の中から選ばれたしもべの姿、それが今の私です」
 シアンはらしくない真面目な顔で言う。
「えっ!? この宇宙は私の宇宙なんですか?」
 ユリアは混乱した。さっきまでいた宇宙は誠を中心に回っていた。誠が未確定の所を確定させていき、宇宙の形が作られていたのだ。だが、この宇宙は自分を中心に回っているという。
「私が思ったことがこの宇宙に反映されるって……こと……ですか?」
 ユリアは恐る恐る聞く。
「その通りです。頼れる人が欲しいと望まれ、そのイメージとしてシアンという方を選ばれたので私が創られました」
 ユリアが作り出した新しいシアン『ネオ・シアン』はクリッとしたあおい瞳で淡々と説明する。
「えっ!? じゃあ、誠さんの世界の人とはもう会えない? ジェイドは?」
「私はジェイドという方を知りませんが、私と同じように創ることはできます」
 ユリアは愕然とした。この世界は自分の思うがままになるとんでもない世界だった。しかし、それでも誠の世界の人を連れてくることはできないらしい。
「えっ……、わ、私が創ったのじゃなくて、オリジナルなジェイドがいいの!」
「他の宇宙から人を連れてくることは不可能です」
 ネオ・シアンは無慈悲に言った。
「そ、そんな……」
 ユリアはガクッとひざから崩れ落ちる。最愛の人ジェイドともう二度と会えない。ユリアはこの世界で一人ぼっちになってしまったのだ。
「ジェ、ジェイド……。うっうっうっ……」
 ユリアはポロポロと涙をこぼす。宇宙を超えて離れ離れに引き裂かれた二人、もう二度と会うこともできない。
 知り合いが一人もいないこの未来都市で、自分はどう生きて行けばいいのだろう? いくら本当の神になっても一番欲しい物は手に入らない。そんな馬鹿な事があるだろうか?
 しばらくユリアはこの理不尽な世界を恨み、絶望する……。

「そうだ! おうちにいるかも!」
 ユリアはバッと顔を上げた。
 ジェイドがアルシェと同じくこの星に残っていたら、今もオンテークのあの棲み処にいるかもしれない。
 残された最後の可能性に一の望みを託し、ユリアはネオ・シアンの手を取って急いでオンテークの山へと空間を跳んだ。
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